『郷愁、雪の空を越えよ』

あの日は雪が降っていたな──と、何年経っても思い出す。



PC1:〝スカイフォール〟霧崎 零斗(きりさき・れいと)(キャラシート)PL:海野しぃる
PC2:〝ハートステイク〟東海林 エマ(しょうじ・ - )(キャラシート)PL:いーさにうむ
PC2:〝ウェアウルフ〟沢村 秀吉(さわむら・ひでよし)(キャラシート)PL:サムトー

メイン雑談

目次

  • プリプレイ
  • オープニング1:ひびわれ
  • オープニング2:ささくれ
  • ミドルシーン1:さきがけ
  • ミドルシーン2:なれはて
  • ミドルシーン3:かさねて
  • ミドルシーン4:うたごえ
  • ミドルシーン5:たすけて
  • マスターシーン:はなむけ
  • クライマックス:ひかりへ
  • バックトラック
  • エンディング1:ゆきどけ
  • エンディング2:きぬずれ
  • エンディング3:めでたし

  • プリプレイ

    ■トレーラー
    とあるジャームと交戦、追い詰めたが逃亡を許した。
    ここまでならさほど珍しくもない出来事のひとつであろう。
    が。
    それを切欠として開かれた記憶の蓋、
    その向こうに佇む少女の名を、

    あなただけでなく、誰も覚えていないという。


    ダブルクロス The 3rd Edition.『郷愁、雪の空を越えよ』


    つらかったのは、死ぬかもしれないことではないと言う。
    つらかったのは、どうしても生きねばならないこと。

    ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

    ■自己紹介

    GM:自己紹介!
    GM:キャラシのURLを張りつつ自己紹介しな!
    GM:まずPC1から!
    霧崎 零斗:おす!
    霧崎 零斗:https://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY55X-vwMM
    霧崎 零斗:「大事な相手との絆を喪失していた」
    霧崎 零斗:「その喪失を抱えたところで衝動に飲み込まれるようなこともなかった」
    霧崎 零斗:「そう、それはつまり俺が――どうしようもなく欠落していたのだろう」
    霧崎 零斗:古参のUGNチルドレン。経験に裏打ちされた超常の洞察力を有する。兵科は狙撃手。どこまでも正しく、この世界の秩序を守るために戦いを重ねている。日頃から死が身近にあったため、どこか冷めている。その瞳に本当の意味での情熱が宿ったことは、今はまだない。
    霧崎 零斗:※臨死体験によって覚醒したという記録はウソではない。だがそれはかつてのUGNが行った実験によるものである。
    霧崎 零斗:という感じのUGNチルドレンです!
    霧崎 零斗:「俺は感情がない……」系のUGNチルドレンだからいっぱい色彩させてくれよな!
    霧崎 零斗:よろしくおねがいします!!!!!
    GM:最近は下火になったじゃあくUGN被害者
    霧崎 零斗:そうです
    霧崎 零斗:邪悪UGNの火は……絶やさない!
    GM:あらゆる正義の組織は、腐敗したじゃあく存在にされる余地が発生するのです
    霧崎 零斗:なんかすごく目が良いので
    霧崎 零斗:ラブコメの波動とか視覚化できます
    GM:今回のあなたのシナリオロイスはまぁ、そういうじゃあくと幸運にも縁遠かった人物になりましょうか
    霧崎 零斗:彼女は俺の目に映る数少ない光だったんだと思います
    GM:ハンドアウトはこちら

    HO1:〝スカイフォール〟霧崎 零斗 シナリオロイス:〝クアッド・モード〟春日 祈(かすが・いのり)

    あなたはもう何年も、UGNの一員として戦い続けている。
    そしてあなたには、同じ頃にUGNに加入した友人がいた。
    5年ほど前。
    とある村で発生したR案件の調査に出向いた直後、彼女は行方不明となった。

    ……ということを、あなたは突然に思いだした。
    おかしい。どうやっても忘れられる筈の無いことなのに。
    あなたは調査を開始する。

    霧崎 零斗:「祈……」
    春日 祈:「12歳同い年のペアだよ」
    霧崎 零斗:「かつて、俺の世界には光があったのだろう」
    春日 祈:「小学六年生か中学一年生かは気にしないソシャゲ形式でいこう」
    霧崎 零斗:「りょ、だぞ」
    春日 祈:「ちゃんと助けに来てね」
    GM:ということで正統派PC1
    霧崎 零斗:「俺の能力であれば可能だ、と受けあっておこう」
    GM:をやってもらいます
    GM:正統派PC1をね
    霧崎 零斗:はい、正統派PC1
    GM:ということでよろしくお願いしますだ
    霧崎 零斗:激情にまだ気づかないクール気取り戦場育ち男子をね
    霧崎 零斗:お願いします!
    GM:続いてPC2は、実質PC1.5くらいになりそうな東海林さんから頼もう
    GM:同様にURL&自己紹介ゴー!
    東海林 エマ:わかった。
    東海林 エマ:http://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY9Pu18QQM
    東海林 エマ:"ハートステイク" 東海林エマ(しょうじ・-) 17歳。
    東海林 エマ:腰まで届く艶めいた黒髪と血のような赫い瞳を持つ少女。表情の変化に乏しいが、感情の起伏は人並み。
    東海林 エマ:真顔ピースとかするタイプです。
    東海林 エマ:カヴァーとして高校生の身分を持つUGNチルドレンであり、主に前線での戦闘行動に従事しています。
    東海林 エマ:少々特殊な生まれで、人間の母とヴァンパイアの父を持つ半吸血鬼ダンピール。UGNの登録データ上は秘匿されています。
    東海林 エマ:人外との混ざり物ゆえの超人的な肉体能力と代謝能力を持ち、外見から想像も付かないほどよく食べます。
    東海林 エマ:人間の食事を好んで摂るものの、特にオーヴァードの血液は栄養効率が段違いらしく、任務報酬の一部は血液製剤で受け取っています。
    東海林 エマ:人間の母に育てられ、早期にUGNの教育を受け始めたこともあり、『ヒトとして生きたい』という気持ちが強く、この出自はごく一部にしか明かしていません。
    東海林 エマ:また、己の血を分け与えることで非オーヴァードを蘇生する特殊能力も持ちますが、この影響もあり非オーヴァードとの緊急時の接触はかなり慎重になっています。
    東海林 エマ:サワムラとは同じ高校のクラスメイトでもあり、ここ1年半ほど戦闘任務で主にコンビを組んでいます。
    東海林 エマ:何度も一緒に任務に当たるうちに、彼の秘密にだんだん気付き始めているとか……?
    東海林 エマ:データ的にはブラムス/バロールのバッファー&射撃サブアタッカー。
    東海林 エマ:D:亜純血でサングイン付き《鮮血の奏者》をシナリオ2回ほど撒きつつ、《時間凍結》との再行動を合わせてそれなりに打点を出していきます。
    東海林 エマ:チャームポイントは燦々と煌めく《抱擁》。基本的にあらゆる場面で使い所のないフレーバーエフェクト!
    東海林 エマ:という感じの美少女チルドレンをやります。よろしくお願いします。ぶい。
    GM:時間凍結はあれね、20のHPを消費するやつ
    GM:HPの管理にはせいぜい気をつけるんだな……!
    東海林 エマ:そうです いっぱい食べて体調の管理に注意しなければ
    東海林 エマ:怪しい~~~ 気を付けて戦っていこう
    東海林 エマ:いざとなったらブロッカーがいるし ね、サワムラ
    GM:ハンドアウトが共通だし、そのまま話題のサワムラくんも自己紹介してもらおう
    沢村 秀吉:はーい!
    沢村 秀吉:http://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY77SP-wQM
    沢村 秀吉:沢村秀吉(さわむら ひでよし)です。17歳、白髪に黄金の瞳の少年。
    沢村 秀吉:両親共にUGNエージェントであり、幼少期にオーヴァードに覚醒。
    沢村 秀吉:尊敬する両親と同じエージェントの道を選ぶことに。
    沢村 秀吉:覚醒当初はレネゲイドによるものか、強烈な攻撃衝動に襲われており暴力沙汰を起こすことも多々ありました
    沢村 秀吉:だが今は違う!(ギュッ)
    沢村 秀吉:UGNによる抑制施術を受け、衝動の制御に成功したのだ!
    沢村 秀吉:現在では明るく社交的、両親を尊敬し友人を大切にするごく普通の少年です。
    沢村 秀吉:手術は失敗していた?いやいやそんなまさか……だってほらこの通り明るく元気になりましたよ?
    沢村 秀吉:東海林さんとはコンビを組んでいるのですが、彼女の事情については上司から聞かされています。
    沢村 秀吉:自分の事情?もちろん話してますよ、もう大丈夫だってことはね!
    沢村 秀吉:性能はエンジェルハイロゥ/ブラックドッグの射撃型。
    沢村 秀吉:エピックつけたレッドテンペストをポルターガイストしてすごい勢いで殴ります。シンプルだね!
    沢村 秀吉:感覚に補正つけた実験体なので行動値も高めで、低侵食を生かしてカバーもやります。便利屋系。
    沢村 秀吉:相方に頼まれたのでブロッカーもします。地元じゃ負け知らず。
    沢村 秀吉:こんなところかな。よろしくお願いします!
    GM:エピックレッテンポルター、武道のひとつの形のような赴きがある
    GM:よろしくお願いします!
    GM:HOはこれ!

    HO2:〝ハートステイク〟東海林 エマ & 〝ウェアウルフ〟沢村 秀吉 シナリオロイス:凍てつく躰のジャーム

    あなたはとある任務において、強力な冷気を発するジャームを追い詰めた。
    周囲への被害を勘案して追撃は断念、惜しくも取り逃したのだが……

    その少し後、あなたに奇妙な連絡が入る。
    行方知れずとなったジャームの居場所が、おそらく特定できたのだと言う。
    いかにUGNの情報部が腕利きだろうとあまりに早い……?

    東海林 エマ:違和感はあるけど速いに越したことはないね
    沢村 秀吉:なんだか知らんがとにかくよし!
    沢村 秀吉:そんじゃ前衛よろしく、狙撃は任せろ
    東海林 エマ:よし。じゃあ今日もがんばろうね
    GM:というわけで早速始めていくわけですが
    GM:まずはPC1のOP! 次はPC2タッグのOP! 普通な流れだな!

    OP1:ひびわれ


    GM:PC1、登場侵蝕をどうぞ
    霧崎 零斗:41+1d10
    DoubleCross : (41+1D10) → 41+7[7] → 48


    GM:──戦いの音がようやく止んで、雪の夜は再び静かになった。
    春日 祈:「対象、行動不能。勝ったよ、何か感慨は?」
    霧崎 零斗:「当然の結果だ」
    霧崎 零斗:「強いて言えば、良かった、になる」
    霧崎 零斗:「お前はどうだ、クアッド・モード」
    春日 祈:「日常に溶け込むには良くない答え、だと思った」
    春日 祈:その感想は、戦闘行為ではなく、あなたの言葉に向けられたものだ。
    春日 祈:……少女は、あなたより少し高い背丈から、抑揚の薄い声で応じた
    春日 祈:〝クアッド・モード〟春日 祈(かすが・いのり)──
    春日 祈:戦闘、調査、資材運搬、拠点建設、ひととおりの仕事がそこそこ出来る、汎用型のUGNチルドレンである。
    霧崎 零斗:まぶしそうに見上げる。
    霧崎 零斗:「お前がそういうのならば、考慮すべきだな」
    春日 祈:「教官が言うには、私達の年齢の子供はもっと、感情の動きが激しいらしいよ」
    春日 祈:「ほら、この前に見た教材の──部活もののドラマ?」
    春日 祈:「試合に勝って、何分も泣きながら抱き合ってるやつ」
    霧崎 零斗:「確かに、"観察”するとそういう人間が多いことはわかる」
    霧崎 零斗:「……練習をしてみるべきか?」
    春日 祈:そう言いながら、積もる雪の上に伏した、五つ脚の獣型ジャームの傍へ近づき、首筋に手を当てる。
    春日 祈:この対象が、元は平凡な民間人であったことは、あなたも当然ながら知っている。
    霧崎 零斗:そう、知っている。
    霧崎 零斗:零斗には、感情や思考が色として知覚できる。
    春日 祈:「鏡の前で練習しろだって、教官は。……まだ息がある。荷台に載せちゃって」
    春日 祈:「凍結処理班との合流まで、気は抜かないでね」
    霧崎 零斗:「承知した」
    霧崎 零斗:だが、零斗が目に映る極彩色を斟酌することはない。
    霧崎 零斗:「無論だ。トドメを刺す方が合理的だとは思うが……まあ仕方ないな」
    霧崎 零斗:気を抜くつもりはない。
    霧崎 零斗:気を抜くつもりはないが、この同い年の少女が隣に居ることで――パフォーマンスが安定する。
    春日 祈:「その合理的、っていうのも、だめらしいよ」
    春日 祈:「難しいけどさ」
    春日 祈:ぴ、と指を立てて、少し離れた位置を示す。
    春日 祈:指の先にあるのは、現場の岩や草木を変質させて作りだした大型貨物車。
    春日 祈:彼女は早々と運転席に乗り込んで、助手席のドアを内側から足で押し開ける。
    霧崎 零斗:「学習すればいい。幸い、無謀な戦い方や不運にでも巻き込まれない限り――我々に時間はある」
    霧崎 零斗:荷台を引っ張りながら、大型貨物車へと”それ”を乗せる。
    霧崎 零斗:泣いている? 怒っている? 安堵している?
    霧崎 零斗:色々なものが見えるが、それを救ううつわを持ち合わせない。
    霧崎 零斗:「行こうか」
    霧崎 零斗:そして、助手席に乗り込んだ。

    春日 祈:雪景色の中を、大型貨物車が進む。
    春日 祈:周囲に他の人間や、人間が住まう家屋の存在は無い。
    春日 祈:街灯すらない道を、がたがたと車体を弾ませながら、時速30km程で。
    霧崎 零斗:「クアッド……いや」
    霧崎 零斗:「祈」
    春日 祈:ハンドルを握ったままの彼女は、名を呼ばれて、
    春日 祈:「いつかは治るかもとか、治らないとか、そういうことじゃなくて」
    春日 祈:答えの代わりに、別な言葉を選んだ。
    春日 祈:「何回やっても、なんかさ、やだよね」
    春日 祈:「守る対象だった──人間だったものを、世の中から切り捨てるのって」
    霧崎 零斗:「――ッ」
    霧崎 零斗:一瞬だけ答えに窮した。
    霧崎 零斗:「……そうだな」
    霧崎 零斗:同意する素振りだけでもすべきだと判断した。
    霧崎 零斗:「俺も良いものだとは思わない」
    霧崎 零斗:ウソだ。
    霧崎 零斗:当然に為すべきことを為す。秩序を守ることは善であり、それを苦と思わない。だが。
    霧崎 零斗:「つらい……と、おもう」
    霧崎 零斗:彼なりに、溶け込みたい世界があった。
    春日 祈:「そ」
    春日 祈:短い一音の答え。
    霧崎 零斗:「…………」
    春日 祈:少しの間、沈黙が漂って、それから。
    春日 祈:「この前、一般社会に溶け込む訓練って言われて、小学校のテストってやらされたでしょ」
    春日 祈:「国語、何点だった?」
    霧崎 零斗:「95点」
    春日 祈:「その5点は?」
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:頭の中にノイズがかかる。処理する必要が無いと断じて忘却してしまった。
    霧崎 零斗:「祈、これは君にだけ言うが」
    霧崎 零斗:「――忘れた」
    霧崎 零斗:「エフェクトを使えば今からでも調べることができるとは思ったんだが……おれはその五点を些末なものだと判断してしまった」
    春日 祈:「そうなんだ。……たぶんね、霧崎」
    春日 祈:「私達と同じくらいの歳の子は、些末って言葉を使わないし」
    春日 祈:「テストの点数はとっても大事で、些末って扱いにならないと思うんだよ」
    春日 祈:片手をハンドルに残し、もう片手を背後に向ける。
    霧崎 零斗:窓ガラスの向こうを見る。
    春日 祈:ガラス越しに見えるジャームの身体は、呼吸の他に動きも無い。
    霧崎 零斗:――些末だろう。
    霧崎 零斗:とは思ったが、祈の言葉を否定してしまいそうで言えなかった。
    春日 祈:「私は霧崎より、もう少し上手く、一般社会に溶け込めると思うから」
    春日 祈:「あれを見ても、些末って言葉は使わないようにする」
    霧崎 零斗:テストの点数は死体の数より些末だ。
    霧崎 零斗:死体の数は世界の平和より些末だ。
    霧崎 零斗:だというのに――隣に座る相手の感情のことばかりが気になる。
    霧崎 零斗:「祈は……」
    春日 祈:ガタンッ
    霧崎 零斗:「なんだ!?」
    春日 祈:大きな石でも乗り越えたのか。車体が傾く。
    春日 祈:「大げさ」
    春日 祈: ……シートベルトを着けていない彼女の身体が、助手席側へ傾いた。
    霧崎 零斗:「……悪い。まだ緊張して――わっ」
    春日 祈:体温は高いが、熱があるわけではない。これが彼女の平熱だ。
    春日 祈:〝子供体温〟とでも言うのだろうか。……大人びた口ぶりとは裏腹に、だ。
    春日 祈:「よいしょ」
    春日 祈:左手であなたの肩を押し、座席に座り直して、何事も無かったかのような顔をする。
    春日 祈:「何か今、言おうとした?」
    霧崎 零斗:「俺の中において、君の優先順位は上位に入るという話だ」
    霧崎 零斗:「俺が今の会話で様々に思い悩んでしまうのは――きっとそのせいなのだろう」
    春日 祈:「算数のテストは何点だった?」唐突に話題が変わった──ようにも思えるが、
    霧崎 零斗:ため息をついた。
    霧崎 零斗:「算数は100点だ」
    霧崎 零斗:「ノイマンシンドロームは非常に便利だ」
    春日 祈:「じゃあ、計算はバッチリなわけだ」
    春日 祈:「問題まるいち」
    春日 祈:「私、わる、一般人1人 は?」
    霧崎 零斗:「君のほうが大事だな」
    春日 祈:「不等号の問題じゃないよ」
    春日 祈:「普通の人が何人になったら、霧崎にとっては些末じゃなくなるのかなって」
    霧崎 零斗:「…………」
    春日 祈:「100人かな。じゃあ、99人は些末かな」
    霧崎 零斗:「些末……かは分からない」
    霧崎 零斗:「君が生きていれば救える命があるから、あるいは案外……」
    霧崎 零斗:と言いながら、問題がそうじゃないことは理解している。
    霧崎 零斗:「ただ君一人をなかったことにして百人を生かしている世界は……嫌だと思うだろうな、俺は」
    霧崎 零斗:思うだろうけど、だからとて。
    霧崎 零斗:スカイフォール、世界が滅びる時であれ、己の生き方は変わらないのではないかとも思う。
    霧崎 零斗:「些末とは言えない。言えないな」
    霧崎 零斗:「言えないが……言ってしまいそうだから」
    霧崎 零斗:「もう少し大人になるまで聞かないで欲しい」
    春日 祈:「そ。……教官にこういう時の模範解答教えてもらったから、そのまま覚えておくといいよ」
    霧崎 零斗:「?」
    春日 祈:「〝そんなの僕には選べない!〟って、泣きながら言えばいいんだってさ」
    春日 祈:あはははっ、と。
    春日 祈:白い息を吐き出して、彼女は笑った。
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:口元をわずかに緩める。
    霧崎 零斗:「じゃあ俺は選ぶ」
    霧崎 零斗:「そしてその選択を背負って生きる」
    霧崎 零斗:「それが……良き人でなくとも、善い人だと、俺は父に聞いた」
    霧崎 零斗:「そして俺は仲間を見捨てない」
    春日 祈:「……5点の壁、ぶあついなぁ」
    春日 祈:がたん がたん
    春日 祈:道は荒れている。……が、道と呼べる程度のものにはなってきた。
    春日 祈:彼女はやはり、ハンドルを握り、進行方向に首を向けたままで言う。
    春日 祈: 「霧崎は、しばらくは侵蝕の回復期間だね」
    春日 祈:「私は今回、補助がメインだったし──たぶんすぐ、次の任務」
    霧崎 零斗:「死ぬなよ」
    春日 祈:「たぶん大丈夫」
    春日 祈:「作戦前の先行偵察だって。晴待村っていう、聞いたことないところ」
    春日 祈:「何か被害が出てるわけじゃないけど、変な目撃情報があるっていうから、確認だけって感じ」
    GM:──向こうから、ハロゲンライトの隊列が向かってくる。
    春日 祈:「来たね、回収班」
    霧崎 零斗:そういう任務の場合、本当に安全なことと、本当にどうしようもないことがある。
    霧崎 零斗:だがこれを言うことで彼女のパフォーマンスに影響を与える訳にはいかない。
    霧崎 零斗:「来たな」
    春日 祈:「ドライブは終わり。おしごとに戻ろっか」
    春日 祈:「……あー、車から出るのやだなー、寒いし」
    春日 祈:「早く春になればいいのに、ね」
    霧崎 零斗:自分のコートを少女に押し付ける。
    春日 祈:「ん?」
    霧崎 零斗:「だな。春が待ち遠しい」
    霧崎 零斗:「俺は侵食が上がっているから多少寒いのは平気だ」
    春日 祈:「ふーん」
    霧崎 零斗:「パフォーマンスを落とさないために君が使え」
    春日 祈:特に思うこともないような顔をして、そのコートに袖を通した。
    春日 祈:背丈の差は微々たるものだ。袖丈や肩幅で困る様子も無く、
    春日 祈:「春になったら、何かしようか」
    春日 祈:「普通のひとがやるらしい、春っぽいこと」
    霧崎 零斗:「感動して抱き合う練習とかどうだ?」
    春日 祈:「普通のひとがやらないことでしょ、それは」
    春日 祈:「……そーだなー、じゃあ」
    春日 祈
    GM:この数日後、彼女は侵蝕回復期間を抜け、先行偵察任務へと出かけていった。

    GM:──不意に。本当に、不意にだ。
    GM:時間帯としては深夜の、日付がもうすぐ変わる頃合い。あなたは突然、思いだした。
    GM:少女の名前を。
    GM:少女が、任務から戻らなかったことを。
    GM:任務から戻らない少女を、自分を含め誰も訝らなかったことを。
    GM:それらの事実を忘れていた、ということを──
    霧崎 零斗:「――ああ」
    霧崎 零斗:「俺はどうしようもなく」
    霧崎 零斗:悪い夢から覚めたかつての少年は。
    霧崎 零斗:「欠けている――」
    霧崎 零斗:真夜中に一人、呟いた。

    春日 祈:「桜の花を見に行こう」
    春日 祈:「天気の良い日に、お弁当持って」

    GM:何の予兆もなく、突然、あなたは思いだした。

    GM:ロイスの取得のみ可能です。
    霧崎 零斗:すでに固定ロイスなのでこのままでいきます!
    GM:よろしい

    OP2:ささくれ


    GM:登場侵蝕!
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (39 → 43)
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 9)増加 (28 → 37)
    東海林 エマ:ぎゃ
    GM:ということで改めて

    GM:山間部。深夜。
    GM:冬が、吹き荒れている。
    白い着物の女:「ォオオオオオオォォオォォォ──」
    白い着物の女:サラマンダーシンドロームに分類されるであろう、強烈な冷気を操るジャーム。
    白い着物の女:あなた達はこれと交戦し、討伐寸前まで追い詰めた。
    東海林 エマ:ふぅ、と白い息を吐く。
    東海林 エマ:周囲一帯は銀世界と化している。一帯が白に満たされ、月の光ですら異様に明るく夜闇を照らす。
    東海林 エマ:だが、それを意に介すことなく。ジャームをここまで追い立てることができていた。
    東海林 エマ:方や人外の知覚能力を持つ半吸血鬼ダンピール──これは内緒だが。
    東海林 エマ:方や類まれなる狙撃適性を持つエージェントの少年。
    東海林 エマ:「次。決めにいく」
    沢村 秀吉:『了解』
    沢村 秀吉:通信機越しに小さく返答が聞こえる。
    東海林 エマ:ぽた、と1滴落ちた赤が白銀の地に僅かな沁みを作った。じっくりと狙いを定め、しなやかな獣のように身体をぐう、と撓ませる。
    白い着物の女:己の領地を侵略する赤が気に入らぬのか。そのジャームは、あなたに、顔とも呼べぬ部品を備えた頭部を向ける。
    東海林 エマ:視線を外さない。呼吸を図る。己の身体に、血液に最も活力が漲る時──酸素濃度が頂点になった、その瞬間に。
    東海林 エマ:「──ふっ!」
    東海林 エマ:弾き出されたような踏み込み。疾駆。足元の雪が勢いで舞い上がる。
    白い着物の女:腕を振る。風が吹く。舞い散る雪を巻き取り、氷薄の刃を孕む旋風へ──
    東海林 エマ:紅い魔眼が瞬き一つせず対象を凝視する。──そうして、練り上がるのは。
    白い着物の女:──狩人より一足、遅い。
    東海林 エマ:己の血液を媒介に生まれる極小の魔眼。一帯に展開していた其れが膨張、形状を変えて"杭"の形を取って、
    東海林 エマ:舞い上がった雪を隠れ蓑に、一斉に女の身体を穿つように奔った。
    白い着物の女:ぱきぃっ かしゃあっ
    白い着物の女:凍り付いた川面が砕けるような音。
    白い着物の女:氷刃のつむじ風と、白い着物の女と、いずれもが杭を浴びて罅割れる。
    東海林 エマ:(これはただの、布石)
    白い着物の女:血は流れない。だが、杭を浴びて動きが確かに止まった。ならば
    白い着物の女:やはり、ここまでの交戦で判断した通りだ。
    白い着物の女:物理攻撃は十分に、有効打となる。
    東海林 エマ:広域を網羅するが決定打に欠ける"杭打ち"。但し、防御行動を取らなくて無事に済むほど甘くはない。
    東海林 エマ:なれば──対象の行動を。相棒の"狙撃手"は確実に、読み切ってくれる。
    沢村 秀吉:「──────」
    沢村 秀吉:息を止める。サイトの中の景色に意識を集中する。
    沢村 秀吉:何倍にも拡大された視界の中で、雪景色に隠れた女の顔が映る。
    沢村 秀吉:異形の貌。表情は分からない。
    沢村 秀吉:お前は今、どんな顔をしている?
    沢村 秀吉:(■■■■■■)
    沢村 秀吉:(やかましい)
    沢村 秀吉:氷刃よりも旋風よりも鬱陶しい、浮かんだ感情。
    沢村 秀吉:押し殺して引き金を引く。凄まじい破裂音とともに、銀の弾丸が女の心の臓を狙う。
    沢村 秀吉:いくら悪条件と言えど、止まった的に外すわけにはいかない。命中──
    白い着物の女:ばきいっ!
    東海林 エマ:(──獲った!) 会心の当たりだ、と。そう思った。
    白い着物の女:胸元が大きく砕け──着物も、その下の身体も──ぱらぱらと細かく、雪の上に散る。
    白い着物の女:砕けて、砕けて、その化け物の身体は、
    白い着物の女:ほんのひとひらの風花を、無数に集めたような形に──
    白い着物の女:《瞬間退場》
    白い着物の女:──ごうっ!
    白い着物の女:風が吹く。細かく砕けた女の身体を、風が纏めてかっ攫う。
    白い着物の女:……有効打ではあった筈だ、が。
    白い着物の女:仕留めたという手応えまでは、無い。
    東海林 エマ:「わ……っ!」 思わず長い袖で顔を覆う。
    東海林 エマ:「逃がさ、ない!」 瞬時に再度杭を錬成、女の身体に向けて投擲するが。
    東海林 エマ:……既にその時、砕けた身体は影も形も遺っていなかった。
    GM:空から落ちる雪の粒を、根絶やしにすることの難しさ。
    GM:……戦いは静かに、あっけなく終わった。
    GM:白い着物の女が、ひとを連れ去ろうとする。
    GM:そういう噂話に端を発した討伐任務。
    GM:その元凶であろうジャームを、取り逃がしはしたものの、あなた達は確かに深手を与えた。
    沢村 秀吉:「エマ!」
    東海林 エマ:「…………むぅ」 辺りに積もり上がった雪をブーツの爪先で蹴り上げる。さらさらの雪が、夜闇に舞う。
    東海林 エマ:「ん」「……逃げられちゃったね」
    沢村 秀吉:長大な銃身の狙撃銃を抱えて、狙撃地点から戦場に駆け寄る。
    沢村 秀吉:「こっちも反応ロスト。……逃げられたなあ」
    沢村 秀吉:「わり、止めてくれたのに仕留めそこねた!」
    沢村 秀吉:ぱん、と両手をあわせて頭を下げる。
    東海林 エマ:その手を掴んでぐいーっと拡げ、自分の頬に押し当てる。
    東海林 エマ:「ぬくーい」
    沢村 秀吉:「あ、あのねえ」
    東海林 エマ:「エマたちはやることやった。そうでしょ?」
    沢村 秀吉:照れ半分、呆れ半分でため息をつく
    沢村 秀吉:「そうだけど……」
    東海林 エマ:「大丈夫。あれはきっと奥の手だから、回復には時間がかかるはず」
    東海林 エマ:「次はちゃんと仕留めよ」
    沢村 秀吉:「……ん、だな!」
    沢村 秀吉:慰められてしまったらしい。別に落ち込んでいるつもりはなかったが。
    沢村 秀吉:「次も頼むぜ、相棒」
    東海林 エマ:少年の手をぱっと離して、Vの字を作る。
    東海林 エマ:「任せて」
    沢村 秀吉:「………おう」
    沢村 秀吉:柔らかい感触が手から離れていく。
    沢村 秀吉:別に残念とか思ってないですよ?
    沢村 秀吉:(冷たかったな)
    沢村 秀吉:いや、思ってないって。頭を振る。
    東海林 エマ:ジャームが去って落ち着いてきているものの、土地由来の雪が変わらず降り続いている。
    東海林 エマ:上を向いてぼーっとそれを眺めていたかと思うと、また不意に少年の方を向く。
    沢村 秀吉:「あ」
    東海林 エマ:「?」
    沢村 秀吉:コートを脱いで、エマの肩にかける。
    東海林 エマ:「わふ」
    東海林 エマ:「寒くないの?」
    沢村 秀吉:「どうよ。当たり?」
    東海林 エマ:「半分くらい」
    沢村 秀吉:「ありゃ?寒いからさっさと帰ろうとかそっちだった?」
    沢村 秀吉:「残念無念。気が利く男を演出したかったんだがね」
    東海林 エマ:コートをもそもそ着込みながら、辛うじてはみ出た指先で△を作る。
    東海林 エマ:「キザなのに憧れてるの? 初耳」
    沢村 秀吉:(ちっさいな)
    東海林 エマ:ブーツで雪を踏みしめながら数歩歩いて、「あんまり寒いとかはないけどー」
    東海林 エマ:「おなかすいた。豚汁食べたい」
    沢村 秀吉:「男の子はいつだってスマートに決めたいんだぜ」
    沢村 秀吉:「キザまで行ってると、なんか……不安になるが」
    東海林 エマ:「そっか」 首を僅かに傾げる。長い黒髪に薄く積もった雪が滑り落ちる。
    沢村 秀吉:「はいはい。暖かいもん食べましょうねえ」
    東海林 エマ:「やった。豚汁~」 あからさまにご機嫌になる。見た目には、表情の変化はないようだが。
    東海林 エマ:──半分、というのは。ほぼ100点ということだ。
    東海林 エマ:彼が、他人の感情に対して非常に敏いことを少女は知っている。
    東海林 エマ:そうして、感じ取れる感情の──少女から伝わってくるものは、いつだって。
    東海林 エマ:半分は、食欲で満たされているからだ。
    沢村 秀吉:相棒の浮かれた気持ちが色になって見える。顔に出さないだけで、案外この少女は感情豊かだ。
    沢村 秀吉:思わず笑みが溢れる。友達が嬉しそうなら、そりゃそうさ。
    沢村 秀吉:(──どうしたら、)
    沢村 秀吉:表情に出すだろう。例えば。たとえば──
    沢村 秀吉:■■に■えさせられるのか。
    沢村 秀吉:(なし、なし)
    沢村 秀吉:いつものように邪魔をしてくる心の声を無視する。
    沢村 秀吉:「俺が仕留めそこねたぶんだ、今日は奢ろうか」
    東海林 エマ:幾分歩みが遅くなっている間に数メートルは先行していたが、振り返る。
    東海林 エマ:「そーいうのなし」
    東海林 エマ:「だって、エマたち"バディ"でしょ?」
    沢村 秀吉:「……そーだな」
    東海林 エマ:「あるとしたら、上着でチャラ」
    沢村 秀吉:「そりゃよかった」
    東海林 エマ:「これ、もふもふだし」 もこもこの襟元に真顔で頬を擦り付けて。
    沢村 秀吉:「……そりゃよかった」
    沢村 秀吉:なんだか気恥ずかしい気持ち。これでいい。
    沢村 秀吉:普通の人間はこういうもんだ。
    GM:──完全解決には至らなかったが、少なくともジャームの行動を抑制した。
    GM:同様の事件が発生したとしても、元凶の特定も出来ている。次は対応も迅速になるし、人数も増やせるだろう。
    GM:殆ど、この事件は終わった。
    GM:その筈……であった。

    UGNオペレータ:『──ですので、おふたりともお手数ですが』
    GM:現在、あなた達ふたりは、UGNからの召集を受けている。
    UGNオペレータ:『先の任務で交戦したジャームへの、追撃任務に加わっていただきたいのです』
    沢村 秀吉:「はあ……」
    沢村 秀吉:いささか気の抜けた返事が口から漏れる。
    東海林 エマ:「あれ。もう見つかったの?」
    沢村 秀吉:「や、そりゃ俺は問題なしです……けど」
    沢村 秀吉:「そう、それ。えらい早かったっすね?」
    UGNオペレータ:『はい、些か──』
    UGNオペレータ:通信機の向こうでは、ひとが慌ただしく行き来する気配がある。
    東海林 エマ:待機期間は二人とも過ぎている。バイタルチェックも問題なく、いつでも出撃して問題ないラインではあるが。
    東海林 エマ:「なにかイレギュラー?」
    UGNオペレータ:『──こちらの支部に起こしください。そこで説明を行いますが』
    UGNオペレータ:『場合によっては即時出撃がありえます』
    UGNオペレータ:『その為の用意だけお願いします。事前調査はどうにか間に合わせます』
    沢村 秀吉:「間に合わせます、って……」
    沢村 秀吉:「……ともかく、急ぎっすね。了解」
    東海林 エマ:変だね? とサワムラに視線を送って首を傾げている。
    沢村 秀吉:(まあ、変ではあるけど。任務だし、無視もできないし)
    東海林 エマ:「こっちも了解。なるはやで行きまーす」
    東海林 エマ:(長丁場になるなら、うーん。ご飯どうしようかな……)
    東海林 エマ:いつもは支部から血液製剤を融通してもらっているが。別支部では、説明が面倒だったりするのでそういうことはあまりしていない。
    東海林 エマ:(……ま、いっか。普通のご飯いっぱい食べよ)
    東海林 エマ:「よし、じゃ。ちょっと変な感じだけど、がんばろうね」
    沢村 秀吉:「おう。リベンジリベンジ」
    沢村 秀吉:ぐっと腕を掲げる。
    東海林 エマ:「おー」 真顔で腕を掲げ、それに応える。表れない昂ぶりに気付けるのは、君だけだ。……今この場においては。

    GM:ロイス取得のみ可能!
    沢村 秀吉:東海林 エマ  ○P:信頼/N:執着
    沢村 秀吉:以上!
    東海林 エマ:沢村秀吉 ◯連帯感/隔意 で取得しまーす
    GM:うす

    ミドルシーン1:さきがけ


    GM:このシーンはつまりいわゆる合流シーンです。
    GM:急に過去の事実を思いだして数日な霧崎くんと、討伐任務を終えたPC2タッグ。
    霧崎 零斗:なるほどね
    GM:霧崎くんがUGNに行方不明者報告をした結果色々あって……みたいな感じですね
    霧崎 零斗:メンタル的にはズンドコの時期ってわけだ
    GM:この3人は急遽集められましたが、急ぎだったので細かい事情は説明されていません。
    GM:何やら同じ任務に行くことになったらしい、とだけ、今は聞かされています。
    沢村 秀吉:了解!
    GM:ということで、部屋で霧先くんが鬱々としてるところにリア充ふたりがあらわれてください
    GM:はい
    GM:三人とも登場侵蝕!
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 2)増加 (43 → 45)
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 4)増加 (37 → 41)
    霧崎 零斗:霧崎 零斗の侵蝕率を1d10(→ 6)増加 (48 → 54)

    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:行方不明者報告そのものはつつがなく、つつがなさすぎるくらいに受理された。
    霧崎 零斗:UGNが何か知っているのか、あるいはこういった事件は多いのか。
    霧崎 零斗:いずれにせよはっきりしていることがある。
    霧崎 零斗:――俺は、人間じゃない。
    霧崎 零斗:――祈のことすら覚えていられなかった俺は、人間をなぞる人間のような何かに過ぎない。
    霧崎 零斗:感情と裏腹に、コンディションだけは最良で。
    霧崎 零斗:彼は合流する仲間たちを待つことができていた。
    霧崎 零斗:《七色の直感》
    霧崎 零斗:「――ッ」
    霧崎 零斗:もうすぐ来る何かの気配を察して、彼はわずかに口元を歪めた。
    霧崎 零斗:なんという皮肉だろう――と。
    東海林 エマ:「ここでいいんだっけ?」 扉の向こうから声。数秒後にコンコンとノックして、扉を開く。
    沢村 秀吉:「あー……のはず。こんにちはー」
    霧崎 零斗:「ウェアウルフ、それにハートステイクか」
    沢村 秀吉:道中で見た館内地図を思い出しながら答える。
    霧崎 零斗:「初めましてになるのかな。UGNチルドレン、スカイフォールだ」
    沢村 秀吉:「っす、どうも。えーと、あんたが……」
    沢村 秀吉:「コードネーム呼びは戦場ぐらいでいいだろう?えっと……霧崎でよかったっけ?」
    霧崎 零斗:「そう、今回の作戦のきっかけとなった男だと思ってくれて良い」
    霧崎 零斗:霧崎、と言われて少し悩む。
    東海林 エマ:「そうなんだ?」 そこまでの詳細は聞いていない。
    霧崎 零斗:「……まあ、それも正解だ。呼びたいように呼んでくれ」
    東海林 エマ:「エマはエマだよ。東海林でもいい」
    沢村 秀吉:「オッケー。俺は沢村秀吉。沢村賞の沢村に太閤殿下の秀吉な!」
    霧崎 零斗:「潜入任務の時以外はコードネームで通す主義でね」
    東海林 エマ:「模範的チルドレンだ」 真顔のまま神妙に頷いている。
    沢村 秀吉:「おお、クールだこと……ま、好きに呼んでくださいな」
    沢村 秀吉:「で……なんだっけ?作戦のきっかけ?」
    沢村 秀吉:「俺ら、突然呼ばれて事情が全然わかんねんだけど。なんか知ってんのかい」
    霧崎 零斗:名前で呼ぶと引きずる――が、それは個人の感傷だ。無意味な話だ。
    霧崎 零斗:「ああ、実はUGNチルドレンが一名、行方不明になっていてね」
    沢村 秀吉:隣に近寄ってうりうりと肘で軽くつく。
    霧崎 零斗:「その件について上に報告をしたところ、今回の招集に至ったというわけだ」
    霧崎 零斗:うりうりされても真顔である。
    沢村 秀吉:「……行方不明、か。いつから?」
    東海林 エマ:手に持っていた紙袋から、更に小さい紙袋を三つ取り出してくる。うりうりされている男と、している男に押し付ける。
    霧崎 零斗:「…………」
    沢村 秀吉:出てきた単語の剣呑さに流石に表情を引き締める。
    霧崎 零斗:「栄養補給か」
    東海林 エマ:残りの袋の上を千切ってもくもく食べ始める。たい焼きだ。道中に買った。
    沢村 秀吉:「お、いただきます」
    霧崎 零斗:「いただこう。感謝する。お礼をしたいが……まあ後だな」
    霧崎 零斗:「……五年前」
    霧崎 零斗:たいやきを一口で胃袋に収めてから、いきなり話し始める。
    沢村 秀吉:「……は?5年?」
    東海林 エマ:続け様にもう一つ取り出して齧りながら(今度はこしあんはなくカスタードだ)、男の話に耳を傾ける。
    霧崎 零斗:「五年前から行方不明だった――が、誰も覚えていなかった」
    霧崎 零斗:お茶をごくごくと飲む。
    霧崎 零斗:「ハッキリ言って異常事態だ。俺の……バディだったはずなのに」
    東海林 エマ:「……うん? じゃあ、今になってなんで?」
    沢村 秀吉:「誰も、って……そうか」
    東海林 エマ:「5年間忘れてたけど、急に思い出した、ってこと?」
    GM:「解析部門も混乱しているんです」──という声と同時に、会議室のドアが開けられる。
    霧崎 零斗:「ああ、俺が偽りの記憶を植え付けられている可能性もあるが……」
    霧崎 零斗:「おっと」
    沢村 秀吉:「む」
    鏑木 鵠:「なにせ〝秘匿されていない情報に誰も気付かなかった〟ことが判明したのですから」
    霧崎 零斗:「きてくださいましたか」
    鏑木 鵠:「……ああ、すいません、待たせました」
    鏑木 鵠:「今回、あなた達と同行します鏑木です。よろしく」
    鏑木 鵠:〝タンブラーピジョン〟鏑木 鵠。チルドレン上がりのUGNエージェントである。
    東海林 エマ:「ども、よろしくです。……たい焼き食べます?」 もう一つ出てくる。
    鏑木 鵠:数枚の資料を纏めてテーブルの上に置き、あなた達を手招きしつつ、
    沢村 秀吉:「沢村です。よろしくっす」
    沢村 秀吉:ぺこりと頭を下げて席に着く。
    鏑木 鵠:「もらいます」と左手を差し出す。健啖家である。
    沢村 秀吉:「エマ、話が逸れるからまた後で……あ、いいんだ」
    霧崎 零斗:「タンブラーピジョンはたいやきが好物だ」
    鏑木 鵠:たい焼きの頭に噛み付くと、手でなく首を動かして、たい焼きの頭部を引き千切る。
    鏑木 鵠:天井を仰ぐようにして喉を真っ直ぐにし、呑み込む。
    東海林 エマ:「やった。当たり」 独特だなあと思いながらその食べっぷりを見ている。
    沢村 秀吉:(豪快)
    鏑木 鵠:「さて、〝クアッド・モード〟──〝スカイフォール〟と組むことの多かったUGNチルドレン」
    鏑木 鵠:「霧崎さんの話によれば、彼女は〝晴待村〟という村へ任務へ出向き、そのまま行方不明になったと──」
    鏑木 鵠:そして、そのまま本題に入る。
    霧崎 零斗:「……簡単な偵察任務だったはずなんだ」
    鏑木 鵠:「ええ。調査したところ、確かに」
    東海林 エマ:「それが、5年前?」
    鏑木 鵠:「当該地域で〝簡単な偵察任務〟が行われ、特に何も発見されなかったと記録されています」
    鏑木 鵠:「5年前。ただし、任務従事者は別なUGN構成員」
    霧崎 零斗:「ああ、五年前」
    鏑木 鵠:「何事もなく帰還し、完了報告が行われた。その記録が確かに存在し……」
    鏑木 鵠:「〝クアッド・モード〟についての記録は無し。帰還も、死亡も、何一つ報告されていません」
    霧崎 零斗:「そう、そうだ、けど。間違いなく……クアッド・モードが……」
    鏑木 鵠:「行方不明になった、という報告さえも」
    東海林 エマ:「それは……変な話だね?」
    霧崎 零斗:「ああ、異常だ」
    東海林 エマ:「じゃあ、その。クアッド・モードの記録はどうなってるの?」
    鏑木 鵠:「……奇妙な話なのですが、調べると、情報は出てくるんです」
    鏑木 鵠:「たしかに〝クアッド・モード〟はUGNの任務として、晴待村へ赴きました」
    鏑木 鵠:「が、そこから音沙汰無し。その上にUGN側も」
    鏑木 鵠:「〝まるで彼女の存在を忘れたかのように〟別な人員を現地へ派遣し、事態の解決を確認しています」
    鏑木 鵠:「霧崎さん」
    霧崎 零斗:「はい」
    鏑木 鵠:「〝クアッド・モード〟──春日 祈を、覚えていますか?」
    霧崎 零斗:「思い出した」
    霧崎 零斗:「覚えている、今は」
    霧崎 零斗:忘れられない、相手だったのに。
    鏑木 鵠:眉間に常に寄っている皺が、少し深くなる。
    鏑木 鵠:「……私も、2度や3度は顔を合わせた事がありますが、思いだしました」
    鏑木 鵠:「逆に言えば、霧崎さんの報告があるまで、完全に忘れていたんです。こんな不自然な事態を」
    東海林 エマ:「うーん、いくつも不思議なところがあるよね」
    沢村 秀吉:「記録上存在してるのは間違いないのに、みんなが忘れていた……妙な話だな」
    東海林 エマ:首が梟のように傾いていってはもとに戻ることを繰り返している。
    沢村 秀吉:「霧崎の報告があってみんな思い出したってことか?」
    鏑木 鵠:「思いだしたし、気付いた……というところでしょうか」
    霧崎 零斗:「俺がもっと早く思い出せていれば……という話だな」
    沢村 秀吉:「……じゃあ、霧崎は?なにか思い出すきっかけがあったのか?」
    霧崎 零斗:「夢を見た」
    霧崎 零斗:「本当にそれだけなんだ。彼女が消える直前の会話」
    霧崎 零斗:「その時と同じ夢だけだ……」
    東海林 エマ:「そっか。大事な人だったんだ」
    東海林 エマ:「良かったね。今からでも、思い出せて」
    霧崎 零斗:「彼女に意識を割いた時間は――」
    霧崎 零斗:「――いいや、そうだな」
    霧崎 零斗:「大事な相手だったんだろう、俺にとって」
    霧崎 零斗:「思い出せてよかった、かもしれない」
    沢村 秀吉:「……そっか」
    沢村 秀吉:「んじゃ、思い出せてよかった、で終わらせちゃだめだな」
    沢村 秀吉:「また会えてよかった、までいかなきゃだ」
    東海林 エマ:「でも、5年前だよ?」
    東海林 エマ:「その……あんまり言いたくないけど。時間、経ち過ぎてると思う」
    霧崎 零斗:「死んでいる可能性が高い」
    霧崎 零斗:「いや、死んでいなくとも、もっとひどいことになっている可能性もあるだろう」
    東海林 エマ:「…………」 言うんだ、と少し唖然と。
    霧崎 零斗:「その時は俺が始末をつけるべきだ」
    沢村 秀吉:「けじめの話か?」
    鏑木 鵠:「簡単に言うものじゃないですよ」
    鏑木 鵠:ばさっ……と、一枚の地図をテーブルに拡げながら言う。
    霧崎 零斗:「必要な話ですよ」
    霧崎 零斗:地図を眺める。
    鏑木 鵠:「同僚だとか、友人だとか、そういう間柄だった誰かを殺すのは」
    鏑木 鵠:「確実に私達オーヴァードの、人間でいられる時間を縮めます──と」
    鏑木 鵠:ぴ、と地図の一点を指差す。
    霧崎 零斗:冷淡そのものにしか見えない態度。それは人間の衝動というものが欠落しきっていると捉えることもできたが。
    東海林 エマ:「……ま。今はまだ、それについて答えを出すときじゃないし──ここは?」
    鏑木 鵠:「縮尺が大きいのでわかりづらいと思いますが、」
    鏑木 鵠:「〝ハートステイク〟と〝ウェアウルフ〟が先日、ジャームを撃退した地点です」
    鏑木 鵠:そこから数十センチ──実寸にして数キロほどの位置へ指を滑らせると、
    沢村 秀吉:「ああ、あの雪の」
    霧崎 零斗:「…………」
    鏑木 鵠:その村の名が、あった。
    鏑木 鵠:「晴待村」
    鏑木 鵠:「地図にも、公的書類にも名が乗っているのに、誰もがその存在を忘れていたし気付かなかった、」
    鏑木 鵠:「〝クアッド・モード〟が赴き行方不明となった、まさにその場所です」
    沢村 秀吉:「なるほど。それで俺らも呼ばれたわけね」
    東海林 エマ:「その晴待村に、逃げたジャームが潜んでるってこと?」
    鏑木 鵠:「可能性は高いでしょう。解析部の賢いひとが言うには、」
    霧崎 零斗:「成る程……」
    鏑木 鵠:「〝特定空間を隔離・位相転換を行うことによる世界全土への認識阻害〟がどうとか──」
    鏑木 鵠:「細かいことはわかりませんが、つまり」
    鏑木 鵠:「そのジャームが村を隠したせいで、世界が村を見つけられなくなった、思い出せなくなった……と推測されます。らしいです」
    霧崎 零斗:「幽世かくりよのようなものですか」
    東海林 エマ:「……なるほどー」 理解を放棄しかけたので端的にまとまって助かったなあと安堵している。
    霧崎 零斗:「オルクスのジャームならばあるいは……そうか」
    鏑木 鵠:「現地での飲食行為に躊躇いは?」
    東海林 エマ:「えっ飲食禁止なんですか?」
    霧崎 零斗:「危険かもしれませんね」
    東海林 エマ:この世の終わりのような顔をしている。誰でも分かるレベルの表情の変化。
    沢村 秀吉:「俺はほどほどに耐えられますけど……」
    沢村 秀吉:あちゃあ、と隣の少女を見る。
    霧崎 零斗:「異界での飲食は、その世界の一部となることに繋がりますから……」
    沢村 秀吉:「そういうもんかあ」
    鏑木 鵠:「……沢村さん。あとで東海林さんに〝ヨモツヘグイ〟と〝ジョーク〟の説明をしてあげてください」
    鏑木 鵠:「こほん」
    鏑木 鵠:「村、です。となれば当然、そこには住民もいます」
    鏑木 鵠:「東海林さんの言うように、事態発生から5年が経過し、生存は絶望的やもしれませんが」
    鏑木 鵠:「何もしない訳にはいきません。ホワイトハンドと護衛・輸送班の編成は進めており、18時間以内の出動が可能です」
    鏑木 鵠:「……その上で、一応聞きますが」
    鏑木 鵠:「ホワイトハンドとの合流を待ちますか? それとも──」
    鏑木 鵠:推して知れ、とばかりに腕を組む。
    沢村 秀吉:「……ん、そうだな」
    霧崎 零斗:「俺は行く」
    沢村 秀吉:「まずは霧崎君の意見を……っと」
    沢村 秀吉:「聞くまでもなかったか」
    東海林 エマ:「無理してない?」
    霧崎 零斗:「無理はしていない。彼女がまだ生きているならば、きっと喜ぶだろう」
    霧崎 零斗:「ならばそれが俺の為すべきことだ」
    東海林 エマ:「……ん。なら、来てくれる方が助かる」
    東海林 エマ:「単純に数が多い方がいい。それに、エマたちだとその人がいても分からないかもだし」
    沢村 秀吉:「俺が行くのは確定みたいに言うね」
    東海林 エマ:「来ないの?」
    沢村 秀吉:「行きますけどぉ!」
    霧崎 零斗:「そう思ってな」
    鏑木 鵠:「でしょうね」仏頂面を取り繕おうとしているが、口元が少し緩んでいる。
    東海林 エマ:どうどう、と逆だった髪をぺたぺたする。
    沢村 秀吉:「なんすか、生暖かい目は……コホン」
    霧崎 零斗:「俺は一人でも行くが、俺一人で行く無理をせずに済むのは助かる」
    鏑木 鵠:「では、行きましょう」
    鏑木 鵠:「当該地点の近くまでは整備された公道がありますが、その先は」
    鏑木 鵠:「整備を五年放置された、豪雪地帯の、冬。車輌の通行は難しいと見て良いでしょう」
    鏑木 鵠:「……ですから、極めて古風な手段で行きます」
    霧崎 零斗:「犬ぞりですか」
    鏑木 鵠:「人力です」
    東海林 エマ:「望むところー」 ふんす、と気合を入れる。
    沢村 秀吉:「うひぃ……了解っす。耐寒装備~」
    霧崎 零斗:「……体力勝負は苦手なんだがな」
    沢村 秀吉:「でも行くんだろ?」
    鏑木 鵠:「では、出撃は最長30分後! 準備が整い次第出ます、物資補給を忘れないように!」
    沢村 秀吉:「うおっと、了解っ!」
    沢村 秀吉:「あ、ちなみに。飯はまじで持っていかないほうがいいわけ?」
    東海林 エマ:「ごはん……」
    鏑木 鵠:「むしろ、ちゃんと携帯してください」
    東海林 エマ:「!」 急に元気になる。
    沢村 秀吉:「重ねて了解!」
    霧崎 零斗:「現地調達が不可能と言うだけだ」
    沢村 秀吉:やったね、とガッツポーズをエマに向ける。
    鏑木 鵠:「ジャームの領域の中を歩いている鹿を捕まえたとして」
    鏑木 鵠:「食べたいです?」
    沢村 秀吉:「そりゃそうだ……」
    東海林 エマ:だめかなあという顔をしている。
    霧崎 零斗:――生きていても、彼女は帰ってこられないというだけだ。
    鏑木 鵠:「……味の問題ではなく!」
    東海林 エマ:「むーん…………現地で食べない、飲まない。おっけーです」
    霧崎 零斗:――だからこれは、俺に残った最後の人間らしさを葬る旅。
    東海林 エマ:「じゃあ、ちょっと医務室に寄ってから~……あ」 何か思いついたように、ぽん、と手を叩いて。
    霧崎 零斗:――ウソみたいな奇跡などは望むまい、それでも、俺が生きている限り絶対に。
    東海林 エマ:「会った時に分かるように、ちゃんと思い出しといてね」 物思いに耽っているらしい男に向けて。
    東海林 エマ:「5年も経ったら、すっかり成長してるはずだし。いくら旧知でも、分かんないかもよ」 言って、医務室の方へと駆けていく。
    霧崎 零斗:「ああ、絶対に思い出す」
    東海林 エマ:奇跡の方の可能性が少しでもあるなら。それはそれで素敵だと思うのだ。勿論、期待はしていないにしても。
    霧崎 零斗:「思い出すことにかけては、UGNの中でもとりわけ得意な方でね」
    霧崎 零斗:なにせ、元より何もかも忘れてしまう身体なのだから。
    沢村 秀吉:「……霧崎君」
    沢村 秀吉:「お前、ほんとに大丈夫か?」
    霧崎 零斗:「俺は大丈夫だ」
    沢村 秀吉:「だといいけど。なんつーか、今、お前」
    沢村 秀吉:「……絶望したがってるようにみえるぞ」
    霧崎 零斗:オーヴァードに欠かせない筈の絆が欠けて平気な人間なのだから。
    霧崎 零斗:「俺は……」
    霧崎 零斗:「必要なことをやるだけだよ」
    霧崎 零斗:人間ではなかったのだった。
    霧崎 零斗:「できるんだから、俺がやった方がいい」
    霧崎 零斗:みんなの分まで。
    沢村 秀吉:「……そりゃまた」
    沢村 秀吉:「随分と、人間らしいな。お前」
    霧崎 零斗:「そう見えるなら、祈のお陰だろうな」
    霧崎 零斗:春に風が吹いて花が綻ぶように。
    霧崎 零斗:少年の表情には希望を求める色が滲んでいた。

    GM:ロイス&調達が可能。
    GM:なお調達ですが、
    GM:UGNの支部でちゃんと準備してから出撃したし、財産点をみなに5点ずつ差し上げましょう。
    沢村 秀吉:あっやったー!
    東海林 エマ:やったー
    沢村 秀吉:いただきます
    GM:これで美味しいボデマでも食べなさい。
    霧崎 零斗:びゃあああ~~~~~~
    霧崎 零斗:ぼでまたべりゅう~~~~!
    沢村 秀吉:いただきます もぐもぐ
    霧崎 零斗:1dx>=12
    DoubleCross : (1DX10>=12) → 4[4] → 4 → 失敗

    東海林 エマ:お小遣い(財産点)が11に増えました
    霧崎 零斗:財産点使ってもだめですね
    沢村 秀吉:もしものときのために応急手当キット買っておこう
    沢村 秀吉:1DX+3+0@10>=8 調達
    DoubleCross : (1DX10+3>=8) → 1[1]+3 → 0 (ファンブル) → 失敗

    霧崎 零斗:お小遣い七点ですからね
    沢村 秀吉:はい
    沢村 秀吉:以上!
    霧崎 零斗:ロイスですが
    沢村 秀吉:あっとロイスがあった
    東海林 エマ:NC収載のすごい応急キット買っちゃお
    東海林 エマ:1dx+4>=9 高性能治療キット
    DoubleCross : (1DX10+4>=9) → 8[8]+4 → 12 → 成功

    沢村 秀吉:霧崎 零斗  ○P:隔意/N:不安
    東海林 エマ:きっと医務室で調達してきたなんやかや リュックにないないします
    沢村 秀吉:改めて以上!
    霧崎 零斗:沢村 秀吉 ○P:連帯感/N:食傷
    東海林 エマ:ロイスは保留するよー
    霧崎 零斗:以上!
    GM:OK!

    ミドルシーン2:なれはて


    GM:全員登場!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 6)増加 (41 → 47)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (45 → 53)
    霧崎 零斗:霧崎 零斗の侵蝕率を1d10(→ 1)増加 (54 → 55)

    GM:氷点下10度の世界──あなた達は雪上を歩いている。
    GM:もう少し詳しく言うと、降り積もって、自身の重さでガチガチに固まった雪の上を、最低限の装備だけを背負って歩いている。
    GM:……そして、応急手当の資材やら、調査用の機材やらの大荷物は、
    GM:あなた達の頭上10mほどをバサバサと羽ばたく鏑木が、纏めて担いで飛んでいる。
    鏑木 鵠:「本当ならバロール能力者の空間操作に頼れれば良かったんですが」
    鏑木 鵠:「ジャームの専有する領域の中では、空間操作が正常に働かない場合がありますから」
    東海林 エマ:鳥だー、と上を見ながらえっちら歩いている。
    沢村 秀吉:「レネゲイドには頼れないと……!しっかしさっむ……!」
    霧崎 零斗:「今回の相手は種が知れません。今我々に打てる手の中で最良のものでしょう」
    沢村 秀吉:「ここほんとに日本かよ……いや、異界みたいなもんなんだっけ?」
    東海林 エマ:背負ったリュックの中には主に食料が大量に詰め込まれて、さながらカタツムリの様相を呈している。
    東海林 エマ:「分類的にはバロールらしいけど、エマあんまりそういうの得意じゃないからなあ」
    鏑木 鵠:「寒冷地なんて、こんなものですよ」
    霧崎 零斗:狙撃銃と携帯食料・飲料水のみの比較的身軽な装備だ。
    沢村 秀吉:「まあそこはどっちにしろ頼れなかったらしいし、大丈夫大丈夫……」
    鏑木 鵠:「地域によっては氷点下20度も珍しくないんですから、むしろ──」
    沢村 秀吉:「ってか、それ重くねえ?持とうか?」
    霧崎 零斗:なにせこの中で、零斗が肉体的には最も一般人に近い。
    鏑木 鵠:空を見上げる。鉛色の雲に覆われた空。
    東海林 エマ:「平気~」 強がっている様子もない。
    鏑木 鵠:「──この程度の気温で住んでいるのが幸運かも知れません」
    東海林 エマ:「これ以上寒くならないといいね。サワムラが凍っちゃう」
    霧崎 零斗:「凍るのか、ウェアウルフ」
    東海林 エマ:「狙撃手だから、指大事なんだよ」
    東海林 エマ:「エマはちょっとくらい適当で大丈夫だけど」
    鏑木 鵠:「ウェアウルフなんてコードネームなんですから、毛皮くらい出てこないんですか?」
    東海林 エマ:「キュマイラじゃあるまいに……ん、だけどなんで"ウェアウルフ"なの? 聞いたことなかった」
    沢村 秀吉:「残念、狼は心の中に飼ってるのです。男の子はみんなね」
    霧崎 零斗:「モフモフなのか? ウェアウルフ?」
    東海林 エマ:「そかー、心の中か」
    沢村 秀吉:「モフらねーよ!」
    霧崎 零斗:「成る程な……年頃ということか」
    霧崎 零斗:「失礼した」
    沢村 秀吉:「……そう、心んなかよ」
    沢村 秀吉:「マジ反応もやめてもらえる!?ちょっとはずくなるから!」
    GM:幾分か賑やかに、あなた達は、道なき道を行く。

    GM:歩いて行く。雪上に足跡を残しながら。
    GM:十数分も歩いただろうか。そのうち、周囲の雰囲気がなんとなく変わって、
    GM:ふと、何かの拍子に、あなた達の誰かが背後を振り返った時──
    GM:そこには、地平の彼方まで続く雪原が広がっていた。
    沢村 秀吉:「……おお?」
    霧崎 零斗:「これは……空間操作か?」
    沢村 秀吉:ふと振り向くと、一面の雪景色。強化された視覚でもその先が映らない。
    霧崎 零斗:「一先ず入れた、ということにはなるかもしれんが……」
    東海林 エマ:「んー、確かに変な感じだね」
    GM:前方の景色は変わらない。雪を被った針葉樹の山。
    GM:というよりは寧ろ──
    GM:無限の雪原の中に、ほんの一部、山があって、針葉樹の森があるという風情か。
    東海林 エマ:「こんなところに、ほんとに人がいるのかなあ」
    沢村 秀吉:「もし領域に入ったってんなら、そう遠くないとこに村もある……はず、だよな?」
    沢村 秀吉:んー、と目を凝らして周囲を観察する。
    東海林 エマ:「そのはずだけど、何か見える?」
    鏑木 鵠:「ええ、その筈です。警戒を怠らないように──お」
    GM:見えるものは、
    GM:……小さな、人工的な光。
    GM:その光は動いていて、次第に大きくなってくる。
    沢村 秀吉:「鏑木さん、上から見えてます?」
    GM:つまり、こちらに近づいてきているのだ。
    沢村 秀吉:「なんか光が……動いてる?」
    霧崎 零斗:「敵か、敵以外か……」
    GM:幾分か近づくとわかるが、それは、ハロゲンライトの光であった。
    東海林 エマ:「村の人……かなあ?」
    GM:雪原に吸い込まれてか、エンジン音は案外に小さい。
    沢村 秀吉:「どうする、接触するか?それとも様子見?」
    GM:金属を寄せ集めて作ったような、不格好な外観の装甲車が、
    霧崎 零斗:「……まさか」
    GM:雪に沈まぬよう幅広の履帯で、こちらへ向かってくるのが見えるだろう。
    東海林 エマ:「どっちにしても、村には行かなくちゃいけないし。人がいるなら訊いてみるのもいいかもだけど──どうしたの?」
    霧崎 零斗:「祈が生成していた雪上車に似ている……!」
    霧崎 零斗:「……失礼、クアッド・モードだ」
    東海林 エマ:「いいよ、言い直さなくて。わかるから」
    沢村 秀吉:「じゃあ、まさか……」
    霧崎 零斗:「俺が接近してみたい。ただの敵ならばリザレクト一回で済むしな」
    霧崎 零斗:そう言って一番前に出る。
    東海林 エマ:「ん。……じゃ、エマたちはもしもの時にすぐ行動できるようにしとこっか」
    東海林 エマ:「指、大丈夫そ? 撃てる?」
    霧崎 零斗:そのままゆっくりと近づいていく。
    沢村 秀吉:「だいじょぶ、サンキュ。……敵だったらリザレクトの前に撃ち抜くよ」
    霧崎 零斗:そもそも感覚に優れた実験体である以上、この手の索敵こそが得手だ。こういった動きは慣れている。
    GM:……やがて、彼我の距離は十数mにまで縮まった。
    東海林 エマ:この距離であれば、十分援護に応じられる。霧崎に向けて、うんうんと頷いた。
    GM:装甲車の運転席のドアが開く。固い雪を踏みつける、ざくりという音。
    GM:吹雪いてはいなかったから、その距離があったとしても、
    少女:その運転手の顔を見分けることは、容易であっただろう。
    霧崎 零斗:「…………」
    少女:背丈は、160cmまでは無いだろう。
    少女:右目の外側から頬にかけて、大きな傷跡がある。
    少女:身長という特徴は合致しているようにも思えるし、
    少女:傷跡という特徴は、合致していないようにも思える。
    少女:「……誰?」
    霧崎 零斗:「春日祈、なのか?」
    少女:「どうして、知らないひとが、ここに」
    少女:「……………………」
    霧崎 零斗:「俺はスカイフォールだ」
    少女:呆けたような顔をして、歩を進める。
    少女:近づいてみると良く分かる。
    少女:あれから背丈は、ほぼ伸びていない。
    少女:「……あ」
    少女:「……霧崎……?」
    少女:ざくっ ざくっ
    霧崎 零斗:「祈……!」
    霧崎 零斗:思わず駆け出していってしまう。
    少女:雪を踏みつけて、歩く。
    少女:「夢……?」
    少女:「私、凍死寸前だったり……する……?」
    霧崎 零斗:「夢じゃない。救援に来たんだ!」
    少女:「きゅうえん」
    少女:知らない言葉のように、オウム返しに呟いて、
    少女:彼女は、あなたの前に立つ。
    少女:……ふらりと、その身体が傾いて、
    少女:あなたの胸に頭を預けるよう、倒れ込む。
    霧崎 零斗:それを抱きとめて、安堵のため息をつく。
    少女:「あ、あ」
    少女:「本物だ、本物の──あぁ、あ」
    少女:本物の体温だ、と。
    少女:そう呟いた少女の身体は、雪のように冷えている。
    霧崎 零斗:「生きていてよかった……もうすぐUGNの増援も来る!」
    少女:……寒い、というだけではあるまい。
    霧崎 零斗:ではですね。
    少女:その身体は奇妙に、生物とは思えない程に冷たく、堅いのだ。
    霧崎 零斗:《七色の直感》などで彼女が人間かどうか分かりますか?
    少女:抱き留めた腕に伝わるのは、心音だけではない。
    少女:ギヤの擦れ合う音や、動力炉の駆動音。
    少女:……人間か?
    少女:人間という言葉の定義をどこに置くかという問題はあるが──確かにこの少女は、
    少女:春日 祈は、人間だ。
    春日 祈:5年の歳月が彼女から、生まれ持った肉体を奪い取ったとしても、
    春日 祈:この少女は、人間だ。
    霧崎 零斗:では特に警戒もしませんね。ブラックドッグだったかどうかは記憶としてあやふやでしょうが、後からトライブリードやクロスブリードになることはありますからね。
    春日 祈:「あぁぁあ、ああぁ」
    春日 祈:「あぁ、ぁああああぁぁ……!」
    霧崎 零斗:「ど、どうした祈!?」
    春日 祈:それから少女は──5年前よりもずっと子供っぽく、大口を開けて、わあわあと泣いた。
    春日 祈:しばらくの間、泣き続けて、それから──ふっとあなたの腕の中で力が抜ける。
    春日 祈:すぐにも聞こえて来る、規則的な呼吸音。
    春日 祈:泣き疲れて眠る。本当に、子供のように。
    霧崎 零斗:悲しいのだろうか。きっとそれは違う。
    霧崎 零斗:彼女の感情は悲しみとは違う。
    霧崎 零斗:だから零斗は彼女を抱き上げて、仲間たちの方を振り返る。
    霧崎 零斗:「要救護者発見、撤退を具申します」
    霧崎 零斗:「彼女を……家に……」
    鏑木 鵠:「…………」翼を止めて雪上に降り、無言のまま、東海林と沢村に交互に視線を向ける。
    霧崎 零斗:彼女はそういうことを、望む人間と知っているから。
    東海林 エマ:「……ん。じゃあ、ここから別行動になるかな」
    東海林 エマ:「安全なところまで護衛してあげたいのは山々だけど」
    東海林 エマ:「ジャームの件も、放っておけない。なるべく早く対処した方がいい、そうだよね?」
    沢村 秀吉:「……だな。それに」
    霧崎 零斗:「確かにそれもそうだ。この先に進むならば今のクアッド・モードは足手まといにもなる」
    霧崎 零斗:「荷物の軽い俺が背負っていくのが一番無理がない」
    霧崎 零斗:「彼女を本隊に送ったら戻ってくる――まだ君らに恩を返せていないからな」
    鏑木 鵠:「撤退を承認します────と、本来ならば言うべきでしょうが」
    沢村 秀吉:「……霧崎」
    鏑木 鵠:「敢えて、聞きます」
    沢村 秀吉:「ちょっと、一回落ち着け」
    霧崎 零斗:「……?」
    鏑木 鵠:「〝何処に〟?」
    東海林 エマ:「……そう。帰れるのかな、ってエマも思ったとこ」
    霧崎 零斗:「…………」
    鏑木 鵠:視線を後方に向ける。無限に広がる雪原へ。
    霧崎 零斗:「……………………」
    霧崎 零斗:「……忘れていた」
    東海林 エマ:「しょうがないよ。急なことだったし」
    霧崎 零斗:どうしようもなく、忘れっぽいのであった。
    沢村 秀吉:「彼女と再会して、嬉しかったし焦ったんだろ?無理もねえよ」
    霧崎 零斗:「すまない……そもそも我々が異空間の中に居たことを忘れていた」
    鏑木 鵠:「気持ちは察します。……一応、年長者として提案しますが」
    鏑木 鵠:「この雪原で、ただ野宿をして五年を過ごせるとは思いません。きっと拠点を築いている筈」
    鏑木 鵠:「何をするにもまず、そこを目指すのはどうでしょう」
    沢村 秀吉:「まずは落ち着けるところを目指すってことね。賛成です」
    東海林 エマ:「ね。その子が乗ってきた車って動くかな?」
    霧崎 零斗:「ああ、動く」
    霧崎 零斗:「なんなら運転もできるぞ」
    霧崎 零斗:※《巨匠の記憶》があるので
    霧崎 零斗:「……いや」
    東海林 エマ:「多少は寒さもマシだろうし、来た方向に行けば何かあるかも」
    東海林 エマ:同い年だったはずだけどなあ、と思いつつ。
    霧崎 零斗:「クアッド・モードが元気なら間違いなく俺でも動かせたが今はいけるのか……?」
    鏑木 鵠:「なら、まずは車内へ。この気温は命を削ります」
    東海林 エマ:「とりあえず、やってみてよ。無理だったらその時考えよ」
    霧崎 零斗:「了解した」
    鏑木 鵠:「いえ、まぁ、私は翼有りますし割とどうにかなりますが。寒いでしょ、皆さん」
    沢村 秀吉:「寒いっす!」
    鏑木 鵠:「なら乗って! あと〝クアッド・モード〟も乗せて!」
    東海林 エマ:「やったー。文明の利器だー」
    霧崎 零斗:「了解!」
    霧崎 零斗:面白そうなので運転の判定してみてもいいですかw
    GM:ほう
    GM:良い度胸をしていますね
    GM:許可します
    霧崎 零斗:よっしゃあ!
    沢村 秀吉:やるのか霧崎……!肉体は1だぞ!?
    霧崎 零斗:じゃあ《巨匠の記憶》《コンセントレイト:モルフェウス》で
    東海林 エマ:"本気"じゃん
    霧崎 零斗:イージーエフェクトの《構造看破》でボーナス入りますか!!!!!!
    霧崎 零斗:ガチるしかねえ!
    GM:特に無い!
    霧崎 零斗:よっしゃあ!
    霧崎 零斗:2dx7 いけえ!
    DoubleCross : (2DX7) → 6[2,6] → 6

    霧崎 零斗:・・・・・・・・・・・・
    GM:では
    霧崎 零斗:惜しいなあ~~~~
    GM:──どるるるるるるるるる
    霧崎 零斗:侵食は55→59です
    GM:ぷすん
    GM:がごん
    GM:……しぃん
    GM:この擬音はつまり、エンジン音を模したものである。
    鏑木 鵠:「……………………」
    霧崎 零斗:「くっ」
    沢村 秀吉:「……霧崎君?」
    東海林 エマ:「おっ」「うわっ」 大きく前後に揺さぶられてがくんがくんなる
    東海林 エマ:「だめそう」
    霧崎 零斗:「やはりマニュアル車は難しいな……」
    鏑木 鵠:「よいしょ」霧崎の首根っこを掴み後部座席に放り込む!
    沢村 秀吉:「AT限定かよ!」
    霧崎 零斗:「ぐえーっ!」
    東海林 エマ:「おうっ」 ナイスキャッチ!
    鏑木 鵠:「シートベルト着用を忘れないように」
    鏑木 鵠:「私、ペーパードライバーですんで」
    霧崎 零斗:「クアッド・モードのギアチェンはすごかったんだがな……頭で分かっていてもうまくは……えっ」
    沢村 秀吉:「あっ、はい……よろしくお願いします……」しっかりシートベルトを締めなおす。
    鏑木 鵠:「大丈夫」
    霧崎 零斗:(あかん)
    鏑木 鵠:「少なくとも対向車はいません」
    霧崎 零斗:(よし!)

    GM:……履帯の広さと雪の堅さで、車体が沈むことは無かったが、さほど速度は出せない。
    GM:時速20km程度で数分。あの針葉樹の山が近づいてきた。
    GM:山の麓には、村の残骸があった。
    GM:残骸というのは例えば、壁も屋根も無くなった柱だけが凍り付いて立っているとか、
    GM:最寄りの町まで十数キロメートルだと示す青い看板の、酷く錆び付いたものが落ちているとか。
    GM:或いは……立ったままで凍り付いている、四肢がねじくれた異形の生物。
    GM:おそらくは村民であったのだろう。平凡な衣服の切れ端を身に纏ったジャームは、頭部を破砕されたまま、氷に封じられている。
    鏑木 鵠:「……晴待村」
    鏑木 鵠:「写真資料とは随分違いますね……」
    東海林 エマ:「……思ってたより十倍くらい寂れてるなぁ」
    東海林 エマ:「人がいるようには思えないけど」
    霧崎 零斗:「この環境でブラックドッグの能力を活かしつつ、なんとかサバイバルを続けていた……ということになるのだろうな」
    霧崎 零斗:眠る春日祈の方を見ながらつぶやく。
    沢村 秀吉:「生存者と、どこか落ち着ける場所を探そう」
    霧崎 零斗:「……生存者、居るのか?」
    鏑木 鵠:「ええ。とは言え、どの建物も──」
    沢村 秀吉:「いつまでも硬いシートに寝かせるのもかわいそうだ」
    GM:人が住んでいただろう建物は、ある。
    沢村 秀吉:「……一人は居たんだ。確認するまでは0じゃないさ」
    GM:だがその殆どは、壁や屋根が大きく欠損し、内側に雪が吹き込んでいる。
    GM:無傷の建物は、見えない。
    GM:……いや。
    鏑木 鵠:「……?」
    霧崎 零斗:(祈が生きていたのは優れた素質と幸運で片付けても良い……いや)
    鏑木 鵠:鏑木が少し前方を指差す。
    霧崎 零斗:(今ここにいる彼女が祈りに似た何か……)
    霧崎 零斗:それに気づいて顔を上げる。
    GM:朽ちた建物の隙間から、奇妙なものが見えた。黒い壁だ。
    GM:商店だとか、住居だとか、そういう雰囲気には見えない、黒い壁──
    春日 祈:「そこの交差点を、左に曲がって」
    霧崎 零斗:「祈……クアッド・モード、意識を取り戻したのか」
    春日 祈:むくりと身体を起こし、鼻を啜って、それから車内を見回す。
    東海林 エマ:「よかったね、とりあえずは」
    春日 祈:「全員、UGN?」
    沢村 秀吉:「そうだ。どこか行くあてがあるのか?」
    春日 祈:「村役場。あそこにみんな集まってる」
    東海林 エマ:「へえ、そんなのが」
    東海林 エマ:「じゃあ、他にも人はいるんだ?」
    春日 祈:「うん。……まぁ、どうにか」
    春日 祈:声音は、暗い。
    霧崎 零斗:「リソースが不足しているな?」
    春日 祈:頷き、「致命的に」
    春日 祈:「私の物質変換は、空気中の元素にまでは手が出せない」
    霧崎 零斗:「となれば、後続部隊がここまで来られるかが勝負だな」
    霧崎 零斗:「少しずつここにあったものを使いながら凌いでいたということか」
    東海林 エマ:(何人いるにしても、随分過酷な生活だったんだろうな……お腹も空くだろうし)
    東海林 エマ:「……あ、これ。よかったら食べる?」 思い出したようにエネルギーバーを取り出して、祈に。
    GM:車は進む。交差点を左に曲がり、道なりに真っ直ぐ進み、次で右に。
    GM:あの黒い壁がちょうど、進路正面に現れた。
    春日 祈:「ん、いや……今はいいよ」
    春日 祈:「持ってて。もしかしたら欲しがる子、いるかもしれないから」
    春日 祈:「だって、あそこは」
    東海林 エマ:そっか、と包装を剥こうとしていた手を止める。
    GM:そこは、平凡な集落には似つかわしくない、用途のみを求めて作られた、不格好な施設であった。
    GM:黒塗りの、高い、金属の壁。ここからではわかりづらいが、円形の砦のように配置されているらしい。
    GM:壁面には窓と、おそらくは迎撃用の実弾砲や、銃座。
    GM:装甲車が進むと、それを迎え入れるように壁の一部が開く。その先には、
    GM:昭和の建物そのままという風情の、田舎の村役場があった。
    春日 祈:「ここは。……なんにもないからさ」
    春日 祈:「娯楽も希望も、なんにも」
    霧崎 零斗:「……」
    GM:あなた達の背後で、急くように壁が鎖される。
    GM:寒風が遮られて、壁の内側は雪も無く、案外に暖かかった。
    春日 祈:「着いてきて」
    霧崎 零斗:「ああ」
    東海林 エマ:「よいしょ」 装甲車を降りて、大きなリュックを背負い直す。「……あ。結構ぬくい」
    沢村 秀吉:「ここ、ほんとに日本かよ……ってか」
    沢村 秀吉:(落ち着ける場所……本当に落ち着けるのかね、ここで)
    春日 祈:あなた達を先導し、歩いて行く。
    霧崎 零斗:(この環境、通常のチルドレンでは摩耗し尽くすな……)
    霧崎 零斗:(祈の精神は……いや、今考えるべきではないか)
    東海林 エマ:「急にエマたちが来て、大丈夫かな?」
    GM:村役場の建物の中は、外より更に暖かい。……とは言え室温は15度程度のものか。
    沢村 秀吉:「大丈夫……ではないかもな。けど、いずれにせよ状況は把握しないと」
    GM:あちこちの床には、ボロボロの毛布にしがみつくようにして、この村の住人が、座ったり横たわったりしていた。
    GM:いずれもあなた達へと奇異なものを見る目は向けるが、声を掛けるなどの働きかけは無い。
    GM:ぼんやりと、力のこもらない目で、あなた達を視るだけだ。
    沢村 秀吉:(好奇心で動けるだけの体力も気力もない……か)
    GM:役場の最上階、村長室。
    GM:扉を祈が押し開けると──
    霧崎 零斗:(ジリ貧だな……)
    女の子:向こう側からグイっと扉が引っ張られ、女の子が姿を現す。
    女の子:「お姉ちゃん! 大丈夫!? ……と、誰!?」後半は、あなた達に向けられた言葉だ。
    東海林 エマ:「お邪魔してます」
    霧崎 零斗:「はじめまして」
    春日 祈:「誰、って……えーと、なんて言えばいいんだろう」
    沢村 秀吉:「ああ、悪い。驚かせちゃったな、えっと俺たちは……」
    春日 祈:「UGNの、友達?」
    霧崎 零斗:(まだ目が生きている人間もいたか)
    女の子:「! UGNってあの、正義の味方っていう!?」
    霧崎 零斗:「概ね、そんなところだ」
    女の子:「わ、やった! やった! いらっしゃいませどうぞ、入って入って!」
    東海林 エマ:「改めて言われると、ちょっと照れくさいなー……」 真顔で。
    沢村 秀吉:「ありがとう」
    霧崎 零斗:正義の味方ではない――と思っているが、それでも、この少女の瞳の光は殺せない。
    女の子:祈の手を引っ張って室内に引き込み、あなた達を手招きする。
    霧崎 零斗:微笑みながらついていく。
    川辺 日向子:「あ、私は川辺 日向子です! 12歳です!」
    春日 祈:「この村で一番若い子。ちなみに、次に若いのが私」
    東海林 エマ:「そういえば、名乗ってなかったっけ」 祈にもまだだったはずだ。
    東海林 エマ:「東海林エマだよ。UGNっぽく言うと、"ハートステイク"」
    沢村 秀吉:「沢村秀吉。17歳だよ」
    沢村 秀吉:日向子に手をふりふり。
    霧崎 零斗:「俺はスカイフォール。スカイフォールというのは正義の味方としてのコードネームというやつだ」
    春日 祈:「初めまして、かける2。霧崎は知ってる」
    川辺 日向子:「初めまして! ……ストーブもつけちゃお」
    霧崎 零斗:「ストーブはまだもう少しとっておくといい」
    GM:机も何もかも取り払われた殺風景な部屋には、少し厚手の絨毯と、灯油で動くストーブだけがある。
    春日 祈:ぴ、と指を立てて、霧崎の唇の前に持って行く。
    霧崎 零斗:「おや、どうした」
    春日 祈:軽く首を振る。
    川辺 日向子:部屋の隅に置かれた灯油缶を手に、鼻歌を歌いながら、ストーブに灯油を注ぐ。
    春日 祈:「楽しそうだから、そのままにさせてあげて」
    霧崎 零斗:「楽しい……ああ、たしかにそういう色か」
    霧崎 零斗:「承知した」
    東海林 エマ:「じゃあ、さっきのあげたらもっと楽しくなるかな?」
    春日 祈:「もちろん」
    東海林 エマ:ごそごそとリュックの中を漁り出す。エネルギーバーを2本取り出して、祈に改めて差し出す。
    東海林 エマ:「あの子の分と、道案内の御礼の分」
    春日 祈:「ありがとう。大事に食べる」その2本を受け取って、そっと絨毯の上に置いてから、
    春日 祈:「……改めて、救援に感謝する。私は〝クアッド・モード〟、名前は春日 祈」
    春日 祈:「現状、この晴待村役場の──指揮官、みたいなことをしてる」
    春日 祈:「現状を説明するけど、みんなから先に聞きたいことは?」
    沢村 秀吉:「指揮官……君が、か」
    春日 祈:「不服かも知れないけど、他に選択肢が無かった」
    霧崎 零斗:「俺は、俺と分かれた後、お前に何があったかを聞ければ満足だな」
    東海林 エマ:「とりあえず、君から現状を聞きたいかな。それから、質問タイムをくれたらいい」
    沢村 秀吉:「悪い、驚いただけだ。聞かせてくれ」
    春日 祈:「オーケー。じゃあ、今に至るまでの説明と、現状を──」
    春日 祈
    春日 祈:彼女が言うには、こういうことだった。
    春日 祈:偵察任務で赴いた晴待村。村で唯一の民宿に滞在していたところ、
    春日 祈:突如、村が、住人ごと異界に飲まれた──ように見えたという。
    春日 祈:見えた、というのは、正確に発生した事象を分析するだけの、機器も人員も無かったからだが
    春日 祈:まずその認識──レネゲイドの力による空間隔離であろう。
    春日 祈:その日は、村で唯一の高校が、卒業式を行っていた。
    春日 祈:学生、保護者、村の重役などが一カ所に集まっていた。
    春日 祈:それが不運だった。
    春日 祈:転移後、最初の襲撃で随分死んだという。
    春日 祈:かろうじて生き延びた面々で村役場に立てこもり、バリケードを造り、ジャームの攻撃に備えた。
    春日 祈:しばらくは、そのあたりの家屋の壁を剥がした、ただの板でもどうにかなっていた。
    春日 祈:だがその内──敵の数は増え始めたのだ。
    春日 祈:強力な、白い着物の女を筆頭に、
    春日 祈:ジャーム化した村人がそのまま、襲撃者に転化して。
    春日 祈:板戸では防げなくなった。
    春日 祈:だから危険を冒して資材を掻き集め、時間をかけて壁を作った。
    春日 祈:保存食は減って行く。
    春日 祈:役場の地下に、強力なライトと暖房を設置し、簡易的な菜園を作った。
    春日 祈:食料の減る速度は鈍ったが、代わりに燃料の消費が増えた。
    春日 祈:消費が増える。資材を集める。
    春日 祈:ジャームの襲撃のたび、死者が出る。
    春日 祈:死者の一部はジャームになって、襲撃を激化させる。
    春日 祈:壁が壊れる。修理が必要になる。資材の消費が増える。資材を集める。
    春日 祈:「……それで、ほとんど皆、諦めた」
    春日 祈:「けどね、みんないい人だから、手伝ってって言えば動いてくれるんだよ」
    春日 祈:「何もしないでいるよりは、辛いのが紛れるのかも知れないけど」
    春日 祈:「だからぎりぎり、完全にはだめにならないで、やってこれた」
    春日 祈:「……元気な子もいるしね」くすっと笑って、日向子の方を見る。
    川辺 日向子:「ん?」よくわかっていないような顔をして首を傾げる。
    東海林 エマ:「…………」 凄惨な5年間と現状を聞いて、普段ろくに動きもしない眉が顰められている。「それで、今は。何人くらい残ってるの?」
    沢村 秀吉:「………」
    霧崎 零斗:「よくやった」
    霧崎 零斗:「お前はやはりすごいよ」
    春日 祈:「80人くらい。……あ、でね。驚かないで聞いて欲しいんだけど」
    春日 祈:「その殆どが、オーヴァード」
    東海林 エマ:「……"濃い"からかな。ここが」
    霧崎 零斗:「やはりそうか」
    霧崎 零斗:「本当に、よくやったよ、お前は」
    春日 祈:「たぶん、そう。……だからジャーム化も多発する」
    春日 祈:「それから……やめてよ、霧崎。年上みたいに褒めようとするの」
    春日 祈:「まだ同い年」
    春日 祈:自分と霧崎とを、左右の手でそれぞれ指差す。
    霧崎 零斗:「そうだな……確かに」
    沢村 秀吉:「資材の残量は?」
    霧崎 零斗:開いてしまった背丈の違いを今更感じながら。
    春日 祈:「どれくらいかな……最近は精査する余裕もなかったから」
    霧崎 零斗:自分の頭の中で、彼女はまだあの頃の彼女なのかもしれない。
    春日 祈:「可能ならばそれ、協力してくれたら助かる」
    沢村 秀吉:「オッケー、手伝おう」
    沢村 秀吉:「あとは……この空間のことか」
    沢村 秀吉:「元凶はわかるか?」
    春日 祈:「たぶんね。データ的な裏付けはないけれど」
    東海林 エマ:「白い着物の女、かな」
    春日 祈:「ジャームの襲撃の時に、その親玉みたいに現れる──」
    春日 祈:「そう、それ。顔の無い、白い着物の女」
    東海林 エマ:「元々ね。エマたちは、そのジャームを追ってきたの」
    東海林 エマ:「正確には、少し前に仕留め損なって。その追撃戦」
    霧崎 零斗:「奴の討伐には好都合というわけだ」
    春日 祈:「……あいつは外に出られるんだ。ずるいな」
    春日 祈:「こほん」
    東海林 エマ:「みたいだね。……そういう事をする理由はわからないけれど」
    霧崎 零斗:「ここのみんなもすぐに出られるようになる」
    川辺 日向子:「……出られるの?」
    霧崎 零斗:「出られる」
    川辺 日向子:「……ほんとに?」
    霧崎 零斗:「UGNはそのためにある組織だ」
    沢村 秀吉:「霧崎……」
    川辺 日向子:「…………」おずおずと、春日 祈を見る。
    春日 祈:微笑んで、頷く。
    川辺 日向子:「……!」
    川辺 日向子:ぺかあっ、と、日差しのように屈託無く、日向子は満面の笑顔を見せた。
    GM:──と、その時だ。
    GM:こん、こん ドアがノックされて、
    老けた男:「失礼するよ。外から人が来たと──」
    老けた男:厳つい顔をした、50歳ほどだろう男が、村長室に入ってくる。
    老けた男:日々の苦心がそのまま皺になったような顔で、彼はあなた達を順番に眺めた。
    東海林 エマ:ぺこっと頭を下げる。
    霧崎 零斗:一礼しておく。
    春日 祈:「ああ、義秋さん。この人達はUGNの、つまり私の同僚で──」
    沢村 秀吉:「はじめまして、俺たちは……」
    老けた男:「──もう諦めたらどうですかね、祈さん」
    老けた男:さほどの思い入れもなさそうに、彼は言った。
    老けた男:「なるほど。いずれ救援は来る──その予言は当たりましたか」
    老けた男:「それは結構。奇跡的な出来事かも知れませんが」
    老けた男:「……今まで何度、私達は」
    老けた男:「〝次は上手く行く〟と言い続けましたかな」
    春日 祈:「…………」眉の端を下げながらも、何も言わない。
    東海林 エマ:「諦めるって、どういうこと?」
    東海林 エマ:「抵抗をやめて、みんな仲良くジャームの餌になりましょうって……そういうこと?」
    沢村 秀吉:「エマ」
    東海林 エマ:「……だって」 拳を握りながら、唇を噛む。
    老けた男:「寒い思いをして、ひもじい思いをして、ほんの何日か命を繋ぐよりは」
    老けた男:「いっそ一晩か二晩、盛大に飲み食いして、火を燃やして」
    老けた男:「それで良いではないですか」
    霧崎 零斗:「成る程、そちらの男性の言うことも一理ではある」
    老けた男:「〝苦しいことはあったけど、最後は少し楽しかったなぁ〟と」
    老けた男:「……もう、それで片をつける頃合いではないですか?」
    霧崎 零斗:「思い出に浸り、最後の時間を穏やかに過ごす」
    霧崎 零斗:「人間として正しい生き方です」
    老けた男:「……………………」
    老けた男:己の提案した言葉だと言うのに、賛同されて寧ろ、顔の皺が増したようにも見える。
    霧崎 零斗:「ただ……私や祈はそうしてはならないのです」
    霧崎 零斗:「たとえこの世が終わる時でも、最後まで戦い続けなくてはならない」
    霧崎 零斗:「あなたたちが穏やかに過ごす為に」
    霧崎 零斗:「私はそれが正しいことなのかは分かりませんが、あなたがどう思われようと正しいと信じることを為します」
    老けた男:「……それがあなた達の信条なら、構わないが」
    霧崎 零斗:「迷惑はおかけしません。もう少し時間を頂きたい」
    老けた男:「日向子に余計な希望を持たせないでください」
    霧崎 零斗:(やはり、この人は日向子ちゃんの)
    老けた男:「廊下で横たわるだけの私達にも、同様にです」
    東海林 エマ:「希望を持たせるのはだめで、心中を図るのはいいんだ」
    霧崎 零斗:(希望は持ちたいのだろう、きっと)
    東海林 エマ:「……悪いけど、エマはあなたの言ってることがこれっぽっちも理解できない」
    霧崎 零斗:(それを断たれた時の負荷は、オーヴァードにとって命に関わる)
    老けた男:「本を読みなさい」
    霧崎 零斗:「ハートステイク、この方は……」と言いかけて止まる。
    老けた男:「心を読む術など無くとも、想像することは出来るようになる」
    老けた男:「もっとも」
    老けた男:「図書室に辿り着く術も、もう無いですが」
    鏑木 鵠:「……すいません、どうかそのあたりで」
    鏑木 鵠:「お話は私が伺います。一応、この子達の引率みたいなものですから」
    老けた男:「……新卒?」
    鏑木 鵠:「もう少し若いですが──」
    沢村 秀吉:「……鏑木さん、すみません。お願いします」
    GM:男の背を鏑木が押すようにして、二人は部屋の外へ出て行く。
    東海林 エマ:まだ何か言いたげにしているが、むすっと唇を引き結んで黙っている。
    GM:それなりに離れても、役場の静寂は、二人の声を微かに届けている。
    春日 祈:「ごめんね、悪いひとじゃないんだよ」
    霧崎 零斗:「だと思ったよ。さて、資材の状況を確認しなくては……」
    春日 祈:「ちょっとひねくれ具合がメビウスの輪みたいになってるだけ」
    川辺 日向子:「ごめんなさい……」
    沢村 秀吉:「わかってる。こっちこそすまないな」
    沢村 秀吉:「日向子ちゃんが謝ることないって」
    沢村 秀吉:「エマも。機嫌直せ」
    春日 祈:「そうそう。そんなことより、ほら」
    霧崎 零斗:「為すべきことを為すとしよう」
    東海林 エマ:「……機嫌悪いんじゃないよ。頭ぐるぐるしてるだけ」
    春日 祈:先ほど受け取ったエネルギーバーを2本、日向子の手に握らせる。
    沢村 秀吉:「こういう状況だ。まともでいるのも辛いんだよ」
    霧崎 零斗:「希望を失うことがオーヴァードへの一番の負荷になる」
    川辺 日向子:「……?」
    沢村 秀吉:「きっとあの人なりの自己防衛なんだ」
    霧崎 零斗:「人々を守る為、その負荷を軽減させるのは合理的だ」
    春日 祈:「食べ物だよ。こっそり食べな」
    東海林 エマ:「エマたちが子供だから、頼りないって思われたかな」
    霧崎 零斗:「いや、オーヴァードの力と祈の活躍をあの人も見ている」
    霧崎 零斗:「そうではなく……お腹が減っているんだ」
    霧崎 零斗:「心もお腹が減るんだよ、ハートステイク」
    川辺 日向子:良く分からない顔をしたまま、受け取ったエネルギーバーの袋をじっと眺めて、
    東海林 エマ:「分かったような風に言うね」
    川辺 日向子:ぺりっ、と封を開ける。中身をひとくち齧る。
    川辺 日向子:「……!」
    川辺 日向子:「! っ! っ!」
    霧崎 零斗:「俺は人間の感情の機微には疎い分、観察をしなくてはならなくて……」
    川辺 日向子:……狭い村長室の中を走りはじめた。
    霧崎 零斗:日向子の姿を見て、言葉が途切れる。
    川辺 日向子:瞳が、きらきらと輝いている。
    春日 祈:「五年前、その子は7歳」
    霧崎 零斗:その姿に、思考が途切れた。
    春日 祈:「最後に甘いものを食べたの、たぶん、8歳くらいかな」
    東海林 エマ:「……やっぱりさ。さっきの人の言うこと、間違ってるよ。たとえ、何があったとしても」
    沢村 秀吉:「分かってる。気持ちは俺たちも同じだ」
    沢村 秀吉:「外に出られたら、あの人も分かってくれるよ。きっと」
    霧崎 零斗:「ああ、あの男性は間違っていると言われたいのだろう」
    沢村 秀吉:「だから、認めさせてやろうぜ」
    霧崎 零斗:「気が合うな、ウェアウルフ」
    東海林 エマ:「ん。やってやる」
    沢村 秀吉:「さっき、お前は自分と祈ちゃんだけ上げたけどな」
    沢村 秀吉:「俺たちだってUGNなんだぜ、霧崎君」
    霧崎 零斗:「――確かに」
    霧崎 零斗:「どうも俺は先走る癖がある」
    霧崎 零斗:「さては……君、いいヤツだろう。サワムラ」
    東海林 エマ:「さてはも何も、サワムラはいいヤツ」
    東海林 エマ:「当たり前。キリサキより分かりやすい」
    沢村 秀吉:「……あんま直球に褒めるなよ君たち。照れるぞ」
    東海林 エマ:「照れろ照れろ」 肘で脇腹を小突く
    沢村 秀吉:「やーめーろー!」
    川辺 日向子:どたばた どたばた
    川辺 日向子:まだ興奮が収まりきらないのか、室内をぐるぐる走り回る。
    春日 祈:「……っぷ」
    春日 祈:「あは、あはははっ」
    春日 祈:「こんな賑やかなの、五年ぶりだ」

    GM:ロイスの取得が可能です。
    GM:調達? 資源なんかねえよ!
    沢村 秀吉:っすよねー
    東海林 エマ:悲しいなあ
    沢村 秀吉:春日 祈 ○P:敬意/N:心配
    沢村 秀吉:以上!
    霧崎 零斗:よし!
    霧崎 零斗:春日 祈 ○P:純愛/N:後悔
    沢村 秀吉 ○P:友情/N:食傷

    霧崎 零斗:って感じでロイスの変更をかけます
    東海林 エマ:霧崎 零斗 ◯連帯感/不安 で取得
    沢村 秀吉:Loveじゃん……
    霧崎 零斗:そしてエマちゃんはもう少し後で!
    東海林 エマ:以上~
    霧崎 零斗:日向子ちゃんにもとりたいんだけど一度にとるのもあれだからな
    沢村 秀吉:My friend……
    霧崎 零斗:以上!

    ミドルシーン3:かさねて


    GM:やはり全員登場!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 5)増加 (47 → 52)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (53 → 61)
    霧崎 零斗:霧崎 零斗の侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (59 → 68)

    GM:では、情報収集のシーンです
    GM:まず挑戦できる項目は2つ。それに成功したらもう1つ。
    GM:とりあえず、先の2つはこれだ
    情報項目 【晴待村の現状】 目標値9 《情報:UGN》or《交渉》
    【資源・物資】 目標値10 《情報:UGN》or《調達》
    霧崎 零斗:ククク……
    霧崎 零斗:じゃあ私が資源は行こう
    沢村 秀吉:じゃあ現状行っていいかな?
    東海林 エマ:お願いしまーす
    霧崎 零斗:《構造看破》などで建物を把握しておくことでボーナスついたりしますか(吐いてもそんなに変わらないけど)
    沢村 秀吉:了解!
    沢村 秀吉:情報:UGNで、コネ:UGN幹部使います
    霧崎 零斗:《巨匠の記憶》《コンセ:モル》をやります
    沢村 秀吉:4DX+2+0@10>=9 情報(UGN)
    DoubleCross : (4DX10+2>=9) → 8[3,7,7,8]+2 → 10 → 成功

    沢村 秀吉:よし
    霧崎 零斗:3dx7+1 UGNで判定!
    DoubleCross : (3DX7+1) → 10[1,3,9]+2[2]+1 → 13

    東海林 エマ:やる~
    霧崎 零斗:回った~!
    GM:ボーナスは無いよ!
    霧崎 零斗:なかったがいけたぜ~!
    GM:今回の卓、イージーエフェクトのボーナスは無しの方向でお願いします。
    沢村 秀吉:はーい!
    霧崎 零斗:オッケ~!
    GM:そして情報収集はふたつ成功だわね
    GM:まずは

    【晴待村の現状】 ほぼ壊滅状態にある。
    居住可能区画はこの壁の内側だけで、外側には〝人間〟はいない。
    元より400人ほどしかいなかった村人は、83人までに減少している。
    その大半が50歳以上の高齢者であり、殆どは、生存・帰還への希望を失っている。
    ……そして、83人のうち75人がレネゲイドウィルスに感染し、微力なオーヴァードとして覚醒している。
    75人中、かろうじて戦闘に参加できそう(最低限の自衛ができそう)なのは数名。

    気力を失っている村人達だが、日々の営みを意地する程度の働きはしているようだ。
    春日 祈の指揮もそうだが、川辺 日向子の陰りのない明るさも、彼らをギリギリの所で支えている。
    【資源・物資】 拠点を構築した資材や、運営していく為の燃料などは全て、春日 祈のモルフェウス能力によって賄われている。
    とは言え無論、虚空から物質を産み出せる訳ではない。人の住まぬ建物などを取り壊し、それを元素変換の材料としているのだ。
    だが、もう手付かずの建物は殆ど残っていない。地下菜園の照明、暖房、壁の補修等々……必要な物はあまりに多い。
    単純計算で、半年以内には、あらゆる資材が枯渇するだろう。
    ……半年も滞在するつもりは無いとは言え、脱出の手段を確立するまでの安全マージンは必要だ。

    GM:そして、これらの開示によって挑戦できるもう一つの項目が、
    情報項目 【村立第一高等学校】 目標値9 《情報:UGN》or《知覚》or《調達》
    東海林 エマ:ん。じゃあ、エマがやる
    沢村 秀吉:お願い
    東海林 エマ:コネ:UGN幹部を使って情報:UGNで判定。
    東海林 エマ:3dx+4>=9
    DoubleCross : (3DX10+4>=9) → 7[1,7,7]+4 → 11 → 成功

    東海林 エマ:よしよし。
    GM:この程度の難易度では容易く引っこ抜かれるか……
    【村立第一高等学校】 第一とあるが、村にある唯一の教育機関(小・中学校は隣町のみ)。
    5年前の〝神隠し〟の際、教員や学生、その保護者などがジャーム化したまま取り残されているという。
    春日 祈と村人達の戦力では突破が出来ず、その為、建物一棟がまるごと残されている。
    校舎の奪還に成功すれば、大量の資源が確保できるだろう。
    東海林 エマ:ふんすふんす
    沢村 秀吉:えらい

    GM:──さて。
    GM:あなた達の拠点到着から数時間が経過した。
    GM:資源残量の詳細計算や、拠点内部の確認、防護壁の損傷箇所のチェック等、
    GM:人数が増えたから行いたいという項目を、ある程度こなした頃合いだ。
    GM:あなた達はふたたび村長室に戻り、椅子も無いので床に座っている。
    春日 祈:「助かった」
    春日 祈:「やっぱり人海戦術は正義だね」両足を揃えて身体の前に伸ばしている。
    霧崎 零斗:「なに、物体に宿る記憶の解析は俺の得手とするところ」
    霧崎 零斗:「それに二人も調査が得意で助かった」
    東海林 エマ:床にぺたんと座り込んでいる。傍に置いてあるリュックは先程よりずっと中身が減っているようだ。
    霧崎 零斗:(五年前と変わらない)
    霧崎 零斗:(いつも祈が何を調べるべきか考えてくれた)
    霧崎 零斗:本人は気付いてないが、声が弾んでいる。
    沢村 秀吉:あぐらをかいて霧崎の様子を横目に眺める。
    東海林 エマ:「別に、これくらいは当然。エマたちも現場の人だから」
    沢村 秀吉:「な。むしろこれまでよく、ほとんど祈ちゃん一人でこなしてたもんだ」
    東海林 エマ:うんうんと頷いている。
    霧崎 零斗:「祈はがんばり屋さんだからな……」
    霧崎 零斗:両腕を組んで壁によりかかりながら頷いている。
    春日 祈:「最近は、こなせてなかったんだよ」
    春日 祈:「防御を固める為に、拠点を大きくしすぎた」
    鏑木 鵠:「少なくとも壁の表面積が広すぎるとは思いました」正座している
    沢村 秀吉:「守る範囲が広すぎるってこと?」
    霧崎 零斗:「80人を守る為には過剰な大きさ、と」
    東海林 エマ:「人が減ったから、相対的にそうなってるんじゃないの?」
    東海林 エマ:「元はもっといたんでしょ」
    鏑木 鵠:「……人をただ詰め込むだけなら、もっと小さな防壁で良かったでしょうが」
    春日 祈:「欲張りすぎた、っていうのが正解かな」
    春日 祈:「役場だけじゃなく、駐車場の部分まで壁の中に入れちゃったから」
    春日 祈:「車なんてもう全部、バラしちゃったんだけどさ……ほら」
    東海林 エマ:「ああ~」 隔壁が開いて装甲車が迎え入れられたことを思い出す。
    春日 祈:「たまには建物の外で動きたくなるかなって」
    霧崎 零斗:「それにお前、この村の人々の元の日常を少しでも残そうとしたんじゃないか?」
    霧崎 零斗:「もっと徹底的に防衛において合理的な構造にしておくこともできたはずだ」
    春日 祈:「守る為に、守る対象を切り捨てたら、本末転倒だからね」
    春日 祈:「……だけど、その選択を後悔しそうになるくらい、維持が大変だった。だから」
    春日 祈:「ありがと、みんな」
    沢村 秀吉:「お礼は受け取るけど。霧崎君には特に感謝しときな」
    沢村 秀吉:「君たちを探し出すきっかけを作ったのはこいつだ」
    霧崎 零斗:「ふん、俺はクアッド・モードに感謝されるようなことはしていない」
    霧崎 零斗:「遅すぎたくらいさ」
    春日 祈:「……霧崎、キャラ変わった?」
    霧崎 零斗:「お前の前だから言うが、いつかの約束を守れなかったのを気にしているだけだ」
    春日 祈:「そ」
    春日 祈:「ま、いいや。それでみんな──」
    春日 祈:「どうだった、一通り見て貰った感じ」
    沢村 秀吉:「ん。じゃ俺から」
    沢村 秀吉:ひょいと挙手する。
    沢村 秀吉:「ざっと村の様子見回ってきたよ。言ってた通り、ほとんどオーヴァードだな」
    東海林 エマ:「全体で80人くらいだっけ。戦えるかは別問題として」
    沢村 秀吉:「俺たち抜いて確認できたのは83人。間違いない?」
    春日 祈:「……たぶん」眉の端が下がっている。
    沢村 秀吉:(……元は400人だったか)
    沢村 秀吉:いなくなったものに一瞬黙祷する。
    春日 祈:「ちょっと前に数えた時……84人だったんだ」
    春日 祈:「また誰か……壁の外に出ちゃったのかな」
    霧崎 零斗:「80人程度ならば、今の物資でも半年は保つな」
    沢村 秀吉:「物資の量だけならそうかもしれないけど、実際は厳しいと思う」
    霧崎 零斗:「救援を待つにしろ、本格的な攻撃に出るにしろ、余裕を持って行動はでき……そうなのか?」
    沢村 秀吉:「高齢者が多いし、肉体的にも精神的にも消耗が酷い」
    東海林 エマ:「今はまだ、日々の活動は……って感じだけど。いつそれも尽きるか分からないね」
    沢村 秀吉:「さっきの……義秋さんみたいに。もう殆ど希望を失っている人も多い」
    東海林 エマ:「自棄になっちゃってもおかしくない」
    沢村 秀吉:「みんな今日を生きるので精一杯だ。それすら明日はどうなるか分からない」
    沢村 秀吉:「一応、自衛程度ならできそうなぐらいは元気な人も何人かは居たけどな」
    霧崎 零斗:「そういう人間はそういう人間で危険性はあるが……」
    沢村 秀吉:「霧崎の言うところの、余裕を手に入れるなら……もう少し希望が欲しいとこだ」
    東海林 エマ:「それなら。その元気な人の一人から、気になる話を聞いたよ」
    霧崎 零斗:(村の中に、オーヴァードの力を悪用しようとする人間がいないか……少し気になるな)
    霧崎 零斗:「気になる話?」
    東海林 エマ:畑仕事に精を出していた、まだ若手と呼べる男性から聞いた話をつらつらと話す。
    東海林 エマ:「ほら、言ってたでしょ。最初に襲撃があったのは高校だったって」
    東海林 エマ:「そこは、今も手付かずのまま残されてるって話」
    春日 祈:「そうだけど……危険だよ、あそこは」
    東海林 エマ:「うん。その襲撃で沢山の人がジャーム化して、そのまま取り残されてる……って」
    東海林 エマ:「だけど、もし取り返せたら……結構大きな資源になるんじゃないかな?」
    沢村 秀吉:「ああ、それに……危険だってんなら、なおさら意味がある」
    沢村 秀吉:「これまでできなかったことが、できた。それは今の人達にとって、希望になるんじゃないか?」
    鏑木 鵠:「なるほど。祈さん、その高校までの距離は?」
    春日 祈:「……徒歩1200m少々」
    春日 祈:「でも、うん。そっか、確かに……あそこなら資源はたくさん……」
    霧崎 零斗:「この雪の中の1200m、楽ではないが無理でもない」
    春日 祈:無意識にか、そうでないのか。指先が頬の傷跡をなぞる。
    東海林 エマ:「エマは、やってみる価値はあると思う」
    霧崎 零斗:その祈の仕草を見て。
    霧崎 零斗:「やろう」
    鏑木 鵠:「解体作業なら任せてください。下手な重機よりは働きますよ私」
    東海林 エマ:(意外とパワー系なんだな……)
    沢村 秀吉:「頼もしい。そんじゃ、諸々準備が整ったら向かうとしますか」
    鏑木 鵠:「──とは言え。一応なんですが、実行には少し間を開けるのを提案します」
    東海林 エマ:「?」 首を傾げる。
    沢村 秀吉:「? なにか問題が?」
    鏑木 鵠:ちら、と腕時計を確認して、
    霧崎 零斗:「休息は必要、ですか」
    鏑木 鵠:「ホワイトハンドと護衛・輸送班の合同隊が、もう数時間で行動を開始する予定です」
    沢村 秀吉:「後続部隊か!」
    鏑木 鵠:「休息もそうですが、もし後続部隊がここへ辿り着くことが出来れば」
    鏑木 鵠:「〝やっぱり人海戦術は正義〟というわけです」
    霧崎 零斗:「素晴らしい」
    霧崎 零斗:「今、ここに来るまでに五年もかかったが」
    霧崎 零斗:「彼らが来るとすれば後数時間」
    春日 祈:「……どうかな。〝あいつ〟が、そんな大勢の敵を受け入れるかな」
    東海林 エマ:「試してみないと分からないね。できれば、少数だけでも辿り着いてくれると助かるけど」
    霧崎 零斗:「ともかく、様子を見るのが良い」
    沢村 秀吉:「俺たちは辿り着けたんだ。少し待ってみる価値はあるさ」
    春日 祈:「頭数の期待はしないで置く。みんなもその前提で作戦を立ててほしい」
    沢村 秀吉:「了解」
    東海林 エマ:「はーい」 鞄の中をごそごそと漁り出す。
    沢村 秀吉:「エマ?」
    沢村 秀吉:どした、と視線を向ける
    東海林 エマ:「ん。腹拵えしてこうかと思って」
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:(待てよ、いや、まさか)
    霧崎 零斗:(俺の杞憂であればいいが……)
    霧崎 零斗:「よし、まずは腹ごしらえだな」
    沢村 秀吉:「……ん、そだな」
    東海林 エマ:大きなリュックの中には大量の食料が詰められていたはずだが、ほとんど姿を消している。
    東海林 エマ:残っていた携帯食料をそれぞれに手渡していく。
    東海林 エマ:「エマは後で食べるから。それ、食べちゃっていいよ」
    沢村 秀吉:「……」
    春日 祈:「ありがとう。……みんな、この場で食べちゃって」
    春日 祈:「村の人達から不満は出ないだろうけど、だとしても」
    東海林 エマ:「……あ、ええと。大丈夫だと思う。外で食べても」
    春日 祈:「羨ましいって気持ちは、どこかに出るだろうから」
    東海林 エマ:遮るように、ぱたぱたと手を振りながら言う。
    東海林 エマ:「……さっき、渡してきた。みんなに」
    東海林 エマ:「勝手なことして、ごめん」
    沢村 秀吉:「だと思った」
    沢村 秀吉:ため息をつく。
    霧崎 零斗:「気づかなかったな。気づいていたら止めたのだが」
    春日 祈:「……そ」
    霧崎 零斗:「こいつは不覚だ」
    東海林 エマ:「……お腹空くとつらいの、よく分かるから」
    沢村 秀吉:「お前が一番燃費悪いだろ。無理しやがって」
    東海林 エマ:「それは、大丈夫。奥の手があるので」
    沢村 秀吉:「……」
    沢村 秀吉:ずい、と渡された携帯食料を突き返す
    沢村 秀吉:「半分」
    東海林 エマ:「…………」
    沢村 秀吉:「半分でもいいから食っとけ」
    東海林 エマ:「……後で言っても返さないけど、いい?」
    沢村 秀吉:「もらったもん返せなんて言わねえよ」
    東海林 エマ:「……ん。ありがと」
    沢村 秀吉:「ん」
    沢村 秀吉:こほん、と咳払い
    沢村 秀吉:「そんじゃ、後続が来るのを数時間待って……それから出発、でいいすか」
    鏑木 鵠:ばりばりと音を立てて携帯食料を食い千切り、
    鏑木 鵠:「では」
    鏑木 鵠:「各自、休息!」

    GM:──約2時間が経過した。
    GM:あなた達もあれから各々、仮眠を取ったり、再度拠点内を見回ったりと、様々に行動したことだろう。
    GM:春日 祈は現在、村長室のふたつほど隣の部屋──
    GM:物置部屋に入って、何やらごそごそと音を立てている。
    霧崎 零斗:「……入るぞ、祈」
    霧崎 零斗:そう声をかけて外から様子を伺う。
    春日 祈:「ん」
    春日 祈:単音の応答。良し、ということらしい。
    霧崎 零斗:静かに扉を開けて中に入る。
    霧崎 零斗:それから適当な荷物のあたりに腰掛けた。
    霧崎 零斗:「……祈」
    霧崎 零斗:彼女の頬にある、見慣れない傷を見る。
    春日 祈:左腕と右脚が、取り外されていた。
    春日 祈:物置部屋の中には、左右の腕と脚──同型の部品が数組ずつ置かれている。
    霧崎 零斗:昔は生身だった筈の腕と足を見る。
    霧崎 零斗:「高校の中のジャームにやられたのか」
    春日 祈:「オーヴァードだよ、私達は」
    春日 祈:「手足が飛んだくらいなら、生えるって」
    霧崎 零斗:「ああ、それは、そうだが……」
    春日 祈:「けど、完全に再生するまでの時間が惜しいからさ」
    春日 祈:「取り替えれば済むように造り変えた」
    春日 祈:「材料を結構使ったけど、損はしなかったと思うよ」
    霧崎 零斗:「合理的だな」
    霧崎 零斗:「ブラックドッグやモルフェウスならば、義肢のほうがかえって直しやすい」
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:なんだろう、この胸の痛みは。
    春日 祈:「そういうこと。……ホワイトハンドの監修でもあれば、村のひとにも同じこと出来たんだけど」
    春日 祈:「さすがに他人の身体を、そういう風に弄るのは、私には無理だった」
    霧崎 零斗:「自分の改造と他者の改造では勝手も違う。それに――」
    霧崎 零斗:「元はといえば彼らは一般人だ。心が機械化に耐えられない」
    霧崎 零斗:「…………」
    春日 祈:「そう思う?」
    霧崎 零斗:――俺の知らないところで、ギリギリの綱渡りを五年。
    霧崎 零斗:頷く。
    霧崎 零斗:「無理だろう」
    春日 祈:「ペースメーカーとか、義手とか、そういうものと同じなんだけどな」
    霧崎 零斗:「強いて言えば日向子ちゃんくらいだろう……そこまでやれるのは」
    春日 祈:「日向子ちゃんはダメ」ぴしっ、と打ち据えるような言い方。
    霧崎 零斗:「分かっている。適正があるというだけだ」
    春日 祈:「はー」
    霧崎 零斗:「要は前に進む意思の有無について言及しているに過ぎない」
    霧崎 零斗:「……俺の悪いところは変わらないか?」
    春日 祈:「……キャラ変わったかなって思ったけど」
    春日 祈:「悪化してるかもしれない」
    霧崎 零斗:「五年も相棒が居なかったからな。叱ってくれる相手がいなかったのさ」
    春日 祈:「嘘。たくさん居た筈だよ」
    霧崎 零斗:「…………」
    春日 祈:「こっちには本当に〝居なかった〟けど」
    春日 祈:「霧崎の周りには多分、たくさん居た筈」
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:「俺が」
    霧崎 零斗:「俺がこちらに来るべきだったんだ」
    霧崎 零斗:「きっと君は来てくれた。俺より早く」
    霧崎 零斗:確かにそうだ。
    霧崎 零斗:春日祈の指摘は正しかったんだろう――けど。
    霧崎 零斗:――祈の言葉ではなかったから、些末だと思ってしまった。
    霧崎 零斗:――忘れている、また。忘れてしまう。
    春日 祈:「前に進む意志、かぁ」
    春日 祈:「霧崎は、進んでた?」
    霧崎 零斗:「進んだつもりでいた。だが、何も進んでいなかった」
    霧崎 零斗:「君が居ないと俺の性能では限界があったようだ」
    春日 祈:「はー」二度目の溜息の後、左腕と右脚を接続。右腕と左脚を取り外す。
    春日 祈:「五年経ってるんだから、もうちょっと大人になってるかなーって思ったよ」
    春日 祈:「思春期まっさかりじゃん」
    霧崎 零斗:「思春期などという人間的な情緒の発達を俺はしていない」
    春日 祈:「そうかなぁ」
    霧崎 零斗:「生憎と、衝動ごと欠落した身の上だからな……ああ」
    霧崎 零斗:「この五年で知ったこともあったよ」
    霧崎 零斗:「うちの父親が衝動の存在しないオーヴァードの作成の為に俺を使っていたこととか」
    霧崎 零斗:「その実験はFHから流入した技術が使われていたこととか」
    霧崎 零斗:「だからまあ……納得はしてるよ、こんな俺の有り様に」
    春日 祈:「霧崎」
    霧崎 零斗:「なんだ?」
    春日 祈:「やっぱ思春期だと思う」
    霧崎 零斗:思わず吹き出してしまう。
    春日 祈:「自分の生まれがー、とか。素質がー、とか」
    春日 祈:「霧崎の失敗は、その思春期の青さを誰かにぶつけなかったことじゃない?」
    霧崎 零斗:「……お前が言うならそれはそうなんだろうな」
    春日 祈:「まー、私もさ。能力には限界があったけど」
    霧崎 零斗:「けど?」
    春日 祈:がちゃん。両腕両脚の交換を終えて、あなたに背を向けた状態で床に座る。
    春日 祈:軽い、きぃ……という音の後、
    春日 祈:腹部の内側から様々の、細かい金属部品を、次々に取り出していく。
    春日 祈:「限界に泣きつける余裕は無かったかな」
    霧崎 零斗:「やっぱりお前のほうが大人だな」
    霧崎 零斗:――俺は、少なくとも泣き言を言う暇はあったのだから。
    霧崎 零斗:春日祈のそんな姿を見て、ポツリと。
    春日 祈:「そうだよ。本当に、もう」
    春日 祈:「私はおかあさんじゃないんだからね、わかってる?」
    霧崎 零斗:「確かにお前の言う通り、俺のこの思考も思春期の産物なのかもしれないと思えてきた」
    霧崎 零斗:「そう、お母さんじゃない」
    霧崎 零斗:「なぜなら……なんか部品交換をしているお前を見ているとドキドキしてしまう」
    春日 祈:「もしかして:特殊性癖」
    霧崎 零斗:「????」
    春日 祈:「友達は? 遊びに行ったりする友達は出来たの?」
    霧崎 零斗:「不要だが?」
    霧崎 零斗:「休日は訓練だ」
    春日 祈:「もー」
    春日 祈:取り出した金属部品を磨いたり、加工したりしながら
    春日 祈:またひとつひとつ、腹の中へと配置していく。
    霧崎 零斗:「……少しロマンチックな考察をしよう」
    霧崎 零斗:「一時的に記憶を失っていたところで、君が欠落した痛みは消えてなかったのかもしれない」
    霧崎 零斗:「ただでさえ感情の薄い俺が、世界との数少ない接点を失えば、まあ――まあ」
    霧崎 零斗:この建物の中に居た希望を失った人々の姿を思い出す。
    霧崎 零斗:「どこにも行けなくなるのも当たり前だ」
    春日 祈:「重いなぁ!」
    春日 祈:「ちょーっと背負えないかなぁ!」
    霧崎 零斗:「……? 相棒とはしっかりと情報を共有すべきだと思っていたが……」
    霧崎 零斗:「まあ安心しろ」
    霧崎 零斗:「今度はお前を背負って此処を出るさ」
    春日 祈:「五年合わなかった幼馴染みがいきなり、距離感ガツガツ詰めてくるのを想像してごらんよ」
    春日 祈:「安心の余地が無いよ!」
    霧崎 零斗:「なんだと……!?」
    春日 祈:「むしろ身の危険すら感じるんだけど!」
    霧崎 零斗:「なんだと……!?」
    霧崎 零斗:「許せんな……神隠しのジャーム」
    春日 祈:「私、そーいうの嫌だからね。職場内恋愛とか──」
    春日 祈:ぶんっ
    春日 祈:取り付けたはずの左腕をもぎ取って投げつける!
    霧崎 零斗:「へぶっ!」
    霧崎 零斗:顔面に直撃して倒れる。
    春日 祈:別な予備パーツを拾って装着し、軽く両手をぐーぱーして動作確認。
    霧崎 零斗:だが、笑っている。
    春日 祈:「ったく、もう」
    霧崎 零斗:「元気そうでなによりだ」
    春日 祈:「進歩が無いようでなによりだよ」
    春日 祈:「もう。最初に何言おうとしたか全部吹っ飛んだじゃん」
    春日 祈:「この95点め」
    霧崎 零斗:「95点な……ああ、思い出したぞ、五点の理由」
    春日 祈:「え、なになに?」
    霧崎 零斗:「ちょっとできないところがあったほうが可愛げがあると思わないか?」
    春日 祈:「むかつくー」
    春日 祈:「こいつむかつくー」
    霧崎 零斗:「ふふっ」
    霧崎 零斗:本当にそうだったかは分からない。本当は分からない。
    霧崎 零斗:けど。
    霧崎 零斗:むかつく、と言われるのは結構楽しい。
    霧崎 零斗:「嫌なガキだったみたいだな、俺は」
    霧崎 零斗:本当に珍しく、笑顔を浮かべていた。


    東海林 エマ:随分と中身の減ったリュックを背負い直し、充てがわれた部屋──辛うじて他と隔離された空間をそう呼ぶのであればだが──に、少女はやって来ていた。
    東海林 エマ:リュックの中身は、ぱっと見衣服くらいしか入っていないように見える。
    東海林 エマ:……だが、隠し底のようになった箇所を開けると、もう少しだけ中身が出てくる。
    東海林 エマ:「…………貰ってきておいて、よかった」
    東海林 エマ:手の内でとぷん、と紅い液体が揺れる。輸液バッグに入った、血液製剤。
    東海林 エマ:きょろきょろと周りを見渡してから、はぁ、と一つ荒い息を吐いて──
    東海林 エマ:「……ん、く」
    東海林 エマ:牙と呼ぶには鈍い、犬歯と呼ぶには鋭い。そんな歯を、プラスチックバッグの上から突き立てた。
    東海林 エマ:直接吸い上げる。吸い上げるたび、活力が巡ってくるのが分かる。
    東海林 エマ:鳴りっぱなしだったお腹が急速に落ち着き、血色のない頬には僅かに赤みが差して──
    沢村 秀吉:コン、コン、と扉を叩く音。
    沢村 秀吉:「エマ、いいか?」
    東海林 エマ:待って、と返事をしたかったが。不意のことで反応が遅れた。
    東海林 エマ:「ん、んんんっ」
    沢村 秀吉:扉を開く。
    沢村 秀吉:「……あ」
    東海林 エマ:「…………!」
    沢村 秀吉:後ろを振り向いて、誰もいないことを確認。
    沢村 秀吉:すぐに扉を締める。
    東海林 エマ:両手で輸液バッグを大事そうに抱えて、その端から辛うじて口を離して。少し呆けたように唇が開いたまま固まっている。
    沢村 秀吉:「……だいじょぶ」
    沢村 秀吉:「俺だけだ。他は誰も見てない」
    沢村 秀吉:おちつけ、と腕で示し。
    東海林 エマ:こく、こく、とぎこちなく頷く。
    沢村 秀吉:「見ちまって悪かった」
    東海林 エマ:「……ん。大丈夫」
    東海林 エマ:「……サワムラだし。平気」
    沢村 秀吉:「……そか」
    沢村 秀吉:その言葉の意味するところを考えて、表情を複雑に変える。
    沢村 秀吉:「とりあえず、ちゃんと飲みきれよ。……奥の手だろ」
    東海林 エマ:「半分もらったのに、言いにくいんだけど……うん。やっぱり、あれだけじゃ足りなくて」
    東海林 エマ:かぷ、と再び齧り付く。ちう、ちう、と小さな音を立ててみるみる液体が減っていく。
    東海林 エマ:そうして、すっかり中身がなくなっても、意地汚く何度か吸い上げて。ようやく口を離した。
    沢村 秀吉:「平気か?」
    東海林 エマ:ほう、と熱っぽいため息を吐く。
    東海林 エマ:「……平気。元気出た」
    沢村 秀吉:「よかった。……座っていいか」
    東海林 エマ:「あ、うん。ごめん」
    東海林 エマ:床に辛うじて敷かれている布の端っこに寄る。スペースが一人分空いた。
    沢村 秀吉:狭いスペースに座り込む。
    沢村 秀吉:一瞬、肩が触れた。
    沢村 秀吉:「わるい」
    東海林 エマ:ぴく、と身体が震える。
    沢村 秀吉:「上から聞かされてた」
    沢村 秀吉:「お前の体質とか……それのことも」
    東海林 エマ:本能的な昂りによるものか、血液を摂取した後はいつもこうだ。色々な感覚が鮮明になる。
    東海林 エマ:「…………そう、だったんだ」
    沢村 秀吉:「隠しててごめん」
    沢村 秀吉:「隠してたのに、見たのもごめん」
    東海林 エマ:「いや、それはええと……エマの警戒が足りなかった、し」
    東海林 エマ:「……むしろ、ごめん。サワムラには、いつか言わなきゃって思ってた」
    沢村 秀吉:「気にすんな。言いたくないことは誰にだってあるだろ」
    沢村 秀吉:「お互い様だ」
    東海林 エマ:中身のないプラスチックバッグを握り締める。手の中で容易にへしゃげる。
    東海林 エマ:「……ありがと」
    東海林 エマ:「長いこと言わないでいる内に……言ったらどう思われるのかな、とか」
    東海林 エマ:「バディ、解散になるかな、って。なったら、嫌だなって……」
    沢村 秀吉:「……」
    沢村 秀吉:言ったら、どう思われるか、か。
    沢村 秀吉:「分かるよ」
    沢村 秀吉:「怖い……からな」
    東海林 エマ:「…………そっか。サワムラは、分かってくれるって。知ってたはずなのに」
    東海林 エマ:ぽつ、とそんなことを言った。
    沢村 秀吉:「ほほう。そんなに信頼してくれてました?」
    沢村 秀吉:誂うようにおどけてみせる。
    東海林 エマ:「あ、えーと……そ、そう。信頼してる、ってこと」
    沢村 秀吉:「……?」
    沢村 秀吉:焦って取り繕うような様子に首を傾げる。
    東海林 エマ:「なんでもないよ。……とにかく、そういうことだから」
    東海林 エマ:「食糧問題は、平気。まだ2パックあるから、しばらく保つはず」
    沢村 秀吉:「そっか、よかった」
    沢村 秀吉:ほっと息をつく。
    沢村 秀吉:「それ、確認に来たんだよ」
    東海林 エマ:「お腹空かせてないか、って?」
    沢村 秀吉:「腹はいっつも空かせてるだろ」
    東海林 エマ:「むぅ」 事実だが。
    東海林 エマ:「じゃあ、何の確認?」
    沢村 秀吉:「冗談だって。元凶らしきものは見えてるけど、長丁場になるかもだろ」
    沢村 秀吉:「だから……」
    沢村 秀吉:首に手を添えて、
    東海林 エマ:「?」 首を傾げる。
    沢村 秀吉:「……足りなくなったら、俺から吸えるか、って話」
    東海林 エマ:瞠目した。
    東海林 エマ:紅い瞳がせわしなく動いて、それからす、と逸れる。
    東海林 エマ:「……それは…………分からない」
    沢村 秀吉:「そうか。悪い、変なこと聞いた」
    沢村 秀吉:「あくまで緊急時の最終手段だ。忘れてくれ」
    東海林 エマ:「……うん」
    東海林 エマ:人体からの直接の吸血。……理論上は、血液製剤と同等か、それ以上に効果があるはずだ。
    東海林 エマ:だが、一度も試したことはない。
    東海林 エマ:酷く、忌避感があって。……その行為は、『人として』違うのではないか──と。
    東海林 エマ:「サワムラが、エマのこと気遣ってくれてる気持ちだけで十分」
    沢村 秀吉:「腹膨れるか?」
    東海林 エマ:「膨れるよ。ぽんぽん」
    東海林 エマ:お腹の辺りをぺしぺし叩いてみせる。
    沢村 秀吉:一瞬そちらに目を向けてしまって、逸らす。
    沢村 秀吉:(スタイルいいよなこいつ……)
    沢村 秀吉:余計な思考を頭を振って払う。
    沢村 秀吉:「今のが用事の半分」
    東海林 エマ:「残りは?」
    沢村 秀吉:「……みんなに食料配ってきたことな」
    沢村 秀吉:「相当危なかったぞ、お前」
    東海林 エマ:「……やっぱり。怒られるかな、って思ってた」
    沢村 秀吉:「半端に元気を取り戻した奴らにお前が襲われるかもしれないし」
    沢村 秀吉:「事前に俺たちに相談しなかったのも良くない」
    東海林 エマ:「うん……」
    沢村 秀吉:「でも」
    沢村 秀吉:「自分も腹減ってるときに、他人に飯分けてやれるお前は偉い」
    東海林 エマ:「……!」
    沢村 秀吉:「さっきはなんか、叱るってか、呆れるみたいな言い方になったから……」
    沢村 秀吉:「悪かった。ちゃんと言ったほうがいいと……思って」
    東海林 エマ:「……サワムラが、『だと思った』って言った時」
    東海林 エマ:「すごく嬉しかった。……その、全部自分で食べちゃったんだと思われてるかと……」
    沢村 秀吉:「なんだそれ」
    沢村 秀吉:思わず吹き出す。
    東海林 エマ:「そう思ったんだもん」
    沢村 秀吉:「思わねえよ、そんなこと」
    東海林 エマ:「食い意地が張ってるのは確かだよ?」
    沢村 秀吉:「お前はお前が思ってるより、人に優しく出来てるよ」
    東海林 エマ:「…………」
    沢村 秀吉:「見てきた俺が言ってんだから間違いない」
    東海林 エマ:ようやく赤みの薄れてきた頬に、ほんの僅かにだけ色が戻って。
    東海林 エマ:「──そっか。そうだとしたら、すごく……嬉しいな」
    沢村 秀吉:「ん」
    沢村 秀吉:じっと。少女の顔を見る。
    沢村 秀吉:表情の少ない彼女。それでも、嬉しい気持ちは伝わってくる。
    沢村 秀吉:(──もしも)
    沢村 秀吉:もしも、彼女が。俺の血を吸うときが来たら。
    沢村 秀吉:その時は。
    沢村 秀吉この美しい顔が悲しみに歪むのか・・・・・・・・・・・・・・・
    沢村 秀吉:ぞくりと。背筋に走るものがある。
    沢村 秀吉:見ないふりをする。
    沢村 秀吉:彼女と出会ってから、幾度となく繰り返したことだった。



    霧崎 零斗:拠点となっている砦の庭にあたる場所で、二人は偶然出くわした。
    霧崎 零斗:少し早めに仮眠から覚めただけか、それとも何か別の理由があったのか。
    霧崎 零斗:「ウェアウルフ」
    霧崎 零斗:「君はたまに、妙なことを考えていたりしないか?」
    霧崎 零斗:ともかく二人きりだったので、彼は気になっていたことを聞こうと思ったのだ。
    沢村 秀吉:「妙なこと?」
    沢村 秀吉:わずかな同様を抑えて返答する。
    沢村 秀吉:「例えばなによ」
    霧崎 零斗:「オーヴァードであればよくあることだが、戦闘用に別人格があったり、RBと共生していたり……」
    霧崎 零斗:「脈絡なく攻撃的になることがあると思ってな」
    沢村 秀吉:「……」
    沢村 秀吉:「昔はあったよ」
    霧崎 零斗:「今は無い、と」
    沢村 秀吉:「そういう。レネゲイドによる攻撃衝動の喚起?ってやつ」
    沢村 秀吉:「手術を受けた」
    霧崎 零斗:「手術?」
    沢村 秀吉:「UGNでな。オーヴァードの衝動を抑制する施術」
    霧崎 零斗:「……それは、奇遇だな」
    沢村 秀吉:「結果は見事成功。手のつけられない暴れん坊秀吉君は、立派な好青年に生まれ変わりました、と……」
    沢村 秀吉:「奇遇?なにが」
    霧崎 零斗:「俺も衝動を抹消する為の施術を受けた。覚醒の時にな」
    沢村 秀吉:「……そう、だったのか」
    霧崎 零斗:「道理で他人のような気がしない訳だ」
    沢村 秀吉:「なんだ、そんなふうに見てくれてたんだ」
    霧崎 零斗:「それはそうだ。使う武器も似ているし、歳も近い」
    霧崎 零斗:「相棒が大事なところもな」
    沢村 秀吉:「おま……よくまあ照れもなく言いますわねそういうこと……!?」
    霧崎 零斗:「事実だ」
    沢村 秀吉:「……まあ」
    沢村 秀吉:否定はしない。
    霧崎 零斗:「ちなみに俺はさきほど恋愛的なあれではない的なことを言われてきたが……」
    霧崎 零斗:「五年も会わなかったのに距離感近くない?と言われたが……」
    沢村 秀吉:「……えっ、なにそれ?フラれたの!?」
    霧崎 零斗:「いや、テレ隠しだ」
    沢村 秀吉:「ってか告ったの!?いやまあ五年分かれて再会した直後ならそうなるのもわからんでもないが!」
    沢村 秀吉:「そうなの?」
    霧崎 零斗:「特に告白というほどのものでもない。五年前とおおむね同じテンションだが……」
    霧崎 零斗:「まあ十七歳になると余計な文脈が乗るな……不覚だった」
    沢村 秀吉:「それ、ほんとに余計なわけぇ?」
    沢村 秀吉:訝しげに見つめる。
    霧崎 零斗:「俺としては超重要だ」
    沢村 秀吉:「ほう。その心は」
    霧崎 零斗:「余計な恋愛文脈で彼女に要らぬ負荷を与えたのは事実だが」
    霧崎 零斗:「だがその余計な恋愛文脈という形こそ、彼女の隣に居るには一番合理的だとも思う」
    霧崎 零斗:「なので俺としては重要だ」
    霧崎 零斗:「ままならないな」
    霧崎 零斗:「そういう事考えずにまた一緒に居たいだけなのにな」
    沢村 秀吉:「合理的ねえ」
    沢村 秀吉:「霧崎君、よくその言葉使うよな」
    霧崎 零斗:「ああ」
    霧崎 零斗:「現実に山積する問題に対して我々の持つ力はあまりに弱く小さい」
    霧崎 零斗:「その力を最大限活用することは世界を守る者の義務だ」
    霧崎 零斗:「……いや」
    霧崎 零斗:「合理的に振る舞って少しでも多くの人間を守ることが俺の考える善の形だからそれを意識しているというべきか……」
    霧崎 零斗:一人でなにやらなっとくしたような顔をしている。
    沢村 秀吉:「ぷっ」
    沢村 秀吉:我慢できずに吹き出す。
    霧崎 零斗:「な、なにか変なことを言ったか!?」
    沢村 秀吉:「いや、変っていうかさ」
    沢村 秀吉:「笑ったのは悪かったけど、霧崎君」
    沢村 秀吉:「絶対合理的とか、ほんとは似合ってないぜ?」
    霧崎 零斗:「なに!?」
    沢村 秀吉:「だってよ」
    沢村 秀吉:「ほんとに合理を考えるなら、そこまで他人のこと気にしねえだろ」
    沢村 秀吉:「まず自分、次に自分が生きるための他人」
    沢村 秀吉:「理だけ考えるならせいぜいそこまでじゃねえの?守ろうなんて考えるのはさ」
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:「それを言われて気づいたんだが」
    沢村 秀吉:「ん?」
    霧崎 零斗:「UGNというのはそもそも非合理的な集まりだな」
    沢村 秀吉:「まったくだ!」
    霧崎 零斗:「君と話していると気づかないことに気づかされる」
    沢村 秀吉:「世界を守ろうだなんて夢見人の集まりだからな、俺たちは」
    霧崎 零斗:「世界を守るのは非合理的だし、俺が変わっているのは手術のせいじゃなく思春期の一種らしい」
    霧崎 零斗:「君を見ているとそう思う」
    沢村 秀吉:「俺をか?」
    霧崎 零斗:「俺はいまいち他人に共感できなくて、それは手術のせいだと思ったんだが」
    霧崎 零斗:「さっき、祈に『思春期だ』と言われてな」
    霧崎 零斗:「似た処置を受けた君を見ていて……俺とはぜんぜん違う」
    沢村 秀吉:「……ああ、そうだな」
    霧崎 零斗:「確かに思春期なのだろうな……と今分かった次第だ」
    沢村 秀吉:「違うよ、俺と君は」
    霧崎 零斗:「ああ、だが似ている」
    沢村 秀吉:「どこが?」
    沢村 秀吉:同じ手術を受けたと、そう聞いたからこそ。致命的な違いを感じた。
    霧崎 零斗:「違うところ以外だな」
    霧崎 零斗:「コトバアソビじゃないぜ。しっかりした観察の結果だ」
    沢村 秀吉:「……よくわからん」
    沢村 秀吉:「俺の国語力の問題か?別に苦手じゃないんだが……」
    霧崎 零斗:「同じ施術を受けた」
    霧崎 零斗:「同じ処置であっても、その処置が必要になった経緯が違う」
    沢村 秀吉:「……経緯」
    霧崎 零斗:「根が違うから結ぶ実も違う。けど、そこだけだ」
    霧崎 零斗:「枝ぶりも花も、結構近いと思うぜ、俺たち」
    沢村 秀吉:「……そうかな」
    霧崎 零斗:「似ている、が気に入らないなら」
    霧崎 零斗:「対照的と言っても良い」
    霧崎 零斗:「俺が欠落したものが、君にはどうしようもなく憑いて回る」
    霧崎 零斗:「それを受け止めてくれる相棒が居るのは、お互い恵まれている」
    沢村 秀吉:「霧崎、お前……」
    沢村 秀吉:わずかに、息を呑んで。
    沢村 秀吉:「……どこまで見えてる・・・・
    霧崎 零斗:「…………?」
    沢村 秀吉:エンジェルハイロゥの中には他者の感情を知覚するものが存在する。
    沢村 秀吉:自分がそうだ。例えばこの男が同じように見えているなら。
    霧崎 零斗:霧崎零斗は、己が洞察に特化したオーヴァードだ、と定義している。
    霧崎 零斗:それと引き換えに記憶障害が頻繁に起こるし、同じ境遇のチルドレンの中では使えるエフェクトも少ない。
    霧崎 零斗:「見えたものは口にしている」
    霧崎 零斗:「今口にしてないことがもしあるのならば、それは俺がまだ見えてないことだ」
    霧崎 零斗:「だが、あまり話しすぎると見えてしまうだろうから……」
    霧崎 零斗:「気になったなら……すまない」
    沢村 秀吉:「………」
    沢村 秀吉:「いや」
    沢村 秀吉:「謝るのはこっちだな」
    沢村 秀吉:ふっ、と覚悟を決めたように息をつく。
    沢村 秀吉:「人の内面ずけずけ評価しといて、自分だけ明かさないのはフェアじゃなかった」
    霧崎 零斗:「そうか?」
    沢村 秀吉:「そういうことにしてくれ。聞いてほしいんだ」
    霧崎 零斗:「そうか、そういうものか。聞こう」
    沢村 秀吉:「俺は昔から」
    沢村 秀吉:「綺麗なものを見ると、ぐちゃぐちゃにしたくなった」
    霧崎 零斗:「そうだったのか……!?」
    沢村 秀吉:「衝動抑制施術を受けた」
    霧崎 零斗:そこまでとは――予測していなかった。
    沢村 秀吉:「それでも治らなかった。レネゲイド由来じゃなかったわけだ」
    沢村 秀吉:「だから……お前を見ていると」
    沢村 秀吉:ああ、そうか。
    霧崎 零斗:「…………」
    沢村 秀吉:「嫉妬していた。合理的と口にしながら、自然な優しさが見えたお前にな」
    沢村 秀吉:「似たような境遇と言われて、余計に気になった」
    霧崎 零斗:「それは分かった」
    沢村 秀吉:「だから、ああ……妙にしつこく絡んで悪かったな」
    霧崎 零斗:「良いだろ。だってさ」
    霧崎 零斗:「俺たち、思春期ってやつなんだろ?」
    沢村 秀吉:「……」
    霧崎 零斗:「だからこういうのって、結構青春だと思うぞ」
    霧崎 零斗:「サワムラ」
    沢村 秀吉:ぐしゃ、と髪をかきわけて。
    沢村 秀吉:「俺のこれも、思春期かねえ」
    沢村 秀吉:「違うと思ったんだよ、お前と」
    沢村 秀吉:「自分が特別だって思いたい、若さ故の麻疹……なら、いんだけどなあ」
    霧崎 零斗:「違うとは思うよ」
    霧崎 零斗:「けど、違うことに対して意識が強くなるところが思春期さ」
    沢村 秀吉:「そういうもんか」
    霧崎 零斗:「俺はおもったよりも人間っぽいやつで」
    霧崎 零斗:「思春期だからそれが気になった」
    霧崎 零斗:「お前は人間っぽくない自分に気づいて」
    霧崎 零斗:「思春期だからそれが気になった」
    霧崎 零斗:「根だけ違うってことさ」
    沢村 秀吉:「なるほど」
    沢村 秀吉:「やっと国語力が追いついた」
    沢村 秀吉:「対照的で、似てるな。俺たちは」
    沢村 秀吉:腕を差し出す。
    沢村 秀吉:「お互いうまく乗り越えようや」
    沢村 秀吉:「大事な相棒も居ることだしよ」
    霧崎 零斗:「だな」
    霧崎 零斗:グッと拳を合わせてから腕を組む。
    霧崎 零斗:きっと青春はこんな感じだ。

    GM:ず ぅ ん っ !

    110 GM:──何の予兆も無く、唐突に、それは発生した。


    GM:──役場を囲む防壁の、上部銃座。
    GM:ここへ登ってみるとわかるが、つまりこの防壁は、バケツを引っ繰り返したような形になっている。
    GM:バケツ底の照明で役場を照らしているが、その外側は、
    GM:ずうっと、鉛色の曇り空。
    GM:昼も夜も区別が付かない、まるで北極圏の白夜である。
    東海林 エマ:防壁の端から端までぐるり、と。
    東海林 エマ:端っこを歩きながら、その隙間から外を目を凝らして見て回っている少女がいる。
    東海林 エマ:哨戒のつもりだろうか。することがなくて手持ち無沙汰なのか、一人ぶらぶらとほっつき歩いていた。
    GM:ばさ ばさ ばさ
    GM:翼の音。
    鏑木 鵠:歩き回る彼女の傍に、鏑木が降下してくる。
    東海林 エマ:「ん」 音のする方に顔を向ける。
    鏑木 鵠:「お疲れ様です……」という本人の顔が、だいぶ疲労感を滲ませている。
    東海林 エマ:「哨戒ですか。おつかれさまです」
    鏑木 鵠:「いえ……ああいや、哨戒は確かにしてたんですが」
    鏑木 鵠:「はー……」溜息。翼を畳む。
    鏑木 鵠:「息が詰まる……」
    東海林 エマ:首を傾げる。
    鏑木 鵠:「大きな鳥籠の中ですよ、ここは」
    東海林 エマ:「高度制限でもあるんですか?」
    鏑木 鵠:「防衛の為の壁。選択は正しく、他の手段を選ぶ余地は無かった。それでも」
    鏑木 鵠:「……籠に入れられたひと達は、疲れ果てています」
    東海林 エマ:「ああ、そういう」
    東海林 エマ:「……お腹空くと、死にたくなりますからね。気持ちはわかります」
    東海林 エマ:「それに、いつ解放されるかも分からないし」
    鏑木 鵠:「寒さと飢えは、心の健康の大敵です」
    東海林 エマ:「失礼なことを多分言うんですけど」
    鏑木 鵠:「はい?」
    東海林 エマ:「鏑木さんって。意外と、繊細なんですね」
    鏑木 鵠:「む。意外とってなんですか。意外とって」
    東海林 エマ:「なんか、もっと『自分は自分、他人は他人』『周囲に乱されない絆されない』みたいな……」
    東海林 エマ:「そういうイメージを持ってました。勝手に」
    鏑木 鵠:「あー、はいはいはい」こくこくと頷いて
    鏑木 鵠:「……ま、まぁ確かに、そういう感じなこともありましたけど」少し視線が彼方に泳ぐ
    鏑木 鵠:「もう、お酒飲める年齢になっちゃいましたからね」
    鏑木 鵠:「気付いたら、任務で組む相手、年下の方がずっと多くなってるんですよ」
    東海林 エマ:「3つ歳上ですか。お姉さんですね」
    鏑木 鵠:「ちょっと前まで、周りみんな年上だなぁって思ってた筈なのに……」
    鏑木 鵠:「って」
    鏑木 鵠:「私の実感はいいんです。それを言いに来たんじゃなくて」
    鏑木 鵠:「お小言と褒めと質問と、しに来たんでした」
    東海林 エマ:「三つも」
    東海林 エマ:ひい、ふう、みい、と指を折る。
    鏑木 鵠:「……と言っても、そのうち二つはもう済んでる雰囲気かな?」
    東海林 エマ:「じゃあ、一つずつ聞きます。……あ、お小言を最初で」
    東海林 エマ:「ん、あー……もし、サワムラが言ってたことと同じなら、多分そうです」
    鏑木 鵠:ほんのちょっとだけあなたより低い背で、目を覗き込む。
    東海林 エマ:「小言と、褒めと。もらいました」
    鏑木 鵠:猛禽類の眼。
    鏑木 鵠:「たぶん、だいたい同じです」
    鏑木 鵠:「事前の相談は欲しかったなぁ、ってお小言」
    鏑木 鵠:「でも、その判断は間違っていないと思います」
    東海林 エマ:「だいたい同じですね」
    東海林 エマ:「あと、サワムラには質問じゃなくて、心配されました」
    鏑木 鵠:「後でお腹が空かないか、って?」
    東海林 エマ:「です」
    鏑木 鵠:「気をつけた方がいいですよ」
    鏑木 鵠:「ちょっと見て来ましたが、野生動物とか野草とか、全然いませんから」
    鏑木 鵠:「小腹が空いたからってリスとか捕まえるのが出来ないんですよ」
    東海林 エマ:「……普段食べてるんですか、リスを?」
    鏑木 鵠:「美味しいですよ。かわいいですけど」
    東海林 エマ:一部の民族は食べるとか聞いたことがあるようなないような気がする。
    鏑木 鵠:「私の場合、先天的に消化器官とか味覚とかが、シンドロームに大きく影響されてるようで」
    東海林 エマ:「ああー……鳥っぽいなって思ってました」
    鏑木 鵠:「そういうあなたは?」
    東海林 エマ:「?」
    鏑木 鵠:「召集時に一通りの資料は読みましたが、ええ」
    鏑木 鵠:「〝開示を本人が希望しない〟情報については、無理に請求をしなかったもので」
    鏑木 鵠:「あなたというオーヴァードを、ちゃんと知っているわけではないんです」
    東海林 エマ:「別に……書いてるのがだいたい、全部ですよ」
    鏑木 鵠:「そうですか。……ちなみに、先天的? 後天的?」
    東海林 エマ:「少なくとも、母はオーヴァードです。だから、母子感染かな」
    鏑木 鵠:「なるほど」
    東海林 エマ:父も──きっとそうだろう。"吸血鬼"と、そう名乗る類の化け物だったとしても。
    鏑木 鵠:空を見上げる。雪は降っていないが、息は白い。
    鏑木 鵠:「この村の人達──75人のオーヴァードは、みな後天的なものです」
    鏑木 鵠:「オーヴァードと言っても、再生能力が人より高いだけの」
    東海林 エマ:「ほとんど、戦うほどの力量はないって話でしたね」
    鏑木 鵠:「私達からすると、一般人とさほど変わらないくらいの微力な存在ではありますが──」
    鏑木 鵠:「あなたの眼には、どう見えました?」
    鏑木 鵠:「ああ、いや」
    鏑木 鵠:「聞き方が良くないな。こう、言い方を変えます」
    鏑木 鵠:「村のひと達と、話をしてみましたか?」
    東海林 エマ:「少しだけ」
    東海林 エマ:「といっても、多分……元気なのは戦える方の人だったので」
    東海林 エマ:「そうじゃない人とは。あんまり」
    鏑木 鵠:「ふむふむ」
    鏑木 鵠:「ならちょうど良かった──ちょうど良いというのも変ですが」
    鏑木 鵠:ちょいちょいと手招きをしながら、銃座から壁内へ繋がる扉に手をかける。
    東海林 エマ:なんだろうと思いながらも素直に付いていく。
    GM:少し歩いて、役場の中に入った。
    GM:燃料節約のために薄暗く、凍えるほど寒くはないが、暖かいとも言えない空間。
    GM:その一室の扉を、鏑木はそうっと、隙間を作るだけ押し開けて
    鏑木 鵠:「覗いてみてください」
    東海林 エマ:言われるがままに中を覗き込む。
    川辺 日向子:「いち、にい、さん、しい、ご……あー惜しい、あと1マス!」
    GM:あはははは、と、老婆達が笑う声が、室内から廊下に零れ出した。
    GM:部屋の中では、すごろく遊びが行われていた。
    東海林 エマ:「…………」 押し黙ったまま、その様子を見ている。
    GM:ぼろぼろの、古いカレンダーの裏紙に、ボールペンか何かで書いた、拙い手作りの双六。
    GM:見た目は良くないが立方体なのは間違い無いサイコロと、小石やらクリップやらを使ったコマ。
    川辺 日向子:「むー。いいもん、次で上がるから──って、あー!」
    GM:日向子の次の手番でサイコロを取った老婆が、6の目を出した。
    GM:老婆のコマは、日向子のコマを飛び越えて、上がりのマスにトップで躍り込む。
    川辺 日向子:「ま、負けた……!」
    鏑木 鵠:「戦えない方のひと達です」ぼそり、小さな声。
    東海林 エマ:笑い声が響く部屋の隅に、見覚えのある包み紙を見つけた。
    東海林 エマ:(……食べてくれたんだ。良かった)
    東海林 エマ:包み紙は、一つだけ。きっと、一つをここにいる皆で分け合って食べたのだろう。
    東海林 エマ:「……どうして、これを?」
    鏑木 鵠:答えの代わりに、にっ、と笑って
    鏑木 鵠:「日向子ちゃーん、まーぜーてー!」扉をぐいっと押し開ける。
    川辺 日向子:「あっ、鳥のおねーちゃん! と、食べ物くれたおねーちゃん!」
    東海林 エマ:「え、あっ」
    鏑木 鵠:「そう、鳥のおねーちゃんです。そして」
    鏑木 鵠:内ポケットにしまい込んでいた、板のようなものを取り出す。
    鏑木 鵠:それから、ポケットに押し込んでいたビニール袋。
    鏑木 鵠:袋の中身は、白と黒のプラスチック部品が表裏になった、つまり──
    GM:おっ、と老婆達が、物珍しそうな顔をする。
    鏑木 鵠:「新作を持ってきたおねーちゃんでもあります」
    川辺 日向子:「……?」
    東海林 エマ:「オセロなんて、また懐かしいものを……」
    川辺 日向子:「おせろ?」
    東海林 エマ:まだ扉の辺りに固まったまま呟く。
    鏑木 鵠:「祈さんに作ってもらったんですよ、ちょっと無理を言って」ぼそぼそ
    川辺 日向子:「おせろ、オセロ……昔聞いたことある気がする」
    鏑木 鵠:「すごろくともちょっと違う遊びなんですよー」
    鏑木 鵠:「はい、東海林さん」
    鏑木 鵠:有無を言わさずボードとコマを、彼女の手に押し付ける
    東海林 エマ:「えっ」
    東海林 エマ:押し付けられたものを、反射的に受け取ってしまう。
    鏑木 鵠:「よっこいしょ」
    鏑木 鵠:その背を押しながら室内へ。
    鏑木 鵠:「今日はこちらの東海林エマさんが、オセロのルールを教えてくれまーす。拍手!」
    鏑木 鵠:ぱちぱちと手を打ち鳴らすと、
    東海林 エマ:「ちょ、ちょっと……!」
    東海林 エマ:「エマ、そういうのあんまり得意じゃ……」
    GM:老婆達もそれに合わせて、穏やかな顔でゆっくりと拍手をし、
    川辺 日向子:「?」良く分かっていないような、だが、にこにこと笑いながら、日向子も拍手する。
    鏑木 鵠:「なんとなく、なんですが」
    鏑木 鵠:「あなたは皆に食べ物を配った以上」
    鏑木 鵠:「あげっぱなしになるのは良くないんじゃないかなぁと思いました」
    東海林 エマ:「あげっぱなし、って……」
    鏑木 鵠:「ので!」
    鏑木 鵠:「こちらの皆さんに、楽しませてもらってください」
    鏑木 鵠:「それでチャラです、チャラ」
    東海林 エマ:真顔がほんの少し崩れて、眉が下がっている。
    川辺 日向子:「オセロ……」
    川辺 日向子:じいっ、と、あなたが持つボードとコマに視線を注いでいる。
    東海林 エマ:少しもじもじとした後に、観念したように床にしゃがみ込む。
    東海林 エマ:「…………じゃあ、ええと」
    東海林 エマ:少女だけではない。ルールを知っているはずの老婆達の視線も、こちらに注がれている。
    東海林 エマ:「今から……オセロのルールを、説明するので。よく……聞いてね」
    川辺 日向子:「はーい!」ぴっ、と手を上げる
    老婆達:「はぁい」肩くらいの高さまで、手を上げる。
    老婆達:あなた達が訪れた時は、廊下に力なく座り込み、声も掛けなかった老婆達が、
    老婆達:今は──満面の笑みとまでは言わないが──微笑みながら、童のような遊びに興じている。
    東海林 エマ:「……そう、そう。覚えるの早いね」
    鏑木 鵠:老婆達の横に腰を下ろし、がさつに胡座を組んで、
    鏑木 鵠:「……はー、なるほど。腰痛だけは治ったと」
    老婆達:「まぁねえ」
    老婆達:「酷いこと、いやーなこと、たくさん有るけど」
    老婆達:「腰が痛くなくなったのだけは嬉しいねぇ」
    東海林 エマ:一つの盤を皆で囲んで。ぱち、ぱち、と不規則な音を立てながら、ぎこちないなりに少女に手ほどきしていく。
    老婆達:「歯抜けは、治らんぞ」「目はようなった」
    老婆達:「何が良いもんかね、ばけもんになったとじゃろ」「ばけもんも婆もかわらん! かわらん!」「そうじゃなあ」
    川辺 日向子:「むむむむむ……するとたぶん……ここだぁっ!」ついに角を取る!
    東海林 エマ:「あっ」
    鏑木 鵠:「おっ」
    東海林 エマ:「……今のは強いな……ええと、どうしよう……」
    老婆達:「おおー、日向子ちゃんは賢いのう」「日向子ちゃんなぁ」
    鏑木 鵠:「この子なら、学校のお勉強だって余裕で着いていけますよ」
    老婆達:「……学校なぁ」「いかせてやれりゃあ……」
    老婆達:「無理、じゃろなぁ」
    老婆達:「こんなめんげぇのになぁ」「もったいねえなぁ……」
    東海林 エマ:「…………行けますよ。その為に、エマたちはここに来たんだから」
    東海林 エマ:次の手をぱち、と打ちながら。小さく言った。
    GM:しばらくの間、あなた達は、そんな時間を──
    GM:つまり、保全やら防衛やらに全く寄与しない無為な筈の時間を過ごす。
    GM:だが、その無為こそは。
    GM:彼我の壁を取り払う、最も重要かつ、難易度の高い任務なのかも知れない。
    川辺 日向子:「はい、角よっつ取ったー!」
    GM:……難易度の高い任務、である。
    GM:だが、楽しい時間でも────

    GM:ず ぅ ん っ !
    GM:──何の予兆も無く、唐突に、それは発生した。
    GM:防災無線を流用したスピーカーが、役場内に緊張した声を飛ばす。
    春日 祈:「襲撃発生。銃座担当、配置に」
    春日 祈:「UGN救援部隊は正面門を出てジャームの迎撃。私もすぐ行く」
    春日 祈:「私達が出撃次第、門は確実に閉じるように」
    春日 祈:「みんな、死なないで」
    老婆達:「はーあぁ。いくべえ、いくべえ」「銃座にいくべえ」「階段登るのはしんでえなぁ」
    老けた男:「非戦闘員は地下菜園へ避難! 迅速に!」
    GM:雪の中の城塞が、戦闘準備を始める。

    GM:ロイス取得が可能です
    沢村 秀吉:今はオッケー!
    東海林 エマ:こちらも保留かな
    霧崎 零斗:今はオッケー!
    GM:あいよ!

    ミドルシーン4:まもりて


    GM:全員登場!
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (61 → 70)
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 4)増加 (52 → 56)
    霧崎 零斗:霧崎 零斗の侵蝕率を1d10(→ 1)増加 (72 → 73)

    GM:村役場を囲む防壁は、多少の攻撃は遮るが、完全にやり過ごすだけの防御力は無い。
    GM:故に。これまで村人達は、壁面の銃座からの機銃掃射と、
    春日 祈:特に戦闘力が高いものによる直接戦闘にて、襲撃を防いできた。
    春日 祈:「……けど、今日は」
    春日 祈:「ちょっと……雰囲気が違うね」
    GM:そう呟く少女の視界に映るのは、数十体の異形を引き連れた、怪物の頭領。
    白い着物の女:ひゅう、ひゅう、と。その女の周囲だけ、冬が、よりすさまじく吹雪いていた。
    霧崎 零斗:「決着をつける好機、というわけだ」
    沢村 秀吉:「来たな、着物の……」
    東海林 エマ:「結構いるね」 防壁に両手を掛けて顔だけ出し、様子を窺っている
    東海林 エマ:「どうする? 先手必勝?」
    沢村 秀吉:「話ができる相手でもなさそうだしな。射程に入り次第でいいだろ」
    春日 祈:改造された通信端末を手に取る。音声は、役場内のスピーカーに転送される。
    春日 祈:「弾薬の備蓄は考慮しないでいい」
    春日 祈:「最大火力で迎撃!」
    沢村 秀吉:「了解。まずは砦の防衛を最優先、次いで隙があれば頭領の着物の女だ」
    霧崎 零斗:「幸い、撃ち合いには不自由しないメンツだ」
    東海林 エマ:「よーし。やるぞ」 あまり気迫の籠もらない掛け声と共に、指先をかぷ、と齧る。
    霧崎 零斗:「正直に言えば……楽しくなってきたな」
    沢村 秀吉:「物騒なことを言うね」
    白い着物の女:こぉおおおぉぉぉ…… 冷たい風が吹き荒れる。
    白い着物の女:その中に、か細い、本当にか細い声が、
    白い着物の女:「とん、とん、とん」
    白い着物の女:「とん、とん、とん」
    白い着物の女:「戸を叩くのはぁ、だれじゃいなぁ」
    白い着物の女:歌っているような声が、した。

    GM:壁を破壊しようと迫るジャームの群れを迎撃します。
    GM:が、ここはミドルシーン。少しシンプルに、簡易戦闘としましょう。
    GM:エネミーは多HPの1ユニット扱い。リアクションはガード固定。
    GM:エンゲージの概念は無しとします。シンプルに殴ってください。
    GM:そしてエネミー側の攻撃ですが、ミドルであんまり大ダメージ受けるのも大変ですよね?
    東海林 エマ:困る!
    沢村 秀吉:困る……
    GM:調達チャンス少ないしね
    GM:そこで救済措置として、皆さんがダメージ受ける確率を50%まで減らします。
    東海林 エマ:ワンチャンあるで
    霧崎 零斗:やったー!
    沢村 秀吉:やったー!
    GM:具体的には、みなさんの攻撃のたびにGMが1d2no
    GM:1d2のダイスをふります。
    GM:1が出たら攻撃者に2d10点のダメージ
    GM:2が出たら、攻撃は防護壁に向かいます。
    沢村 秀吉:なるほどねー
    GM:防護壁にはHPを設定しないので、完全に壊れてしまうということはありません。
    GM:もちろん数発直撃したからって、それで村人全滅ってことも無い! あってたまるか。
    沢村 秀吉:サンキュー壁
    GM:まぁ、多少の被害は出るでしょうけど、いつものことなのでね。
    沢村 秀吉:ひぇ
    GM:ということで早速行こうか
    GM:一応セットアップ! あれば宣言してもらいつつ、最初の手番は行動値21のきりさきくんだな!
    霧崎 零斗:ヨシ!
    霧崎 零斗:セットアップはなし!
    沢村 秀吉:なし
    東海林 エマ:"ハートステイク・ギフト" 《鮮血の奏者》 HP1点消費、ラウンド間対象の攻撃力[+18] 対象は自分自身で。
    東海林 エマ:東海林 エマのHPを1(→ 1)減少 (25 → 24)
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を4(→ 4)増加 (56 → 60)
    霧崎 零斗:手番が来たらマイナーでブルーリボルト起動するぜ
    GM:よし、ガンガン行くのだ
    東海林 エマ:セットアップは以上かな。キリサキどーぞ
    霧崎 零斗:よっしゃあ!
    GM:ちなみに鏑木とか祈とかは画面外で戦ってるので手番は無いぜ!
    沢村 秀吉:はーい
    霧崎 零斗:ウェポンケースの効果でオートアクションでブルーリボルト装備!マイナーでブルーリボルトの効果を発動!
    霧崎 零斗:達成値+15!
    霧崎 零斗:《ペネトレイト》《コンセントレイト:モルフェウス》
    霧崎 零斗:でメジャーアクションはゴー!
    GM:ダメージ判定まで一気にいっちゃえ!
    霧崎 零斗:醜い化け物どもめくらえ~
    霧崎 零斗:《ペネトレイト》《コンセントレイト:モルフェウス》
    霧崎 零斗:10dx7+21
    DoubleCross : (10DX7+21) → 10[2,3,3,4,6,6,7,8,8,9]+10[1,3,5,10]+2[2]+21 → 43

    霧崎 零斗:21+5d10 装甲無視
    DoubleCross : (21+5D10) → 21+29[4,3,9,10,3] → 50

    霧崎 零斗:くらえ~!
    GM:なんかミドルっぽくねえ数値が出たな???
    白い着物の女:いやまぁ死にはしないけど、思ったより削られてびびってるわよ
    霧崎 零斗:こいつは達成値で打点を出すビルドなんですねぇ~~~~~けひゃーっ!
    GM:そして
    GM:1d2
    DoubleCross : (1D2) → 2

    霧崎 零斗:「感情の無い俺だが、貴様を狙う時は気合が入るらしい」
    白い着物の女:「とん、とん、とん。とん、とん、とん」
    霧崎 零斗:なめらかな動作で狙撃銃を取り出し
    白い着物の女:「そこで呼ぶのは、だれじゃいなぁ」
    霧崎 零斗:まるで早撃ちのように白い着物の女へと狙撃を行う。
    霧崎 零斗:執拗に、執拗に、執拗に。
    白い着物の女:「だれじゃいなぁ──」 ひゅっ 袂を払うように腕を振る。
    霧崎 零斗:まるで弾痕で絵画でも描くつもりかと言うほど丁寧かつ徹底的に銃弾を浴びせ続ける。
    白い着物の女:女を取り囲む異形の一体が、操り糸で引かれたような不自然な動きで、射線に割り込む。
    霧崎 零斗:モルフェウスの弾丸精製を利用したリロード不要の連続射撃が――
    霧崎 零斗:「ちぃっ!」
    霧崎 零斗:あと一歩のところで届かない。
    白い着物の女:ばづん ばづん ばづん
    白い着物の女:幾つも風穴が空いて、異形が雪原に散らばっていく。
    霧崎 零斗:魔弾は異形を食いちぎるに留まる。
    白い着物の女:散らばった肉片が流す血は、あなた達と同じ、赤い色をしている。
    白い着物の女:「──だれじゃいなぁ」
    白い着物の女:「外はさむかろに だれじゃいなぁ」
    白い着物の女:流れた血が凍てついていく。
    白い着物の女:白い野に咲く、血の氷華。
    GM:手番、行動値17、沢村くん
    沢村 秀吉:はい!
    沢村 秀吉:マイナーなし
    沢村 秀吉:メジャーアクション、<コンセントレイト:エンジェルハイロゥ>+<小さな塵> コンボ:キリングバイト
    沢村 秀吉:対応なさそうなので命中からダメージまで 行きます
    沢村 秀吉:8DX+4+0@7 (侵食上昇4、侵蝕60~)
    DoubleCross : (8DX7+4) → 10[2,2,4,5,7,9,10,10]+10[1,5,7,9]+5[2,5]+4 → 29

    沢村 秀吉:3d10+1d10+28
    DoubleCross : (3D10+1D10+28) → 21[7,4,10]+2[2]+28 → 51

    沢村 秀吉:1点多い
    GM:ここはクライマックスか何かかね?
    沢村 秀吉:あ、装甲無視はないです!
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を4(→ 4)増加 (70 → 74)
    白い着物の女:まぁたくさん居るからね、そうそう死にはしないが、
    白い着物の女:それはそれとして想定よりだいぶ早く削られている……
    白い着物の女:ええい、復讐じゃあ
    GM:1d2
    DoubleCross : (1D2) → 1

    GM:ふふふ、今度はPCにあたるぞ
    GM:2d10
    DoubleCross : (2D10) → 11[4,7] → 11

    GM:11点の直接ダメージ!
    沢村 秀吉:失礼、レッドテンペストの反動もあります
    沢村 秀吉:沢村 秀吉のHPを1d10(→ 5)減少 (27 → 22)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉のHPを11(→ 11)減少 (22 → 11)
    沢村 秀吉:残り11
    東海林 エマ:だいぶもらってる……!
    沢村 秀吉:大丈夫 必要分は残ってる
    白い着物の女:──袂を払う。
    白い着物の女:まるで、雪の野で、見るものも無いというに、舞っているようでもあるし、
    白い着物の女:ゆめうつつに見えた幻が、手招きをしているようでもある。
    白い着物の女:その手指が示すのに、導かれたように、
    白い着物の女:風が雪原を払い、大地から雪を巻き上げる──地吹雪!
    白い着物の女:それも〝レネゲイドに満ちた空間〟の地吹雪だ、尋常のそれではない。
    白い着物の女:肉を削ぐ風圧、骨を砕く冷気。悪辣に強調された〝冬〟が、物理的衝撃となって襲いかかる!
    沢村 秀吉:障壁に隠れても、冷気はまとわりつくように襲いかかってくる。
    沢村 秀吉:筋肉がこわばる。口の中が霜で張り付く。瞬きすればまぶたが千切れそうだ。
    沢村 秀吉:一度、呼吸を止める。
    GM:壁面からの機銃掃射が、一時的に止まる。銃手が倒れたか。なにがしかの叫び声は、吹雪に消されて、言葉としては届かない。
    GM:呼吸を止めたあなたの耳には、
    GM:命を奪う冬の音が、しぃん……と、喧しく聞こえることだろう。
    沢村 秀吉:沈黙の世界。息をつくことによる余計な振動をなくして、スコープの中の視界に没頭する。
    沢村 秀吉:レティクルが女の頭を捉える。
    沢村 秀吉:(いい加減)
    沢村 秀吉:(その顔見せてみろ)
    沢村 秀吉:引き金は常に軽く。発射音は重い。
    白い着物の女:レティクル越しにあなたが見るものは、
    白い着物の女:きっと──スコープを覗く、あなた自身の姿だ。
    白い着物の女:その顔は、鏡面のようであった。
    白い着物の女:ぴしぃっ
    白い着物の女:その鏡面に罅が入る──直撃弾!
    沢村 秀吉:「……ははっ」
    沢村 秀吉:狙撃手のセオリーを一瞬忘れ、笑いが溢れる。
    沢村 秀吉:これは僥倖。自分を撃つ機会なんてそうそうありはしない。
    沢村 秀吉:痛みに歪んだ己の顔を想像して、心が少し跳ねた
    GM:吹雪が少しだけ、力を失う。後方の、村人達の声があなた達にも届くようになる。
    GM:「交代しろ」「やられた」「どうせ死なない」「〝変わる〟前に下げろ」
    GM:感情の起伏の薄い、淡々とした戦いの声が。
    GM:手番、行動値11。東海林さん
    東海林 エマ:やるぞーーー
    東海林 エマ:マイナーなんもないよ。フレーバーでえいやっと防壁から乗り出し飛び出しします
    東海林 エマ:メジャー、"ハートステイク・ボルト" 《C:バロール》《瞬速の刃》  侵蝕[+6]
    東海林 エマ:単体攻撃だ。いくぞー
    GM:さぁこい
    東海林 エマ:(4+3+1)dx7+6
    DoubleCross : (8DX7+6) → 10[2,3,5,7,7,10,10,10]+10[1,3,4,5,7]+6[6]+6 → 32

    東海林 エマ:4D10+9+18+1D 装甲・ガード値有効
    DoubleCross : (4D10+9+18+1D10) → 13[1,4,1,7]+9+18+4[4] → 44

    東海林 エマ:DDがしょっぱい!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を6(→ 6)増加 (60 → 66)
    GM:ふふ……
    白い着物の女:惜しかったな!
    白い着物の女:ダメージダイスが跳ねてたらヤバかったが!
    白い着物の女:まだ生きる!
    東海林 エマ:ぬー 足りなかったか
    GM:そしてお楽しみの50:50は
    GM:1d2
    DoubleCross : (1D2) → 2

    GM:チッ
    東海林 エマ:しゃい
    霧崎 零斗:でも
    霧崎 零斗:防壁を担当する人々に攻撃が降り注いでますからね……
    東海林 エマ:それもあまりよくない
    沢村 秀吉:ひえー
    白い着物の女:──顔が罅割れた女が、仰け反ったままに舞っている。
    白い着物の女:首だけが、生まれたばかりの赤子のように、かくりかくりと揺れている。
    白い着物の女:その仕草に合わせて──蟻のように押し寄せる異形の群れ!
    白い着物の女:彼らの体に残る、薄汚れた布の切れ端はきっと──春物の衣服の残骸であろう。
    東海林 エマ:「あんまり見ないけど」 防壁の上からそれらを見遣る。体重を前に倒せば、ふ、と身体が落ちていく。
    東海林 エマ:「……ゾンビ映画とかホラー映画の敵って、こういうのだっけ」
    東海林 エマ:身体が地面と平行になった。その瞬間、辛うじて接面していた防壁を蹴る。身体が、宙に弾き出される。
    白い着物の女:──ひゅうっ
    白い着物の女:風が吹いた。
    白い着物の女:壁を蹴ったあなたの、その起動と交錯するように──
    白い着物の女:雪に舞う異形が、重力を忘れたように、風に身を躍らせていた。
    東海林 エマ:「あぶなっ」
    東海林 エマ:空中で無理矢理に身体を捻って、異形を避ける。
    白い着物の女:擦れ違う一瞬。感じ取れるものは、ひとの暖かみなど欠片も持たない、
    白い着物の女:ただ、ただ、冷たい、動いているだけの氷のような感覚。
    東海林 エマ:「あんまり。これ、有利な位置じゃないな……」 くるん、と体勢を整えて、
    東海林 エマ:齧った指先から溢れ出した血を、宙に弾く。
    東海林 エマ:ひとつ、ふたつ、みっつ。血色の杭が群れに狙いを定め、
    東海林 エマ:「行け」
    東海林 エマ:言葉と共に、魔眼を核に据えた赫杭は細やかな幾つもの杭に枝分かれし、雨のように降り注いだ。
    白い着物の女:「とん、とん、とん。とん、とん、とん」
    白い着物の女:歌声の静けさと、
    白い着物の女:ざあ、ざあ、ざあ。
    白い着物の女:殺傷の為の力が込められた、おそろしい雨が行き違う。
    白い着物の女:壁面に殺到する異形達が、這い上る四肢を、或いは頭部を、胴体を貫かれ、
    白い着物の女:雪原へ、串刺し公の街道のごとく並べられる──
    GM:そこへ降り注ぐ機銃掃射。怪物達の数が減って行く。確実に、明らかに──
    東海林 エマ:とん、と雪原に降り立つ。群れの大方は対処できたが──"首魁"の姿がない。
    春日 祈:「……いける」
    春日 祈:「戦えるオーヴァードがこれだけいれば、やっぱり──」
    白い着物の女:「戸を開けたのは」
    白い着物の女:銃座に、女が降り立った。
    老婆達:「ひっ」
    白い着物の女:「だれじゃいなぁ」
    白い着物の女:《ハザードコール》
    白い着物の女:……銃撃音がした。
    白い着物の女:だが、その弾丸は、壁の外へは撃ち出されない。
    白い着物の女:銃座へ続く階段の中に、大量の鉛玉が乱反射する音が、
    東海林 エマ:「っ、入られて……!」
    白い着物の女:大勢の悲鳴と共に、あなた達の耳に届く。
    沢村 秀吉:「逃げろ!みんな、砦の中に……!」
    鏑木 鵠:「──ちぃっ!」
    鏑木 鵠:急降下し、銃座を腕で薙ぎ払う。
    白い着物の女:間一髪、逃れた女は、自らの率いる群れの最奥まで退いて、
    白い着物の女:ららら、ららら……と何かを口ずさんでいる。
    白い着物の女:不愉快な程に美しく、聞き惚れるほどに悍ましい声音で。
    春日 祈:『──ひとり、〝変えられた〟!』
    春日 祈:『私が対処する! そっちは任せる!』

    GM:ラウンド2
    GM:行動順はそのままだ。待機の選択はこれを許可する
    GM:その上で手番、行動値21、霧崎くん
    霧崎 零斗:よし
    霧崎 零斗:マイナーでブルーリボルト起動
    霧崎 零斗:《ペネトレイト》《コンセントレイト:モルフェウス》
    霧崎 零斗:10dx7+21
    DoubleCross : (10DX7+21) → 10[2,5,6,6,7,7,9,10,10,10]+10[1,1,3,3,7,9]+10[5,9]+4[4]+21 → 55

    沢村 秀吉:回った!
    霧崎 零斗:21+6d10 装甲無視
    DoubleCross : (21+6D10) → 21+38[7,6,2,8,6,9] → 59

    霧崎 零斗:この悲しみは敵にぶつける!
    霧崎 零斗:侵食は77→81
    GM:さぁこい
    白い着物の女:……このダメージは!
    白い着物の女:やられる……!
    白い着物の女:結構オーバーキル気味で……!
    霧崎 零斗:!?
    霧崎 零斗:やった!!!!!
    霧崎 零斗:では演出も……
    霧崎 零斗
    霧崎 零斗:守るべき人を守れなかった。
    霧崎 零斗:戦う度に倒れていった。
    霧崎 零斗:そんなことばかりだったから、手は止めない。
    霧崎 零斗:生成する弾丸の速度は変わらず、銃撃の精度は変わらず、ただ敵を討ち滅ぼす。
    霧崎 零斗:たとえ、天堕ちるその時まで。
    霧崎 零斗:「――もう誰も、殺させない」
    霧崎 零斗:氷雪によって微妙に狂った軌道の銃弾同士がぶつかりあい、跳ね回り、異形の隙間をかいくぐり、白い着物の女へと、静かに迫る。
    霧崎 零斗:抑えきれぬ、確かな激情を乗せて。
    白い着物の女:「戸を叩くのは」
    白い着物の女:「だれじゃ──」
    白い着物の女:ぱりんっ
    白い着物の女:度重なる攻撃で罅の入った鏡が、割れて砕けて、高い音を──
    白い着物の女:鏡が、
    白い着物の女:破片に映るあなたの目が、あなたを見ている。
    白い着物の女:何かを訴えるような顔をしている──ようにも見えるが、
    白い着物の女:錯覚だろう。あなたは感情を抑える術を持っているのだから。
    白い着物の女:感情を、
    白い着物の女:抑える術を──
    白い着物の女:メジャーアクション
    白い着物の女:《冷静と情熱の間》
    GM:……さて、PLに直接お聞きしますが、しぃるさんや。
    GM:この知名度低めエフェクトが何かご存じですか?
    霧崎 零斗:感情を……うばう
    霧崎 零斗:なんか怒りとか悲しみとかを奪う……
    GM:或いは?
    霧崎 零斗:増幅させることも……できたってこと……!?
    霧崎 零斗:わぁ……
    GM:そう
    GM:対象の活性化または停止させる、なんですね
    霧崎 零斗:ぎゃああああああ!
    GM:難易度は自動成功。Eロイスじゃないのが不思議な性能だが
    白い着物の女:対象、霧崎 零斗
    白い着物の女:〝寂しさ〟の感情を活性化させます。
    霧崎 零斗:ぐああああああああああ
    霧崎 零斗:ではですね
    GM:はい
    霧崎 零斗:「が、あ……」
    霧崎 零斗:愛銃を取り落とす。
    霧崎 零斗:そのままの姿勢で、動けない。
    霧崎 零斗:目元に凍りついた涙。
    霧崎 零斗:(なにを……された?)
    霧崎 零斗:明らかな異常に、周囲の人間も気づくことだろう。
    春日 祈:『霧崎!?』スピーカーから聞こえる声は、冷静さを欠いているようでもある。
    沢村 秀吉:「霧崎君?どうした!?」
    霧崎 零斗:「みんな……みんな……」
    白い着物の女:「……こっち来ておくれ」
    白い着物の女:「さびしかろ」
    霧崎 零斗:戦うほどに消えていく。仲間たちは消えていく。
    霧崎 零斗:もう嫌だ。
    霧崎 零斗:もう誰も失いたくない。
    霧崎 零斗:失ったことすらいつか気づけなくなるのならば……。
    霧崎 零斗:「あ……あ……」
    霧崎 零斗:誘う声のまま、ふらり、ふらりと踏み出し始める。
    白い着物の女:「戸を開けたのは だれじゃいなぁ」
    東海林 エマ:その眼前に降り立つ。立ち塞がる。
    霧崎 零斗:「二郎、ルミ、紘汰……」
    東海林 エマ:「どこに行くつもり?」
    霧崎 零斗:「……」
    霧崎 零斗:首を左右にふる。
    霧崎 零斗:「わからない」
    白い着物の女:──風が吹く。
    白い着物の女:《瞬間退場》
    白い着物の女:頭部の罅が全身に伝播し──女の体は雪片となって砕けて、風に吹かれ、散ってゆく。
    白い着物の女:だが、霧崎にはまだ、声が聞こえているだろう。
    白い着物の女:さびしかろ
    白い着物の女:来ておくれ
    白い着物の女:……山の方へと声は遠ざかる。
    霧崎 零斗:「ふ、ふざけるな。そこに行って何になる。そんなことをして、解決なんて……」
    沢村 秀吉:「霧崎君……!しっかりしろ!」
    霧崎 零斗:「無駄だ。無駄なだけだろ……けど」
    霧崎 零斗:「うっ、おれ、俺は……何を……!?」
    霧崎 零斗:「分からない……何だこの感情は……?」
    霧崎 零斗:「一人になりたくない……皆、皆、俺を置いていってしまうから……!」
    霧崎 零斗:「ぐっ、う……ああああああああ!!!!!」
    沢村 秀吉:「霧崎っ!」
    東海林 エマ:「サワムラ。キリサキ、今どうなってるの?」
    春日 祈:ざくっ ざくっ
    春日 祈:足音がする。
    霧崎 零斗:「祈!」
    春日 祈:防護壁の門が開き、祈が歩いてくる。……壁の内側の混乱も収まったようだ。
    沢村 秀吉:「錯乱してるとしか言いようがない。あの女になにかやられたのか……」
    霧崎 零斗:「お前も……俺を置いていくんだろ……!?」
    東海林 エマ:「……訊くまでもなかったかも。エマ、感情見えるわけじゃないけど……流石にこれは分かるな」
    霧崎 零斗:「他の皆と同じように……行かないでくれ……行くな……」
    霧崎 零斗:その場でうずくまって泣き始める。
    春日 祈:雪を踏みしめて歩く。足取りは……どこかおぼつかない。
    春日 祈:「霧崎」
    春日 祈:「……みんな」
    春日 祈:霧崎の傍で、雪の上に膝を着く。頬を涙が伝い落ちているのは、
    春日 祈:あなたと同じ寂しさを抱えているから──だけではないのだろう。
    東海林 エマ:「とりあえず、アレはいなくなった。すぐに仕掛けてくることはないと思うけど……中は?」
    霧崎 零斗:沢村と分かりあえても、東海林の善性に感じるものがあっても。
    霧崎 零斗:全てこぼれ落ちていく。それは当たり前のことだと思っていられたのに、今までは。
    春日 祈:この冬の大地は、
    春日 祈:「みんな」
    春日 祈:「日向子ちゃんが、撃たれた」
    春日 祈:酷く残酷にできているようだ。

    GM:ロイスの取得が可能です
    沢村 秀吉:保留!
    霧崎 零斗:ではですね
    東海林 エマ:保留にする
    霧崎 零斗:ここで寂しさが爆発したので
    霧崎 零斗:日向子ちゃんとエマちゃんにもとりましょう
    霧崎 零斗:日向子ちゃんには庇護/寂寥○
    霧崎 零斗:エマちゃんには好感/寂寥○ で
    GM:よろしい

    ミドルシーン5:たすけて


    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 5)増加 (66 → 71)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (74 → 77)
    霧崎 零斗:霧崎 零斗の侵蝕率を1d10(→ 6)増加 (81 → 87)

    GM:弾薬を銃座へ運ぶバケツリレーの、一番後ろにいたのだという。
    GM:それ以上のことは、皆、させようとしなかった。危ないからだと。
    GM:本人も、自分の無力は理解していて、それでも最低限の手伝いを──と申し出ていた。
    GM:日常生活において、さして役に立てる分野が無いから……という思いもあったらしい。
    GM:背丈が低く、力も弱い。肉体労働での貢献は難しいところであろう。
    GM:だから少しでも──訪れた希望に、じっとしていられなかったのかも知れない。
    GM:跳弾という不運は、誰に咎があるわけでもない。

    鏑木 鵠:「──応急措置は済みました。ですが」
    鏑木 鵠:「ここに医療の専門家はいません。施せる措置には限りがあります」
    鏑木 鵠:「我々の現地着到から10時間以上が経過しました、が──後続部隊の出動予定時間はまだ先です」
    鏑木 鵠:「……本当に、ここに辿り着くとも、断言ができません」
    沢村 秀吉:「……ますます、じっくり構える余裕はなくなったってことか」
    東海林 エマ:「あの。日向子ちゃんって……」 小さく手を挙げる。
    春日 祈:「聞きたいこと、わかるよ」
    春日 祈:「……非オーヴァード」
    東海林 エマ:「……!」
    春日 祈:「あの子は運良く、今までずっと、レネゲイドウィルスが発症しなかった」
    霧崎 零斗:「だ、誰か治癒能力はないのか!?」
    沢村 秀吉:「……」
    春日 祈:静かに首を振る。心の抜け落ちたような無表情に、いつもより少し青白い顔。
    霧崎 零斗:「こんな子供がこんな場所で死んじゃ駄目だろう!? なんとかならないのか!?」
    霧崎 零斗:「そんなの……嫌だよ……」
    東海林 エマ:唇を引き結ぶ。紅い瞳がきゅ、と細まって、所在なく宙を彷徨った。
    GM:その〝真っ当な感性〟による叫びを、村人達は聞いている筈だが、
    GM:誰も皆、同調の声を上げようとはしない。
    GM:かと言って無論、不運を喜んでいるものなどいないのだ。
    GM:そこにいる誰もが、諦めの表情を浮かべていた──
    沢村 秀吉:「霧崎、落ち着け。……気持ちは同じだ、大丈夫」
    霧崎 零斗:「同じなら……どうして」
    霧崎 零斗:「どうして耐えられるんだ……俺は」
    霧崎 零斗:「俺は、訳が分からない……耐えられない……」
    春日 祈:「みんな、ありがとう。……義秋さん、いいかな?」
    春日 祈:──この少女も、同様だ。
    春日 祈:少し遠くで、壁面の破損箇所をチェックする男に呼びかける。
    老けた男:「かまいませんよ」
    老けた男:「あなたの思惑ではなく、ここまでの方針にしたがって判断しなさい」
    東海林 エマ:「ここまでの方針……って?」
    老けた男:作業箇所から目を離さないまま、男は言う。
    老けた男:「生存可能性の低い非オーヴァードの治療に、資材と人員を割くのは、より大勢を死に至らしめる危険に繋がる」
    老けた男:「これまで何十回となく繰り返してきた判断です。ですから」
    老けた男:「誰かひとりが、判断に責任を負うものではない」
    霧崎 零斗:「……ッ」
    霧崎 零斗:合理的な判断だ。
    霧崎 零斗:だが、それをどうしようもなく許せなくなってしまっている自分が居る。
    霧崎 零斗:どっちが自分か、今の零斗にはわからない。
    春日 祈:「ありがとう。……そうだね、じゃあ──」
    鏑木 鵠:「……納得できません!」
    鏑木 鵠:声を張り上げ、祈の両肩を掴む。
    霧崎 零斗:「待ってくれ! 祈!」
    春日 祈:「……っ」びくっ、と小さく体を跳ねさせ鏑木を見て、それから
    春日 祈:「霧崎」
    春日 祈:それ以上の言葉はなく、あなたを見る。
    霧崎 零斗:「何時か言ったな」
    霧崎 零斗:「何人からならば些末でなくなるのか……と」
    霧崎 零斗:「俺にとって、命は何一つ些末ではなかった」
    霧崎 零斗:「だが、俺には何の力もなかった」
    霧崎 零斗:「だから諦めた。俺には人を癒やす力も守る力もなく、撃ち貫く他何もできなかったから」
    霧崎 零斗:「俺は俺にできる最善をやるしかなかったから、これが一番多くの人を守れると思ったから」
    春日 祈:「…………」何時か、言った。その時のような顔をする。
    春日 祈:ジャームの対処をしながら、いやだよね、と言っていたあの頃のように、
    春日 祈:くっきりと感情を出すわけではないながら、隠しきれないものを滲ませるような。
    春日 祈:眉の端を下げて、泣き出しそうな目をした、子供の顔。
    霧崎 零斗:「俺には何もできないかもしれないが……せめて」
    霧崎 零斗:「せめて、最後まで足掻くことくらいは許してくれ」
    春日 祈:「私はっ」
    春日 祈:「私はっ、ずっと……こうしてきた」
    春日 祈:「オーヴァードは、勝手に治るから……治療もしないで、放っておいてっ」
    春日 祈:「治る見込みのない非オーヴァードは……痛くないように、って」
    春日 祈:「ごはんだって」
    春日 祈:大粒の涙が、顎を伝う。
    霧崎 零斗:「俺も同じ判断をしたと思う」
    春日 祈:「私だけは、絶対に死んじゃだめだからって」
    春日 祈:「私よりずっとちっちゃい子が、おなか空いたって泣いてても」
    春日 祈:「私だけ、ぜったいに、ちゃんと食べて……っ」
    霧崎 零斗:「なんなら、俺は君ほど物質精製が得意な訳でもない」
    霧崎 零斗:――これだけの人数を生かせたのは、彼女だからだ。
    春日 祈:「たくさん、たくさん切り捨てて」
    春日 祈:「もう、私は……」
    春日 祈:「〝そうしない〟方法なんて、わからない……!」
    霧崎 零斗:「敵は俺一人が戦うことになったとしても全員撃つ」
    霧崎 零斗:「だから……探してくれ。どうにかする方法を知ってる誰かを……」
    東海林 エマ:「…………サワムラ」 か細い声が、相方を呼んだ。上着の袖をくい、と引く。
    沢村 秀吉:「……なに」
    東海林 エマ:知っているはずだ。東海林エマの"性質"を聴かされているのなら。
    沢村 秀吉:知っている。
    沢村 秀吉:知っているからなんだ。俺に言えってか。
    老けた男:「──都合の良い誰かに、期待をしてはいけない」
    老けた男:「過度な思い入れを持たないことです」
    老けた男:「それは誰かへの負荷になる」
    沢村 秀吉:でも、どちらにしろ。
    老けた男:「私達がしてきたことは、確かに、ひとりへの負荷が大きなものでしたが」
    老けた男:「無力なものは無力なりに、その負荷を軽くしようと試みていた」
    沢村 秀吉:選んだにしろ、選ばなかったにしろ。この少女は傷を負う。
    老けた男:「私が終わらせます。苦しませることは無──」
    沢村 秀吉:(だったら)
    鏑木 鵠:「待った! 待った、待った、待った!」
    沢村 秀吉:──傷つけるのは、俺だ
    霧崎 零斗:「……いや」
    東海林 エマ:「……ま、待って!」
    沢村 秀吉:「一つ」
    沢村 秀吉:「助ける方法はあります」
    霧崎 零斗:そう言って、日向子に銃を向けようとして、止まる。
    霧崎 零斗:「……なに?」
    鏑木 鵠:「──妙案があるんですか」
    鏑木 鵠:「正直私には、画期的な解決手段は見つかりません」
    鏑木 鵠:「沢村さん、あなたの言う〝方法〟とは……?」
    沢村 秀吉:「単純な話だ」
    沢村 秀吉:「ここには治癒能力を持つオーヴァードが居る」
    沢村 秀吉:「そうだな、エマ」
    東海林 エマ:「…………」 こくん、と小さく頷く。
    霧崎 零斗:「なにっ!?」
    老けた男:「…………」
    東海林 エマ:「……で、でも。治癒能力なんて便利なものじゃ……ない」
    春日 祈:「それ、は?」
    霧崎 零斗:「――そうか」
    東海林 エマ:「……エマの血を移すと、ヒトはヒトじゃなくなる」
    霧崎 零斗:「聞いたことがある。血液を媒介としたレネゲイドによる生命賦活……」
    鏑木 鵠:「! ブラム=ストーカーシンドロームの……発症誘発!?」
    東海林 エマ:「それが、未覚醒のままになるのか、覚醒するのか……あるいは、そのまま……」
    霧崎 零斗:「さながら吸血鬼……」
    東海林 エマ:「絶対に助けられる、なんて言えないし、その、日向子ちゃんが……ジャーム化する可能性だって、十分ある」
    老けた男:「……っ、ならば話は単純だ」
    老けた男:「私は父親として」
    老けた男:「日向子への〝治療〟を拒否します」
    沢村 秀吉:「助かる可能性があっても、ですか?」
    老けた男:「助からない可能性どころか。ジャーム化の可能性がある、ということでしょう」
    老けた男:「これ以上私に、ひとが形を──」
    鏑木 鵠:「──一時保留!」
    鏑木 鵠:きぃん、と耳鳴りがする程の大声で叫んだ。
    霧崎 零斗:「ぐっ……!」
    東海林 エマ:音に思考が止まる。『さながら吸血鬼』という言葉を今更のように反芻して、きゅうと眉根を寄せる。
    鏑木 鵠:「……事態の発生直後です。誰も冷静ではいられない」
    鏑木 鵠:「日向子ちゃんは危険な状況ですが──一刻一秒を争うというほどではありません」
    鏑木 鵠:「なら、えーとっ」必死で、次の言葉を探るような渋面になって
    鏑木 鵠:「……そう! 高校! この村にある高校、まだ資源の回収もできていないという、あの場所!」
    鏑木 鵠:「保健室があるでしょう、もしかしたら手付かずの医薬品なんかもあるかもしれない!」
    老けた男:「……学校に備わった医薬品程度で、銃創をどうにかなど──」
    沢村 秀吉:「……応急処置だけでもできれば、命は繋がる」
    沢村 秀吉:「考える時間も、別の手段を探す時間もできるでしょ」
    鏑木 鵠:「幸いにもここで多くのジャームを迎撃できた! 今、学校は手薄な筈!」
    鏑木 鵠:「それに、そこに日向子ちゃんをつれていけば」
    鏑木 鵠:「万が一にジャーム化したとしても被害は少ないでしょう!?」
    老けた男:「…………」
    鏑木 鵠:沢村の耳元に口を寄せ、声を潜める。
    鏑木 鵠:「私には、あのひとを説得する手立てはありません」
    鏑木 鵠:「……どうです。何か手立ては思いつきますか」
    鏑木 鵠:「いいえ」
    鏑木 鵠:「思いついてください、お願いします」
    沢村 秀吉:「無茶言ってくれるなあ」
    沢村 秀吉:「……けど、ありがとうございます」
    春日 祈:「……そうだね」
    春日 祈:「日向子ちゃんは一度、学校まで運ぼう」
    春日 祈:「何が起こるにしても、みんなから離れてる方がいい」
    霧崎 零斗:「…………」
    沢村 秀吉:「やってみます。……いえ」
    沢村 秀吉:「やります」
    老けた男:「……まぁ、良いでしょう」
    老けた男:「少なくとも、この〝壁〟の内のリスクは抑えられるようですから」
    東海林 エマ:「……次の襲撃が、ないとも限らない。どうか、気を付けて」
    東海林 エマ:殆ど空っぽのリュックサックを背負い、一足先に皆から離れるように出ていく。
    沢村 秀吉:頭がぐちゃぐちゃする。
    沢村 秀吉:みんなおかしくなってる。やるべきことはいっぱいだ。
    沢村 秀吉:最初からおかしい自分が言うのも変な話だが。
    沢村 秀吉:「……なんとかしなきゃな」
    霧崎 零斗:――こんなに苦しいなら、悲しいなら。
    霧崎 零斗:「……ああ」
    霧崎 零斗:――もしもの時は、せめて俺が。
    沢村 秀吉:出ていく相棒の背を見て、思う。
    沢村 秀吉:こんなぐちゃぐちゃがほしいわけじゃないんだよ。

    GM:【障害の排除】 目標累計値30 《全ての攻撃技能》

    GM:──晴待村立第一高等学校。
    GM:校門を潜ると、凍てついた校庭がまず目に入り、
    GM:それから、校庭を蠢く数体の異形だとか、校舎の窓にふっと映る影だとか、
    GM:生物の気配ではないが、蠢くものの気配に気付くだろう。
    GM:とは言え、少数だ。
    GM:かなりの数が、先刻の防護壁襲撃に動員されたものであろう。
    霧崎 零斗:それでは
    霧崎 零斗:マイナーでブルーリボルトを起動して素殴りでいきます
    霧崎 零斗:いっすか!
    GM:来い!
    霧崎 零斗:では……
    霧崎 零斗:12dx+21 射撃
    DoubleCross : (12DX10+21) → 10[2,2,4,4,5,5,6,7,8,8,9,10]+1[1]+21 → 32

    霧崎 零斗:いけました
    霧崎 零斗:では演出も……
    霧崎 零斗
    霧崎 零斗:敵がどこにいるのかは分かる。
    霧崎 零斗:うごめく全てを敵と仮定し、200m先から一体ずつ、急所を撃ち貫いていく。
    霧崎 零斗:その銃撃そのものには一切の異能が介在していない。
    霧崎 零斗:ただ実験体として強化された超常の知覚能力と、積み重ねた狙撃経験。
    霧崎 零斗:一つ、一つ、一つ。一切の予想外も、異常もなく、それは作業のように命の残骸を消し飛ばす。
    霧崎 零斗:「俺は……寂しい」
    霧崎 零斗:「彼らも……人間だったことがどうしようもなく意識される」
    GM:レネゲイド技術が発展を続ける今も、UGNが、他組織が変わらず〝銃〟という兵器を採用し続けるのは、
    霧崎 零斗:「脳になにかされているのだろうな……」
    霧崎 零斗:ため息をつきながらも、引き金を引く手が止まることはない。
    GM:単純な速度と物理的な衝撃は、ジャームに対しても一定の効力があるからだ。
    GM:破壊され、倒れ伏す、ひとだった筈の異形。
    GM:何体か、学生服を着ている。
    老けた男:「…………」毛布でくるまれた日向子を抱いたまま、それを、むっすりとした顔で見ている。
    鏑木 鵠:「侵入経路確保。さー、全力で探しますよ」
    春日 祈:「霧崎、いける?」
    霧崎 零斗:「いける」
    春日 祈:「そ」
    春日 祈:「……辛そうな顔してたから、つい」
    霧崎 零斗:「むしろ一人ぼっちになったら今度こそ終わりだ」
    霧崎 零斗:「あの攻撃を受けた今の俺に一人ぼっちに耐える精神力はない」
    霧崎 零斗:「だから置いて行かないでくれ」
    沢村 秀吉:「……どんだけ今まで我慢してたんだよ、思春期め」
    東海林 エマ:「別人みたい」
    沢村 秀吉:「わかったよ、甘えろ。疲れたらちゃんと変われよ」
    霧崎 零斗:「我慢はしてないが? 感じていなかっただけだが?」
    沢村 秀吉:「その強がりはそのままなのかよ!」
    春日 祈:「わかった。ついてきて」
    春日 祈:「……はーぁ」
    霧崎 零斗:「と言うよりお前たちはなぜこんな感情を知っていて耐えられるんだ……信じがたい……」
    沢村 秀吉:「……祈ちゃん。あんま離れないでやって」
    春日 祈:「大変な時なのに、霧崎がいちばん大変そうな顔をするから」
    春日 祈:「私、どれだけ大変がって良いのかわからなくなるんだけど」
    鏑木 鵠:「……東海林さん、東海林さん」
    東海林 エマ:「?」 首を傾げる。
    鏑木 鵠:彼らの声に紛れるように、そっと東海林の袖を引く。
    東海林 エマ:引かれるままにずるずる連れて行かれる。
    鏑木 鵠:「……あなたは、先天的なオーヴァードでしたよね。母子感染だとか」
    鏑木 鵠:他の面々には声の届かない程度の場所で立ち止まって。
    霧崎 零斗:「俺は敵の攻撃で精神に変調をきたしているのだから、俺の精神状態を基準にしてはいけないが、この気持を否定することは俺にはできないんだ……」
    霧崎 零斗:少し離れた場所でグスグス言っている。
    春日 祈:「まわりくどい。シンプルに言ってほしい」
    霧崎 零斗:「俺は辛くて仕方ないが、それを気にしすぎるな……」
    東海林 エマ:「ええ、まあ……」 小声で応ずる
    鏑木 鵠:「私もです。……先日、UGN内で健康診断的なことを行った時に」
    鏑木 鵠:「非オーヴァードとの結婚は推奨しない──と言われました」
    東海林 エマ:「そういうこと言われたりするんですね」
    鏑木 鵠:「ええ。検査内容からすると、おそらく」
    鏑木 鵠:「私の子供は、卵で産まれるだろうと」
    東海林 エマ:「え」
    東海林 エマ:一瞬理解が追い付かず、固まる。「卵?」
    鏑木 鵠:「私はどうも、内臓の機能の一部が鳥類に近いようで──ああ、いえ」
    鏑木 鵠:「なんでこんなことを言ったのか、なんですが……」
    鏑木 鵠:「……私達は、ずうっとオーヴァードです。そうでなかったころを知りません」
    鏑木 鵠:「ですが、オーヴァード化はつまり──レネゲイドウィルスへの感染と発症」
    鏑木 鵠:「身体にどのような変貌が起こるか、誰にもわかりません」
    鏑木 鵠:「私のように〝決定的に人間と異なる〟身体になる可能性は、十分にあります」
    東海林 エマ:こく、と頷く。
    鏑木 鵠:「……そう認識した上で、私は」
    鏑木 鵠:「あなたの力を、日向子ちゃんに使ってほしい……と思っています」
    鏑木 鵠:「だから」
    鏑木 鵠:「この選択が悲劇で終わるとしたら、それは」
    鏑木 鵠:「私にも、責任の一端があります」
    鏑木 鵠:「あなただけの咎ではない」
    東海林 エマ:「…………エマは」 地面をじぃ、と見て。
    東海林 エマ:「おじさんが、拒否した時──少し、ほっとしたんです」
    鏑木 鵠:「そう、なんですね」
    鏑木 鵠:対照的に空を見上げる。雪は降っていない。鉛色の空。
    東海林 エマ:「エマは、オーヴァードだけど……その、本質的に、ヒトじゃないから」
    東海林 エマ:「……だから。やっぱり、怖い」
    鏑木 鵠:「あえて、あなたに対して否定的な言葉を使うならば」
    鏑木 鵠:「〝吸血鬼〟というものは、現在でいうブラム=ストーカーシンドロームの発現が、大拡散以前に確認されたもの」
    鏑木 鵠:「少なくとも私はそう認識していますし、UGNの研究者にも、そういうことを言う者はいるでしょう」
    鏑木 鵠:「真偽がどうだとしても──」
    鏑木 鵠:言葉を句切り、視線が降りて来る。
    鏑木 鵠:……しゃがみ込む。彼女の目と地面の間に、頭を割り込ませる。
    鏑木 鵠:「いいえ、よしましょう」
    東海林 エマ:「ひゃ」
    鏑木 鵠:「〝吸血鬼〟の悩み事は、夜目の利かない鳥では荷が重い」
    鏑木 鵠:「おなじ夜のお仲間に──〝狼男〟に任せます」
    鏑木 鵠:「……彼は後天的なオーヴァードだったと思いますから」
    鏑木 鵠:「私達よりずっと、変わることについて、想いも言葉も持っているでしょう」
    東海林 エマ:「ん……そう、ですね」
    鏑木 鵠:……真っ直ぐな立ち姿に戻って、視線を巡らす。
    老けた男:体育館へ向かって歩いていく、男の背が見える。
    鏑木 鵠:「私はあちらを。万が一、ジャームが残ってても困りますから」
    東海林 エマ:「任せました」 ぺこ、と一礼。
    鏑木 鵠:「こちらこそ、お任せします」
    鏑木 鵠:「あの子の救出作戦を」

    情報項目 【学校内の調査】 目標値8 《任意の情報:》
    ※【説得】 目標累計値20 《交渉》 GM:このうち、【学校内の調査】のチャレンジが可能です。
    東海林 エマ:エマやろっか?
    霧崎 零斗:頼んだぜ!
    沢村 秀吉:お願いします
    東海林 エマ:じゃあ、コネ:UGN幹部使う 使えるかな
    GM:許可しよう
    東海林 エマ:やったー じゃあ情報:UGNで判定いきます
    東海林 エマ:(1+1+2)dx+4>=8
    DoubleCross : (4DX10+4>=8) → 9[3,5,7,9]+4 → 13 → 成功

    東海林 エマ:ふんす
    沢村 秀吉:強いぞ
    沢村 秀吉:えらい
    GM:一発成功、見事
    GM:これを、このシーン内で、交渉の前に開けたことはきっと幸運になるだろう
    GM:情報公開

    【学校内の調査】 保健室に残されたものはいずれも、芯まで凍結してしまっている。
    到底使い物にはなるまい。
    各教室で見つかったものも同様。元素変換の材料程度にはなろうが──

    ──3年1組の教室の壁面に、修学旅行の写真。
    生徒達に囲まれて仏頂面をしている、川辺 義秋の姿が映っている。

    ※この情報が【説得】の前に公開されている場合、説得の目標累計値を10から開始する。

    東海林 エマ:二手に分かれた一行は、校舎内の探索をそれぞれ進めていた。
    東海林 エマ:「壁も、床も全部ぼろぼろだ」
    東海林 エマ:時折柱の影に隠れながら、進行方向の安全を確認して行動再開。これを繰り返していた。
    東海林 エマ:ただ、敵意を向けてくる存在とは半ば拍子抜けする程に出会わない。
    東海林 エマ:襲撃に殆どが割かれていた上、先程表で撃退されたものを合わせればそう残っていないのだろう。
    東海林 エマ:少女と言えば、いつも通りの真顔が張り付いたまま。取り繕っている、とも言える。
    沢村 秀吉:「誰も修繕する人がいないからな。それでも祈ちゃんの力があれば、資材にはなるだろ」
    東海林 エマ:「あるだけましかな」
    沢村 秀吉:「ああ。……ただこの様子だと」
    沢村 秀吉:変わらぬ表情の下の感情を見つめる。
    沢村 秀吉:「医薬品については、望みは薄いかもな」
    東海林 エマ:教室の扉は無惨にひしゃげている。ひょいと中に踏み入ると、床がぱき、と音を立てた。
    東海林 エマ:「全部凍ってる」
    東海林 エマ:何もない。また出てくる。
    東海林 エマ:「保健室は……この突き当りで。その反対側にまた教室が並んでるって言ってたね」
    沢村 秀吉:「そうだな……」
    東海林 エマ:窓が壊れて吹きさらしの廊下を抜ければ、大した障害もなく保健室に辿り着く。
    東海林 エマ:「よい……しょ」 廊下側から強く力を加えられたらしい扉を、無理矢理に抉じ開ける。
    東海林 エマ:「……何か残ってるといいな」
    沢村 秀吉:中から溢れ出した冷たい空気に晒される。
    沢村 秀吉:ボロボロのベッドも、割れてしまった棚も、冷気にさらされてすべてが凍りついている。
    沢村 秀吉:「使い物になるような、ものは……」
    東海林 エマ:「うーん…………全部、凍っちゃてるね」
    沢村 秀吉:「ダメか。……くそっ」
    沢村 秀吉:苛立たしげに地面を踏みしめる。霜の割れる音。
    東海林 エマ:「この瓶だけでも、変換したら使えるのかな?」
    沢村 秀吉:(せめてもう少し時間を稼げれば、他の選択肢も選べるのに……)
    東海林 エマ:「……サワムラ?」
    沢村 秀吉:「悪い。……エマ」
    東海林 エマ:近付いて、頬をつんつんする。
    沢村 秀吉:「って、近い近い!なんだよ!」
    東海林 エマ:「ぼーっとしてたから」
    東海林 エマ:「なにか、考え事?」
    沢村 秀吉:「考え事、というか……」
    沢村 秀吉:「ちょっと話がある」
    東海林 エマ:「ん。聞く」
    沢村 秀吉:どかりとベッドに座る。
    沢村 秀吉:「エマ」
    沢村 秀吉:「日向子ちゃんのこと。お前はどうしたい?」
    東海林 エマ:「…………それは、助けられるなら助けたい、けど」
    沢村 秀吉:「このまま治療ができないなら」
    沢村 秀吉:「お前の力を、使うか使わないか……そういう話になる」
    東海林 エマ:「……うん」
    沢村 秀吉:「彼女にお前の力を使うべきかどうか」
    沢村 秀吉:「正直に言えば俺は、どちらが正しいなんて言えないと思う」
    沢村 秀吉:「日向子ちゃんには生きていてほしい、でも」
    沢村 秀吉:「もしもジャームになってしまったら……余計に苦しい思いをさせるだけなんじゃないかって」
    東海林 エマ:「……うん。日向子ちゃんだけじゃなくて、周りの人にも」
    沢村 秀吉:「ああ。義秋さんの気持ちも、否定はできない」
    沢村 秀吉:「だから、お前の気持ちが聞きたい」
    沢村 秀吉:「正しいかどうかじゃなくて……どうしたいか、だ」
    東海林 エマ:凍った瓶を手で弄びながら、暫く視線を落として、
    東海林 エマ:「……それに、もし助かっても。オーヴァードには、きっとなる」
    東海林 エマ:「人間のまま死ねるチャンスは……今だけ」
    沢村 秀吉:「……」
    東海林 エマ:「……エマは、生まれた時からこうだから、分からないけど。サワムラは、そうでない時があったんでしょ?」
    東海林 エマ:「どういう……気持ちなのかな、って。自分が、変わっちゃう、って」
    沢村 秀吉:「まあな。そうは言っても、オーヴァードになってからのほうが長いけど」
    沢村 秀吉:「どんな気持ち……か」
    沢村 秀吉:「俺は、そもそも」
    沢村 秀吉:「自分が変わった、なんて自覚が持てなかったな」
    東海林 エマ:「そうなの?」
    沢村 秀吉:「まだこんなちっちゃい子供だったからな」
    沢村 秀吉:「それに」
    沢村 秀吉:覚悟を決めるように少し息をつく。
    沢村 秀吉:「自分が普通とは違う、ってことは分かってたから」
    沢村 秀吉:「ああ、やっぱりそうだったんだな……って」
    沢村 秀吉:「納得した」
    沢村 秀吉:「……悪い、参考にならないか」
    東海林 エマ:ふるふると首を振る。
    東海林 エマ:「ううん。……そうだよね、もしこちら側に来た覚醒したら──衝動とは、切っても切り離せない」
    東海林 エマ:言って、あ、と袖で口元を隠す。……この少年が、恐らく強い衝動に苛まれている──というのは、あくまで推測ではあったけれど。
    沢村 秀吉:「……衝動、か」
    沢村 秀吉:自嘲を込めて笑う。
    沢村 秀吉:「もしかして、お前も聞かされてた?上から」
    東海林 エマ:「……ううん。何も、聞いてないけど」
    東海林 エマ:「でも……もしかしたらそうなんじゃないか、って。時々、思うことがあって……」
    沢村 秀吉:「そっか。……でも、ちょっと勘違いがあるよ。多分」
    東海林 エマ:「勘違い?」
    沢村 秀吉:「俺はね、エマ」
    沢村 秀吉:視線を合わせる。
    東海林 エマ:なぜか、ぶるりと背が震えた。
    沢村 秀吉:「昔、手術を受けたんだ。レネゲイド由来の衝動を抑制するためのな」
    東海林 エマ:そういう手術があることは知っている。強い衝動は、オーヴァードの社会との関わりを難しくさせるから。
    沢村 秀吉:「そして、手術は成功した・・・・・・・
    東海林 エマ:「じゃあ……その前は、もっと酷かったの?」
    沢村 秀吉:「いいや。何も変わらなかった・・・・・・・・・
    沢村 秀吉:「意味が分かるか?」
    東海林 エマ:「それって……ええと」
    沢村 秀吉:「俺は」
    沢村 秀吉:立ち上がって、エマの腕を引いて。
    沢村 秀吉:「レネゲイドなんて関係ない」
    沢村 秀吉:「生まれつきの人狼かいぶつだってことだ」
    沢村 秀吉:すぐ近くで、目を合わせる。狂気をはらんだ目を。
    東海林 エマ:困ったように、ほんの少し眉が下がる。
    東海林 エマ:同じ紅色の眼。少女のほうが少し明るくて、少年のほうが少し暗い色をしている。
    沢村 秀吉:「もっと……もう少しは」
    沢村 秀吉:「怖がるかと思ったんだけどな」
    東海林 エマ:「……怖がってほしかった?」
    東海林 エマ:「その方が……満たされるんだよね、サワムラは」
    沢村 秀吉:「ああ」
    沢村 秀吉:「俺は、お前を」
    沢村 秀吉:すぅ。息を吸う。
    沢村 秀吉:「壊したいと、いつも思ってる」
    沢村 秀吉:「なあ、エマ。怖いか?」
    沢村 秀吉:「怪物が」
    東海林 エマ:「…………怖い、って言ったら」
    東海林 エマ:「エマが、そういう顔をしたら。サワムラ、嬉しい?」
    沢村 秀吉:「俺がどう思うかじゃない」
    沢村 秀吉:「お前が。どう思ってるか」
    沢村 秀吉:「……聞かせてくれ」
    東海林 エマ:「……訊かなくったって、分かるくせに。言わせたいんだ」
    東海林 エマ:ぽす、と。少女の顎が少年の肩に乗った。
    沢村 秀吉:わかんねえよ。
    東海林 エマ:背伸びをして、捕まえられてない方の腕を少年の背にやって、ぽん、ぽん、とあやすように叩く。
    沢村 秀吉:身体の震えは、あるいは。少女の方にも伝わってしまっただろうか。
    東海林 エマ:「エマ、怖くないよ。サワムラのこと」
    沢村 秀吉:「……どうして?」
    沢村 秀吉:「生まれついての、化物だぞ」
    東海林 エマ:「エマも、そうだよ」
    沢村 秀吉:「……」
    東海林 エマ:「知ってるでしょ。人間と吸血鬼の間の子。どっちつかず」
    東海林 エマ:「……でも、エマはね。人間になりたいんだ」
    東海林 エマ:「身体は、どうしようもないけど。心は、人でいたいの」
    東海林 エマ:「だから……たくさんお腹が空いても、我慢できる」
    東海林 エマ:「だれかの命で、それを満たしたくなっても。我慢できる」
    東海林 エマ:少女の感情は、いつも半分は飢えで占められている。
    東海林 エマ:「……サワムラは、どうしたい?」
    東海林 エマ:「エマは、オーヴァードだし。半分化け物だから、丈夫だよ」
    東海林 エマ:「どうしても、そうしたいなら……力になってあげられる」
    沢村 秀吉:ああ。
    沢村 秀吉:綺麗だ。
    沢村 秀吉:この少女の心は、いつだって美しい。
    沢村 秀吉:だから壊したい。
    沢村 秀吉:無茶苦茶にしてやりたい。
    沢村 秀吉:その献身を、美しい心を。
    沢村 秀吉:この手で踏みにじってやりたい。
    沢村 秀吉:「エマ……」
    沢村 秀吉:一度、肩に置かれた顎を離して。正面から見据えて。
    沢村 秀吉:ゴツン!
    沢村 秀吉:──勢いよく頭突きした。
    沢村 秀吉:「おばか」
    東海林 エマ:「ぇうっ」
    東海林 エマ:額を押さえて呻く。
    東海林 エマ:「本気だったのに……」
    沢村 秀吉:「思春期の少年にその……そういうこと言うんじゃありません!」
    沢村 秀吉:「ドキドキしちゃうでしょ、ったく」
    沢村 秀吉:顔を真赤にして視線を逸らす。
    東海林 エマ:「真剣に話してたつもりなのに……」
    沢村 秀吉:「お前は」
    沢村 秀吉:「真剣に、怖くないってそう言ったわけだ」
    沢村 秀吉:「身も心も怪物の俺のことを」
    東海林 エマ:「当たり前」
    沢村 秀吉:「じゃあさ」
    沢村 秀吉:「なんでお前は、自分のこともそう見れないわけ?」
    東海林 エマ:きょとん、とする。
    沢村 秀吉:「お前は。心が怪物の俺のことも」
    沢村 秀吉:「怖くないって思ってくれるんだろ」
    沢村 秀吉:「だったらお前も、怖くないだろ」
    沢村 秀吉:「もし……たとえ、万が一」
    沢村 秀吉:「お前が心まで吸血鬼になってしまったって」
    沢村 秀吉:「お前は変わらないよ」
    東海林 エマ:「……そう、かな」
    沢村 秀吉:「そうだ。保証する」
    沢村 秀吉:「誰かのために自分を抑えられるお前は」
    沢村 秀吉:「どこまで行っても優しいエマのままだ」
    東海林 エマ:「それなら、サワムラだって」
    東海林 エマ:「頑張れてる、から。優しいと……思うよ?」
    沢村 秀吉:「……うん」
    沢村 秀吉:なんのために頑張ってるのか。は。
    沢村 秀吉:恥ずかしいから言わない。
    東海林 エマ:「なんか、変な遠回りしちゃった気がするな」
    東海林 エマ:「二人とも、知ってたのに言わないままで」
    沢村 秀吉:「この話もな。……結局、俺が言いたいことはだな」
    沢村 秀吉:「俺も、お前を怖がらないよ」
    沢村 秀吉:「だから、好きにしろ。……って、話」
    東海林 エマ:「……ん」
    沢村 秀吉:「お前の能力をみんなに明かしたのは俺だ」
    沢村 秀吉:「何かあったら、責任は俺にある」
    東海林 エマ:いそいそと離れて、多少使えそうな厚い瓶やら凍った薬瓶やらをリュックに詰め込みつつ頷く。
    沢村 秀吉:「それぐらいは取らせろよ」
    沢村 秀吉:どちらを選んだって、きっとお前は罪悪感に苦しむんだから。
    沢村 秀吉:「それでフェアだ。相棒として」
    東海林 エマ:(みんな、『責任は自分にもある』って……同じこと言うな)
    東海林 エマ:なんだかおかしくなって、ほんの少しだけ唇の端が吊り上がる。
    沢村 秀吉:「……なんだよ」
    東海林 エマ:「エマね」
    東海林 エマ:「日向子ちゃんのこと、助けたいって思うよ」
    沢村 秀吉:「うん」
    東海林 エマ:「それが、たとえエゴだとしても」
    東海林 エマ:「外の世界を見てほしいと思う。いっぱい美味しいもの食べて、同じ年頃の子と遊んで、勉強して」
    東海林 エマ:「……それからなら、恨まれたっていい」
    東海林 エマ:世界はもう少し、暖かくて広いのだと。知ってほしいから。
    沢村 秀吉:「あの子は、人を恨むような子じゃないと思うけど」
    沢村 秀吉:「そんときゃ一緒に恨まれよう」
    東海林 エマ:「うん、その時はよろしく」
    東海林 エマ:「相棒だからね」


    GM:──ジャームの生き残りがいないかの捜索と、利用可能な資源が無いかの探索。
    GM:ふたつを並行して、あなたは、一階廊下を歩いて行く。
    GM:このあたりは特に、外の風が強く吹き込んでいる。
    GM:何故か。
    GM:体育館へ繋がる小廊下部分は、屋外に面しているからだ。
    GM:普段はきっと、体育館側と校舎側、双方の扉を閉めて風を防いでいるのだろうが、
    GM:今、その扉は開け放されていて、外気も雪も好き放題に吹き込んでいる。
    霧崎 零斗:「……冷える訳だ」
    春日 祈:「だね」
    春日 祈:廊下の掲示物を指でひっかく。
    春日 祈:分厚い氷に覆われて、壁から引き剥がすことも出来ない、何かのプリント。
    春日 祈:「特に面白いことは書いてない」
    霧崎 零斗:「確かに、ここにはあったんだろうな。俺たちの知らなかった日常が」
    霧崎 零斗:「さして面白くもなくて、けど無くてはならないものが」
    春日 祈:「……たぶんね、でも」
    春日 祈:「いきなり、ぜーんぶ無くなっちゃった」
    霧崎 零斗:自らの服の胸のあたりを握りしめる。
    春日 祈:ナイフをポケットから取り出し、氷をかりかりと削る。
    春日 祈:そのうち、閉じ込められていたプリントが上の方に出てきて、
    春日 祈:……氷と同じ質感で、やはりナイフに削られて、ばらばらになる。
    霧崎 零斗:「無くなってしまったものを守ることができたら良いのにな」
    春日 祈:「……考えたこともなかったなぁ」
    春日 祈:「無くなったら、それは……仕方がないものなんだって」
    霧崎 零斗:零をすくうなど、無理な話だ。
    霧崎 零斗:「俺も仕方ないものだと判断している」
    霧崎 零斗:「……だが、今の俺は、それでもと思っている」
    春日 祈:「ふぅん」
    春日 祈:「……なんか、ちょっと気持ち悪い」
    春日 祈:「いきなり素直になったみたいで……」
    霧崎 零斗:「脳神経に異常が発生しているだけだ……ただ」
    霧崎 零斗:「ああ、非合理的にさせられていると言うべきだな」
    霧崎 零斗:「俺が泣こうが喚こうが現実は何一つ変わらない」
    霧崎 零斗:「このろくでもない今を変えられるものは唯一つ、銃弾……だった」
    春日 祈:「でもさ、霧崎」
    霧崎 零斗:「ただ、銃弾に日向子ちゃんは救えない」
    霧崎 零斗:「なんだ?」
    春日 祈:「……うん」
    春日 祈:「同じこと、言おうとしたの」
    春日 祈:「銃弾が無かったら、私達はここまで来られなかったけど」
    春日 祈:「もう、銃弾だけじゃ、どこにも進めないって」
    春日 祈:「……けどさぁ」
    春日 祈:「どうしたらいいんだっけ」
    春日 祈:「銃弾を使わないで前に歩く、脚の動かし方って」
    霧崎 零斗:その問いにはしばし黙り込む。彼にはそれが直感で分かる。
    霧崎 零斗:だが、その答えが、本当に今の自分たちの納得につながるかは別だ。
    霧崎 零斗:拳を握りしめて、上を向いて。
    霧崎 零斗:「……みんな、迷ってる」
    霧崎 零斗:「気づいたんだよ、お前が居ない間に」
    春日 祈:「うん」
    霧崎 零斗:「迷ってないように見えた父さんも悩んでいた。今回一緒のあの二人も、タンブラーピジョンも、この村の人たちも、悩み、迷っている」
    春日 祈:「……そっか」
    春日 祈:「久しぶりだからピンと来なかったけど、これ、迷ってるんだよね」
    霧崎 零斗:「悩み苦しみを捨てないって……大事なんじゃないか?」
    春日 祈:「……気にして疲れて、苦しむのは〝体力の無駄〟だから」
    春日 祈:「思考に迷いが挟まらないように、私達はやってきたんだ」
    春日 祈:「けど、それ」
    春日 祈:「失敗、だったのかな」
    霧崎 零斗:「いや、失敗なんかじゃない」
    霧崎 零斗:「今、その行動の意義について再検討できるのならば、重要な資料と見るべきだし何より――生きている」
    霧崎 零斗:「生きているなら勝ちだ。それだけは間違いない」
    春日 祈:「……じゃあ、日向子ちゃんは」
    春日 祈:声が震えている。寒さの為ではあるまい。
    春日 祈:寒さには──もう、十分すぎる程に慣れている。
    春日 祈:「放っておけば死んじゃう、日向子ちゃんは」
    春日 祈:「日向子ちゃんを死なせちゃう私は、私達は……」
    春日 祈:「なにかに、負けるの……?」
    霧崎 零斗:「ああ、それは俺の中での負けだ」
    霧崎 零斗:「UGNの子として生まれ、UGNの子として育った以上、たとえそれが残酷な結末に終わるかもしれないとしても、最後まで可能性に賭けないのは……敗北だ」
    春日 祈:「そっかぁ」
    春日 祈:急に。
    春日 祈:廊下にごろんと大の字になって、凍り付いた天井を見上げる。
    霧崎 零斗:「……どうした、風邪ひくぞ」
    春日 祈:融ける暇もなく冷え切っているからか、氷柱の類いは、天井には無い。
    春日 祈:「私達、完璧じゃないにしても、そこそこにやってきたつもりではいたんだ」
    春日 祈:「けど、うん。……目を逸らしてただけ、っていうの、薄々わかってたかもしれない」
    霧崎 零斗:「お前は最善を尽くした……と俺は推測している」
    春日 祈:「助けるのは無理だって諦めた、たくさんのものの中に」
    春日 祈:「もしかしたら、ひとつやふたつくらい……すごく頑張ったら、どうにかなったものがあるのかもしれない」
    霧崎 零斗:「……それは否定しない」
    霧崎 零斗:否定はしないが。
    霧崎 零斗:手を伸ばす、寝転がった少女に。
    春日 祈:「でも、迷わないで切り捨てられるシステム作った。だから」
    春日 祈:「私達、ずっと負け続けてた。……だから今、苦しいんだなぁ」
    春日 祈:伸びてくる手に、一瞬だけ向く視線。
    春日 祈:目をぎゅうっと瞑り、腕で目元を擦る。
    霧崎 零斗:「そうやってここまで繋いできたんだろうが」
    霧崎 零斗:「だから、ここからだ」
    霧崎 零斗:「勝つぞ、クアッド・モード」
    霧崎 零斗:「食料を作ることも、人々の心を守ることも、砦を築くことも俺にはできないが」
    霧崎 零斗:「負けてばかりの俺だったが」
    霧崎 零斗:「――それでも、あの化け物には勝てる」
    霧崎 零斗:「お前とならな」
    春日 祈:「……勝てる?」
    春日 祈:「ぜったいの、ぜったいに?」
    霧崎 零斗:「勝つ、そのためにここに居る」
    春日 祈:「一回きり、やり直しは利かない」
    春日 祈:「それでも。ぜったいに……?」
    霧崎 零斗:「勝つ」
    霧崎 零斗:「なぜなら、それが俺の信じるUGNだからだ」
    春日 祈:「…………」
    春日 祈:身体を起こす。
    春日 祈:……手を伸ばし、掴むものは、あなたの胸ぐらだ。
    春日 祈:まるで喧嘩でもするように引き寄せて、
    春日 祈:「帰れる?」
    春日 祈:あなたの胸元に、顔をうずめる。
    霧崎 零斗:「帰る。お前とな」
    霧崎 零斗:力強く告げて、抱きしめる。
    春日 祈:「ジャンクフードたべたい」
    春日 祈:「コンビニの菓子パンとか、お弁当とかたべたい」
    霧崎 零斗:「俺のおごりだ」
    霧崎 零斗:「一杯食え。体壊さない程度にな」
    春日 祈:「服と靴も欲しい」
    霧崎 零斗:「よし、渋谷にでも買いに行こう」
    春日 祈:「もっと薄手のかわいい服……」
    霧崎 零斗:「春にぴったりのやつ、だろ?」
    春日 祈:「うん」
    春日 祈:「……滑り止めとか、どうでもいいから」
    春日 祈:「軽くてお洒落なブーツが欲しい」
    霧崎 零斗:「ああ、そうしよう」
    春日 祈:「それで」
    春日 祈:「それでね?」
    春日 祈:「……ゆっくりと歩いて、お花見にいきたい」
    霧崎 零斗:「良いな、花見。俺も行きたい」
    春日 祈:「暖かい、晴れの日に……」
    春日 祈:襟を掴む手が、肩が、小さく震えている。
    春日 祈:声も掠れて、やがて、言葉として聞き取れない程度になった。
    春日 祈:それでもどうにか。鼻を啜って、ずるずると酷い音を立てつつ、どうにか絞り出す言葉は。
    霧崎 零斗:――分かった。
    霧崎 零斗:腕の中で小さく震える少女に、思う。
    春日 祈:「たすけて」
    霧崎 零斗:――抱きしめるというのはこういうことだ。
    春日 祈:「日向子ちゃんも、みんなも、私も」
    春日 祈:「全部、たすけて」
    霧崎 零斗:「当たり前だ」
    霧崎 零斗:ぬくもりを預けるように、強く、優しく、抱きしめながら。
    春日 祈:子供がしばらく泣きじゃくる。
    春日 祈:風の吹き込む冬の廊下が、少しだけ暖かさに満たされていた。


    GM:──あなた達の探索が終わる。
    GM:体育館前廊下。
    GM:そこに4人の、10代の少年少女が集まる。
    春日 祈:「出たこと無いからわからないんだけどさ、ほら」
    春日 祈:「何かの式の時の〝生徒入場〟って」
    春日 祈:「こういう所で待機してるんだろうね」
    東海林 エマ:「二列に並ぶやつ」
    霧崎 零斗:「じゃあ卒業式だな」
    沢村 秀吉:「行くか。先生が待ってる」
    東海林 エマ:保健室の更に奥。一つの教室に飾られていた写真──川辺 義秋が、ここで教師をしていたという過去を示していた。
    東海林 エマ:あの時から時が止まったのだとしたら、この体育館はきっと、彼の教え子の晴れ舞台"だった"のだろう。

    GM:体育館の中は、屋根と壁があるだけで、さして屋外と変わらぬ有様であった。
    GM:壁も床も満遍なく凍てついていて、そこかしこに雪が吹きだまりを作っている。
    GM:ジャームの姿は無い。片付けられたとみるべきか。
    GM:椅子が幾つも並べられているのは──これは、当時からそのままという訳ではないだろう。床の雪に残る跡でわかる。
    GM:そして、正面ステージの上では。
    川辺 義秋:「──UGNという組織の在り方については、門外漢が口を挟むことでもありませんが」
    川辺 義秋:「まさか一生涯、戦う訳でもないのでしょう。学歴はどうなんですか、学歴は」
    鏑木 鵠:「あっ、はい、えーと。……学歴、ありません」
    川辺 義秋:「それは良くない。確かに年齢的に躊躇うことはあるでしょうが、定時制という選択も」
    鏑木 鵠:「あ、あははは」
    GM:校長やら来賓やらが使っていたのだろうパイプ椅子に腰掛けて、何やら話し込んでいる2人の姿。
    鏑木 鵠:「あっ」
    東海林 エマ:「お取り込み中ですか」
    鏑木 鵠:壇上から、救いを求めるような目があなた達を見る。
    川辺 義秋:「……来ましたか」
    霧崎 零斗:「……ええ」
    川辺 義秋:「何も無かったでしょう。ひとの命を繋ぐようなものは」
    沢村 秀吉:「残念ながら。医薬品の類は使えそうにありませんでした」
    沢村 秀吉:「ですから、日向子ちゃんを助けるには──」
    川辺 義秋:「わかりきったことです」娘を腕に抱いたまま、椅子の上で脚を組み直す。
    川辺 義秋:「──そして」
    鏑木 鵠:「……………………」
    鏑木 鵠:そっと椅子から立ち、ステージから降りて、
    鏑木 鵠:体育館に置かれた生徒側の椅子──そのうちの一つに腰掛ける。
    川辺 義秋:「もう、諦めはつきましたか」
    霧崎 零斗:「いいえ、諦められません」
    東海林 エマ:ふるふる、と首を振る。
    沢村 秀吉:「俺たちは、諦めないことにしました」
    沢村 秀吉:「義秋さん、貴方にも」
    沢村 秀吉:「まだ諦めてほしくありません」
    川辺 義秋:「……ふー」
    川辺 義秋:細く長く息を吐き出し、また脚を組み替える。
    川辺 義秋:「おかけなさい」
    川辺 義秋:「少しだけ、話を聞きましょう」

    GM:最後の情報収集です。
    GM:情報、というのはただしくないかもしれません。
    GM:※【説得】 目標累計値20 《交渉》
    GM:目標累計値。これはつまり、複数回、複数人で挑んだ場合、その達成値は累積するということです。
    GM:加えて事前の情報開示により、すでに10点の蓄積がなされたところから判定は開始されます。
    GM:無論、複数回──つまり再挑戦の場合は、シーンへの再登場を要求しますが。
    GM:さて。
    GM:このシーンで、判定の手番が残っているのは……どなたかな?
    沢村 秀吉:私と霧崎君かな
    霧崎 零斗:らしいな……
    霧崎 零斗:行くか……サワムラ
    沢村 秀吉:はいよ!私から行っていいかな
    霧崎 零斗:どうぞ!
    東海林 エマ:がんばれ~
    沢村 秀吉:では交渉します!
    沢村 秀吉:2DX+0+0@10 交渉
    DoubleCross : (2DX10) → 8[6,8] → 8

    GM:ふふ、霧崎くん
    GM:君はシーンの最初の最初に行動しているのだ
    沢村 秀吉:あっそっか
    霧崎 零斗:あっ
    沢村 秀吉:じゃあ私だけか!
    GM:そのとおり!
    霧崎 零斗:倒しまくってたわ、ジャームを
    沢村 秀吉:残り2か
    GM:そして出目は8……累計は18だ
    GM:さて
    GM:諦めるかな
    GM:それとも誰かが再登場して挑むかな?
    霧崎 零斗:侵食的ににエマちゃんだと思う!
    東海林 エマ:じゃあ出る
    霧崎 零斗:ロール的にも!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 1)増加 (71 → 72)
    東海林 エマ:えらいぞ省エネ
    沢村 秀吉:えらい
    霧崎 零斗:再登場の神じゃん
    東海林 エマ:2dx+18>=20
    DoubleCross : (2DX10+18>=20) → 10[2,10]+7[7]+18 → 35 → 成功

    東海林 エマ:ふんっ
    沢村 秀吉:つよ
    東海林 エマ:累計35!
    GM:なにがおこったってくらいの出目になっとる
    霧崎 零斗:分回ってる
    GM:なんか……めちゃくちゃクリティカルなことを言ったりしたんだな……
    GM:では
    GM:説得は成功するでしょう
    GM:様々なものを諦めきった川辺 義秋ですが、そうですね
    GM:案外、諦めたがってはいないのかもしれません

    沢村 秀吉:「義秋さん」
    沢村 秀吉:「あなたがこの5年で、どれだけの絶望を味わったか」
    沢村 秀吉:「俺にはわかりません。想像もつかない」
    沢村 秀吉:「あなたは前に、もう終わりにしようと。すべて諦めたように言っていたけど」
    沢村 秀吉:「違うでしょう」
    沢村 秀吉:「あなたはまだ諦めてない……いや」
    沢村 秀吉:「諦めたくないと、そう思ってる」
    川辺 義秋:「……それで?」
    川辺 義秋:「仮に、そういった個人的な考えがあったとして」
    川辺 義秋:「日向子をオーヴァードにするべきかどうか。その話は、別です」
    川辺 義秋:「私達はリスクを避けて、かろうじてここまで来た」
    川辺 義秋:「今さら、たったひとりの為に、余計なリスクを背負えというのですか」
    沢村 秀吉:「だったら」
    沢村 秀吉:「どうして今、俺たちの話を聞いてくれるんですか」
    川辺 義秋:「…………」
    川辺 義秋:答えに窮したというよりは、
    川辺 義秋:何も考えていなかった──というような、少しの沈黙。
    川辺 義秋:「さほどの理由はありません」
    川辺 義秋:「が、そうですね。双方の同意を得ずに実行したことは」
    川辺 義秋:「必ず後に禍根を残す。そう学んでいるからでしょうか」
    川辺 義秋:「私達の共同体が、まがりなりにも形を保ってきたのは、きっと」
    川辺 義秋:「事前に、方針の選択について合意をし、それに沿って運営されてきたからなのでしょう」
    沢村 秀吉:「それだけじゃない」
    川辺 義秋:「……ふむ?」
    沢村 秀吉:「あなた達が今日まで、ギリギリでも生きてこられたのは」
    沢村 秀吉:「日向子ちゃんが居てくれたから。それも、大きかったはずだ」
    沢村 秀吉:「絶望的な状況でも、明るく笑っていてくれるあの子が居たから」
    沢村 秀吉:「だから、最後の一線を保っていられた。そういう人は大勢いるはずだ」
    沢村 秀吉:「貴方だって」
    川辺 義秋:「買いかぶりです、それは──」
    川辺 義秋:「それは、過大評価と──」
    東海林 エマ:「そんなこと、ないです」
    春日 祈:「ううん、そうじゃないです」
    鏑木 鵠:くすっ…… 期せずして重なった二人分の声に、思わず笑声を漏らす。
    東海林 エマ:顔を見合わせる。だが、同じ気持ちのはずだ。
    東海林 エマ:「日向子ちゃんの周りは、笑顔に溢れてて。それに──エマ、聞いたんです」
    東海林 エマ:「おばあちゃん達が、日向子ちゃんが学校に行けたらいいのに、って言ってるの」
    霧崎 零斗:エマの方を見て、静かに頷く。
    春日 祈:「私は──任務の関係で少し、小学校にいたことがあるくらいだけど」
    春日 祈:「結構楽しいなって思いました」
    春日 祈:「もし、そこにずっと居ていいんだって言われたら──幸せだったのかも」
    川辺 義秋:「そうだったら、というのは……仮定の話だ」
    川辺 義秋:「今は、そう、なっていない」
    川辺 義秋:「ならなかったんですよ。だから私達は、ここにいる」
    川辺 義秋:「ここで、もう……十分に苦しんできた」
    霧崎 零斗:「仮定以外の話もあります。可能性の面で言えば、ブラム・ストーカーの力を使った治療に重要なのは術者と治療を受けるもののメンタル面です」
    霧崎 零斗:「日向子ちゃんは希望を捨ててない」
    霧崎 零斗:「東海林エマ――ハートステイクも、誰かを癒やしたいと思っている」
    東海林 エマ:妙に詳しいな、と少し首を傾げながらも。それには深く頷く。
    霧崎 零斗:「俺自身、ハートステイクのようなブラム・ストーカーに致命傷を治療してもらったことがあります」
    川辺 義秋:「やめなさい。……他者の気持ちを騙るのは」
    川辺 義秋:……少しばかり、強い声音。
    霧崎 零斗:「……失敬、推論が過ぎました」
    霧崎 零斗:「ただ、治療そのものが無事に成功した実例はここにあるということです」
    霧崎 零斗:それだけ言って一歩下がる。
    川辺 義秋:「──日向子が、希望を捨てていない?」
    川辺 義秋:「そもそもあなた達は、日向子が……いいえ」
    川辺 義秋:「私達が、今まで過ごしてきた日々を知っているのですか」
    川辺 義秋:「まだランドセルを背負ってもいなかった日向子が」
    川辺 義秋:「そもそも世界に希望を抱けるほど、世界を知りもしないあの子が」
    川辺 義秋:「何を考えているかなど、どうしてわかる」
    川辺 義秋:日向子を椅子に下ろし、演台の前に立つ。
    川辺 義秋:「私達の痛みを知らないまま、幸福な夢ばかりを語らないでください」
    川辺 義秋:「それが、どれだけ残酷なことか──」
    沢村 秀吉:「義秋さん」
    沢村 秀吉:「さっき、鏑木さんと。何を話していたんですか?」
    川辺 義秋:──静かな語り口が綻び、感情が滲み出した頃合い。
    川辺 義秋:問いを向けられ、深く息を吸い、吐き出す。
    川辺 義秋:「大したことでは──」
    鏑木 鵠:「進路指導をされてまして……その」
    鏑木 鵠:「特に学校通ってないと言ったら、せめて定時制くらいは出ておけと」
    鏑木 鵠:「高卒の資格があるか無いかで選択肢は変わるからだそうで」
    鏑木 鵠:あはは……とばつが悪そうに言う。
    川辺 義秋:「──まぁ、そういうことです」
    沢村 秀吉:「貴方だって」
    沢村 秀吉:「仮定の話をしてる。ここから出た後のことを」
    沢村 秀吉:「……オーヴァードの俺たちにも、親身になって」
    川辺 義秋:「……あなた達は、私達とは別だ」
    川辺 義秋:「やがてここからいなくなる。そういうひと達でしょう──」
    春日 祈:「出られるとしたら、同じタイミングですよ」
    春日 祈:「彼らが脱出できるとしたら、当然」
    春日 祈:「私達も一緒に、外に出られます。……帰れます」
    川辺 義秋:「…………」
    霧崎 零斗:静かにうなずく。
    霧崎 零斗:そのために、ここに来たのだから。
    川辺 義秋:口を閉ざす。喉奥から聞こえたのは、唸るような、呻くような声。
    東海林 エマ:「……日向子ちゃんが」
    東海林 エマ:「もし──日向子ちゃんが。生きたい、って思ってるなら。それが、分かるとすれば」
    東海林 エマ:「どうですか」
    川辺 義秋:……考えていなかった事。考えてこなかった事が、あまりにたくさん有る。
    春日 祈:考えようとすれば、疲弊するからだ。
    川辺 義秋:集団を可能な限り長く存続させる。それだけを考え、保守的になったから──
    春日 祈:事態を大きく改善する術など無いのだと学んだから──
    川辺 義秋:諦めて、余計なことを考えなくなった。
    川辺 義秋:誰も希望など持っていないのなら、せめて。
    川辺 義秋:苦痛を増やさず、静かに、心安らかに、
    川辺 義秋:終焉を迎えられればそれで良い──
    川辺 義秋:「……だから」
    川辺 義秋:「他人の考えを、騙るなど……」
    東海林 エマ:「エマは、分かる」
    東海林 エマ:断言する。ゆっくりと、物言わぬ日向子の下に歩み寄る。
    GM:ステージ脇の階段。
    GM:薄い氷の上に、真新しい足跡がある。
    GM:壇上に立つと、広い筈の体育館が、少し狭くなったように感じるだろう。
    GM:思ったより奥行のある壇上。日向子は、椅子の上に寝かされている。
    GM:毛布に巻かれて眠っている。
    GM:麻酔が効いているからだろう。
    東海林 エマ:悪い夢でも見ているのか。痛みはないはずなのに、目尻には涙が浮かんでいる。
    東海林 エマ:その雫を、指先で掬い取った。
    東海林 エマ:ブラム=ストーカーシンドロームの発症者には、一部このような能力を有するものがいる。
    東海林 エマ:《ブラッドリーディング》……その者の血や体液から、記憶や感情を読み取る能力。
    東海林 エマ:ごく僅かな少女の"言葉"ごと、指先を咥え込んだ。
    東海林 エマ:(……教えて、日向子ちゃん)
    GM:《知覚》による判定をどうぞ。目標値は、ここでは敢えて設定をしません。
    東海林 エマ:(4+1)dx
    DoubleCross : (5DX10) → 9[3,4,5,8,9] → 9

    GM:……では。
    GM:問いを、言葉にしてください。
    GM:彼女の感情はきっと、それに応えるでしょう。
    東海林 エマ:(……日向子ちゃんは、まだ。生きていたい?)
    東海林 エマ:(今までとは、違う身体になるかもしれない。辛いことも、あるかもしれない)
    東海林 エマ:(でも……生きていたら。もっと色んなことに出会える)
    東海林 エマ:(……もし、日向子ちゃんがそれを望むなら、エマは)
    東海林 エマ:(怪物だって、言われてもいい。だから……教えて)
    川辺 日向子:応じたものは、言葉ではなかった。
    川辺 日向子:もしかするとそれは、すり切れたビデオテープの映像だとか、
    川辺 日向子:雨に濡れた雑誌の1ページのような、不鮮明なものであったかもしれない。
    川辺 日向子:あなたが見たものは、晴れ空の下を歩く少女の姿。
    川辺 日向子:いっぺんの曇りもない笑顔を浮かべながら、どこまでも続いていきそうな、広い道を歩いている。
    川辺 日向子:道の後方には、そこだけいやに解像度の高い、田舎の村があり、
    川辺 日向子:進む先はおもちゃ箱のよう。都会のような、遊園地のような、夢の中の景色のような。
    川辺 日向子:ひとつ言えるのは、そのどちらも、眩く輝いているということだ。
    川辺 日向子:ずっと昔に見た景色も、まだ見たこともない景色も、
    川辺 日向子:どちらも愛しいものとして、日向子はずっと、胸の中にとどめている。
    東海林 エマ:言葉ではなかった。それでも──
    東海林 エマ:「……そっか。そう、だよね」
    東海林 エマ:「いつか、楽しいことに、綺麗なものに出会えるって信じて……」
    東海林 エマ:表情は動かないままに、声が歪んで。つう、と一筋、泪が伝った。
    川辺 義秋:「いいえ……あてずっぽうなら、なんとでも──」
    春日 祈:「ううん」
    春日 祈:「オーヴァードには、そういう力があります……証明は難しいけど」
    鏑木 鵠:「本当です。……ね?」
    鏑木 鵠:沢村に、霧崎に、問いかける。
    沢村 秀吉:こくりと頷いて。
    霧崎 零斗:「知ったような口を叩く、と昔から言われます」
    沢村 秀吉:「リスクとか、理屈とか」
    霧崎 零斗:申し訳ありません。と頭を下げる。
    沢村 秀吉:「彼女を救う理由・・なら、いくらでも用意できます」
    沢村 秀吉:「だから後は、貴方に」
    沢村 秀吉:「願ってほしい」
    沢村 秀吉:「あの子の、明日を。……お願いします」
    東海林 エマ:「お願いします」 泪を袖で払って、頭を下げる。
    川辺 義秋:言葉が出ないでいる。
    川辺 義秋:演台の前に立ち、両手を握り締め、棒きれのように突っ立って、
    川辺 義秋:諦める為の言い訳を。
    川辺 義秋:自分を諦めさせる為の言い訳を、絞りだそうとしている。
    川辺 義秋:今までも、たくさんを諦めてきた。
    川辺 義秋:今さら自分だけが、自分達だけが──
    鏑木 鵠:「先生」
    川辺 義秋:「っ」
    鏑木 鵠:「一回だけ、ね?」
    鏑木 鵠:「一回だけ、学生さん達の好きなようにやらせてみませんか」
    鏑木 鵠:「ここは、ほら、学校ですから」
    鏑木 鵠:「成功にせよ失敗にせよ、挑戦できる場所じゃないですか」
    川辺 義秋:「────────」
    川辺 義秋:「──もし」
    川辺 義秋:「もし、上手くいかなかった、その時は」
    川辺 義秋:「……私を止めないでくれますか」
    霧崎 零斗:「俺は止めません」
    霧崎 零斗:「お任せします」
    霧崎 零斗:そう言って他のみんなの方を見る。
    沢村 秀吉:「……分かりました」
    東海林 エマ:「エマ、がんばるから」
    東海林 エマ:「ちゃんと成功したら……笑って。迎えてあげてください」
    川辺 義秋:「わかった」
    川辺 義秋:「……やって、みなさい」
    霧崎 零斗:(……万が一の時は、俺が)
    春日 祈:椅子を幾つかひっつかみ、壇上に駆け上がる。
    春日 祈:パイプ椅子を拡げて並べ、座面で簡易的なベッドを作り、
    春日 祈:「東海林さん!」
    東海林 エマ:覚悟を決めたように、頷いて。日向子ちゃんを抱えてその上に寝かせる。
    沢村 秀吉:「エマ、頼む」
    東海林 エマ:エフェクトの使用を宣言します。
    GM:その内容は。
    東海林 エマ:"ハートステイク・リップ" 《抱擁》 対象:単体 射程:至近 侵蝕[+2]
    東海林 エマ:非オーヴァードのみ対象 対象の死亡を回復し、HP1まで回復させる 但しオーヴァードに覚醒する可能性がある。詳細はGMが決定する。
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を2(→ 2)増加 (72 → 74)
    東海林 エマ:難易度は自動成功のため、判定はありません。
    GM:よろしい。では
    GM:実行を、どうぞ。
    東海林 エマ:対象は川辺 日向子ちゃん。
    東海林 エマ:麻酔によって昏睡状態にある少女の包帯を剥ぎ取った。
    東海林 エマ:雪国の子だからだろうか。その肌は、自分とはまた異なる透き通るような白さを誇っていた。
    東海林 エマ:そこに刻まれた、生々しく痛々しい傷。跳弾を受けたと言っていたか。
    東海林 エマ:深々と突き刺さった弾丸が、太い血管を損傷してそのまま埋まっているらしい。結果的に大量出血を免れてはいるが、そう長くは保たないだろう。
    東海林 エマ:「……ごめんね。少しだけ、我慢して」
    東海林 エマ:懐から取り出したナイフを、自分の掌に当てた。
    東海林 エマ:……震えている。ナイフを握る手も、押し当てた手も。全部。
    東海林 エマ:(…………決めたんだ。自分の意志で、助ける、って)
    東海林 エマ:──ざく、と。
    東海林 エマ:肉の裂く音を伴って、深々と刃物が少女の手に突き刺さった。……当然、そうすればオーヴァードなれど流血は免れない。
    東海林 エマ:「……く、ぅ」 痛みを堪えながら、瞬く間に真っ赤に染まった掌を日向子の傷口に押し当てた。
    東海林 エマ:吸血鬼という、人を糧にして生きる者の血液。その性質を受け継いだ捕食者の血が、我先にと少女の肉体へと這入り込んでいく。
    川辺 日向子:──傷口に注がれる、他者の血。
    川辺 日向子:血管に入り込み、心臓の拍動に押されて流れ、少しずつ、少しずつ
    川辺 日向子:本来の──今なお失われて行こうとする血液を侵蝕し、喰らいながら這い進む。
    川辺 日向子:……ウィルスに汚染された血液か?
    川辺 日向子:……それとも、いにしえから続く妖魔の血?
    川辺 日向子:いずれにせよ、東海林エマの血は、川辺 日向子を侵蝕する。
    川辺 日向子:心音が小さく、小さくなっていく──
    GM:からん
    GM:……硬質の音が、椅子の音から聞こえた。
    GM:体育館の、冬の静寂のなか、いやに良く響く、金属的な音だった。
    GM:銃弾の欠片。
    川辺 日向子:どくん
    川辺 日向子:どくん どくん どくん
    川辺 日向子:ほんの寸刻、完全に消えた筈の鼓動が──力強く、ふたたび聞こえ出す。
    東海林 エマ:少女の身体を抱きかかえたまま、顔面蒼白になっている。荒い息を吐き零しつつ──後はもう、祈ることしかできない。
    川辺 日向子:臓腑が、血管が、筋肉が、皮膚が、
    川辺 日向子:破壊された箇所が時を戻すように回復を始める。
    東海林 エマ:「…………!」
    川辺 日向子:どくん どくん どくん
    川辺 日向子:強く、一定のペースで動く心臓。塞がり、痕跡を失う傷跡。
    川辺 日向子:オーヴァードの最も一般的にして、ある種、最大の特異性とも呼べようもの。
    川辺 日向子:《リザレクト》の兆候。
    川辺 日向子:すううっ……
    川辺 日向子:意識を取り戻さぬまま、鼻から、大きく息を吸った。
    川辺 日向子:ふひゅうっ……
    川辺 日向子:吸った息をそのまま吐き出す。
    川辺 日向子:とくん とくん とくん とくん……
    川辺 日向子:心臓はそのまま、平常のペースで鼓動を続ける。
    川辺 日向子:まるで何事も無かったかのように、一定のペースで──
    春日 祈:「──身体の異形化、無し」
    沢村 秀吉:「上手くいったのか?」
    霧崎 零斗:「よし……!」
    春日 祈:「細かい計器は無いけれど、体温も心拍も普通」
    春日 祈:「確証は無いけど、でも」
    春日 祈:「ぜんぜん、証拠とか何も無いけど、でもっ」
    春日 祈:「たぶん、だいじょうぶ……っ」
    川辺 日向子:ぷぴいぃっ
    川辺 日向子:……と、間の抜けた音が鳴った。
    川辺 日向子:軽く詰まった鼻から空気が抜けて、笛のように鳴る時の、あの音だ。
    川辺 日向子:あなた達の緊張も何も全く感知せず、川辺 日向子は眠っていた。
    東海林 エマ:ぜい、ぜい、と荒い息のまま。顔だけ振り返って──少しだけ、ぎこちない笑顔を見せた。
    沢村 秀吉:「エマ!」
    霧崎 零斗:「ハートステイク……見事だ」
    沢村 秀吉:駆け寄って身体を支える。
    沢村 秀吉:「日向子ちゃん寝かせて……お前も、座れ。はやく」
    東海林 エマ:「……へ、へ。ちゃんと、できた」 Vサインを作る。
    沢村 秀吉:「ああ」
    東海林 エマ:彼女の身体を抱えていた腕をどうにか抜き、そのまま床にへたり込みかける。
    沢村 秀吉:「よく頑張った。すごいよ、お前は」
    沢村 秀吉:崩れかけた身体を支えて、ゆっくりと座らせる。
    川辺 義秋:「……あまりに、あっけない」
    川辺 義秋:「終わった、のですか?」
    川辺 義秋:「これだけで……?」
    川辺 義秋:いまだ演台の前に立ち尽くしたまま、問う。
    川辺 義秋:視線は体育館の反対側、出入り口の扉に固定されている。
    沢村 秀吉:「怖かったな」
    霧崎 零斗:「後は始めるばかりだ」
    霧崎 零斗:「全員で外に出ましょう」
    春日 祈:「うん、うん……」ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、何度も頷く。
    東海林 エマ:「怖かった……?」 沢村に問う
    沢村 秀吉:「もしもダメだったらって、思わなかったか?」
    東海林 エマ:「……言われたら、今になって怖くなってきたかも。必死だったから」
    沢村 秀吉:「……そっか」
    沢村 秀吉:手を握る。
    沢村 秀吉:「無茶させてごめん。ありがとう」
    東海林 エマ:自身の半分以上の血液を与えた。そのせいか手はすっかり冷え切って、まるで氷のようになっている。
    東海林 エマ:「ううん。サワムラと……皆が、背中押してくれたから」
    東海林 エマ:喰らい付いて、その血を貪る無様も晒さずに済んだ。お腹は空くけど、その方がいい。
    東海林 エマ:「エマの方こそ。ありがとう」
    沢村 秀吉:「頑張ったのはお前だろ」
    東海林 エマ:押し問答になりそうだな、と思った。
    東海林 エマ:「……お腹、空いちゃった。戻ろ」
    沢村 秀吉:「ああ」
    沢村 秀吉:繋いだ手から、熱を奪われていく。
    沢村 秀吉:不思議な感覚だった。
    沢村 秀吉:奪いたい。喰らいたい。そう思ってばかりだったのに。
    沢村 秀吉:今は、この少女に。少しでも何かを与えたいと。
    沢村 秀吉:そんな衝動を感じて、驚いた。
    鏑木 鵠:ぱん、ぱん、と手を強く叩く。
    鏑木 鵠:「はい! お疲れのところすいませんが、〝クアッド・モード〟!」
    春日 祈:「は、はい!」ぴしっ、と背筋を伸ばして立つ。
    鏑木 鵠:「一度、皆で拠点に戻ってください! 日向子ちゃんも連れて!」
    鏑木 鵠:「戦力的にも、士気的にも、今です」
    鏑木 鵠:「あのジャームを叩く……反撃準備を!」
    春日 祈:「……!」
    春日 祈:こくん、と頷き、それから
    春日 祈:そう……っと手を伸ばす。
    春日 祈:霧崎の左手に、右手を。
    霧崎 零斗:「ああ」
    霧崎 零斗:手と手を重ね、進む。
    霧崎 零斗:昨日と同じ今日を、取り戻す為に。
    春日 祈:ぎゅっ、と力を込めて握った手は、金属の堅さと冷たさばかり目立つけれども、
    霧崎 零斗:夢見た明日に、つなげるために。
    春日 祈:「私、勝ちたい」
    霧崎 零斗:「任せろ」
    霧崎 零斗:しっかりと、手をつなぎ。
    霧崎 零斗:「勝つ、全員でな」
    春日 祈:「ん」
    春日 祈:繋いだ手を引いて走り出す。
    春日 祈:ようやく見えてきた希望が、どこかへ消えてしまわないように──
    鏑木 鵠:「……………………」
    鏑木 鵠:「……あ、東海林さん、すいません」
    鏑木 鵠:「日向子ちゃん、お願いしますね……」
    春日 祈:──いささか、周りが見えなくなっている節はある。

    GM:ロイス取得が可能です、くわえて
    GM:加工元の資源が大量確保できたし、反撃準備の時間も稼げた。
    GM:このシーンでは調達も可能!
    沢村 秀吉:やったー!
    東海林 エマ:やったー!
    東海林 エマ:よし サワムラにこの高性能治療キットを押し付けよう 使うのだ
    沢村 秀吉:わーい!
    沢村 秀吉:ありがとう
    沢村 秀吉:使います
    沢村 秀吉:11+3d10
    DoubleCross : (11+3D10) → 11+20[10,3,7] → 31

    沢村 秀吉:ばっちり
    東海林 エマ:すごい回復するじゃん
    沢村 秀吉:沢村 秀吉のHPを16(→ 16)増加 (11 → 27)
    霧崎 零斗:よっしゃあ!
    霧崎 零斗:今こそボディアーマー!
    沢村 秀吉:シューターズジャケットでも狙うか
    霧崎 零斗:3dx>=12
    DoubleCross : (3DX10>=12) → 5[1,2,5] → 5 → 失敗

    霧崎 零斗:駄目!
    沢村 秀吉:2DX+3+0@10>=12 調達
    DoubleCross : (2DX10+3>=12) → 9[2,9]+3 → 12 → 成功

    東海林 エマ:沢村秀吉 ◯連帯感/隔意 → ◯信頼/恥辱 に感情変更。
    沢村 秀吉:成功。そのまま装備しよ
    東海林 エマ:エマもシューターズジャケット買お
    GM:おこづかいはここで使い切るのよ
    東海林 エマ:2dx+4>=12
    DoubleCross : (2DX10+4>=12) → 7[6,7]+4 → 11 → 失敗

    東海林 エマ:お小遣い1点使う! ウェポンケースにしまいます
    沢村 秀吉:こちらは以上!
    東海林 エマ:鏑木 鵠 ◯連帯感/卵…… 、 川辺日向子 ◯安堵/不安 でロイス取得。これでいっぱい
    GM:では

    マスターシーン:はなむけ


    GM:未来を諦めない若者達が駆け去っていって、体育館の中はまた静かになった。
    GM:彼はまだ演台の前に立って、虚空を凝視していた。
    GM:虚空──
    GM:いいや、体育館の正面入り口だ。
    GM:あそこから生徒達が入って来て、そして、
    GM:……だれも、あそこからは出ていかなかった。
    川辺 義秋:「……四人」
    川辺 義秋:「少なく、なりましたね」
    川辺 義秋:上着の内ポケットに手を入れ、ボロボロの紙切れを取り出す。
    川辺 義秋:演台の上に拡げたそれを、少しの間、いつもと変わらぬ仏頂面で見つめて──
    川辺 義秋:「……卒業証書」
    川辺 義秋:「右の者は、本高校の課程を全て修了したことを証する」
    川辺 義秋:「3月1日、晴待村立第一高等学校、校長代理、川辺 義秋……」
    川辺 義秋:とうに過ぎ去った日付で読み上げて、
    川辺 義秋:受取手も無いまま、掲げ持った──
    鏑木 鵠:──行き先のない賞状に、両手を添える。
    川辺 義秋:「……………………」
    川辺 義秋:「……単位が足りないのでは?」
    鏑木 鵠:「大目にみてください」
    川辺 義秋:「まったく……」
    川辺 義秋:「焚きつけにでも使いなさい。資源を無駄にしてはいけない」
    川辺 義秋:「これ以上、備蓄に拘る必要もないでしょう」
    鏑木 鵠:「……ええ、そうします」
    鏑木 鵠:「届けるべきところへ、届けないといけませんもんね」
    川辺 義秋:ステージ脇の階段を使わず、大きな段差を、だんっ、と飛び降りて
    川辺 義秋:「……複雑な心境ではありますが」
    川辺 義秋:「無事に帰れたら、礼を伝えてください」
    川辺 義秋:体育館の扉を出ていく。
    鏑木 鵠:卒業証書を持った誰かが、入って来た扉から、ちゃんと外に出て、
    GM:5年越しの卒業式が、ようやく終わった。

    クライマックス:ひかりへ


    GM:全員登場!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を1D10(→ 4)増加 (74 → 78)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (77 → 81)
    霧崎 零斗:霧崎 零斗の侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (87 → 95)

    GM:村と共に纏めて、地図から切り抜かれるように異界へ隔離された、小さな山。
    GM:神社の長い階段を登り、鳥居を潜ると、
    白い着物の女:本殿の前に、女が立っていた。
    白い着物の女:鍵も掛かっていないだろう扉の前に立ち尽くし、何かくちずさみながら、
    白い着物の女:ゆら ゆら ゆら
    白い着物の女:身体を揺らしながら、ただそこにいる。
    春日 祈:『……位置情報で到着を確認した。対象は目視できる?』
    春日 祈:通信機越しに聞こえる声。春日 祈は、拠点内からの支援準備を整えている。
    霧崎 零斗:「確認できる。また……感情が……」
    霧崎 零斗:「さっさと奴を仕留めなくては、どうにかなりそうだ」
    東海林 エマ:「またキリサキがふらふら行こうとしたら、引っ叩いてね」 沢村に。
    沢村 秀吉:「任せろ」
    霧崎 零斗:孤独、寂寥感が、這い寄ってくる。
    霧崎 零斗:だがもう引きずられない。
    沢村 秀吉:ぶんぶんと素振りして見せる。
    霧崎 零斗:「頼んだぞ」
    霧崎 零斗:笑顔が出る。
    霧崎 零斗:今は、大丈夫。
    沢村 秀吉:「……エマは本当に大丈夫か?」
    沢村 秀吉:「さっき、大分血を使ったろ」
    東海林 エマ:二人が長距離狙撃を得意とするのに対して、自分の射程はかなり短い。陽動には自分が適任だ。
    東海林 エマ:「ストック、全部飲んだからへーき」
    東海林 エマ:多分。恐らくは。
    沢村 秀吉:「……無理すんな、って言っても聞かねえんだろうなあお前」
    霧崎 零斗:「その分俺たちも体を張るだけだ」
    沢村 秀吉:「分かってる」
    東海林 エマ:「もしエマの立場なら、二人も同じこと言うでしょ」
    霧崎 零斗:「無論」
    沢村 秀吉:「ちぇっ」
    沢村 秀吉:反論できない。
    沢村 秀吉:「説教だぞ、帰ったらな」
    沢村 秀吉:「だから全員で戻るぞ」
    鏑木 鵠:『対象を目視。位置情報の中継を行います。支援砲撃用意、開始!』
    春日 祈:『支援砲撃用意。──霧崎、それからみんな、聞いて』
    霧崎 零斗:「オーケー」
    春日 祈:『白い着物のジャームは、本気になると、相当高い防御力を発揮する』
    春日 祈:『あなた達の火力で貫けるなら、それでいい。けど』
    春日 祈:『もし難しいかもと判断したら、少しだけ時間を稼いで』
    春日 祈:『氷の鎧を、はぎとってやるから』
    東海林 エマ:「奥の手がある?」
    沢村 秀吉:「了解、そっちは任せる」
    春日 祈:『あまり大きく動かれなければね──うん』
    東海林 エマ:「ほほー」 木陰に隠れて屈伸運動。
    春日 祈:『みんな、任せた』
    白い着物の女:「────────」
    霧崎 零斗:「あとは」
    霧崎 零斗:遠くの怪物を見据え。
    白い着物の女:ぐるん
    霧崎 零斗:「撃ち貫くのみだ」
    白い着物の女:顔の無い女が、あなた達へと振り向いた。
    白い着物の女:雪の上を歩む足取りは、決して軽くはない筈なのに、
    霧崎 零斗:視線を射る。
    白い着物の女:いつのまにか、近づいてきている。
    白い着物の女:舞うように掲げる両手。
    白い着物の女:指先が示すそのままに、ひゅうぅっ、と冷たい風が吹き、
    白い着物の女:それはやがて、ごうごうと、
    白い着物の女:すさまじいほどの吹雪に変わる──
    GM:──レネゲイドの力に満たされた吹雪。
    GM:それは単純な物理的衝撃以上に、そう。
    GM:極めて強力なジャームに相対した時に発生する、共鳴の如き喚起を誘発する。
    GM:衝動判定!
    GM:難易度は9だ!
    沢村 秀吉:5DX+2+2@10>=9 意思
    DoubleCross : (5DX10+4>=9) → 9[2,7,8,9,9]+4 → 13 → 成功

    沢村 秀吉:よし
    東海林 エマ:4dx>=9 衝動判定
    DoubleCross : (4DX10>=9) → 9[2,2,4,9] → 9 → 成功

    東海林 エマ:78+2d10
    DoubleCross : (78+2D10) → 78+6[2,4] → 84

    東海林 エマ:えらいぞー
    沢村 秀吉:侵食上昇は2d10ですか?
    霧崎 零斗:3dx>=9
    DoubleCross : (3DX10>=9) → 9[1,5,9] → 9 → 成功

    霧崎 零斗:暴走しなかっただとぉ!?
    GM:ふつうのやつだからそうですわね
    霧崎 零斗:95+2d10
    DoubleCross : (95+2D10) → 95+5[1,4] → 100

    沢村 秀吉:はーい
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を2d10(→ 15)増加 (81 → 96)
    沢村 秀吉:ガッツリ上がったか まあこれはこれで

    エンゲージ
    白い着物の女[12]

    10m

    霧崎 零斗[21]
    沢村 秀吉[17]
    東海林 エマ[11]

    ラウンド1


    GM:セットアップ!
    沢村 秀吉:なし
    白い着物の女:《虚無の城壁》+《氷の城塞》+《氷熱の軍団》
    白い着物の女:ラウンド中、攻撃力+12。そしてガード値+12&HPダメージ-12
    霧崎 零斗:セットアップはなし!
    東海林 エマ:"ハートステイク・ギフト" 《鮮血の奏者》《コズミックインフレーション》  侵蝕[+6]
    東海林 エマ:対象:範囲(選択) 射程:視界 HP1点消費 ラウンド間、対象の攻撃力[+18]
    東海林 エマ:対象は味方エンゲージの全員!
    東海林 エマ:東海林 エマのHPを1(→ 1)減少 (24 → 23)
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を6(→ 6)増加 (84 → 90)
    GM:では
    GM:手番! の前に
    白い着物の女:《孤独の叫び》+《傲慢な理想》
    白い着物の女:オートアクションでこの2つのEロイスを同時に使用する
    沢村 秀吉:なにっ
    霧崎 零斗:ばかな!?
    白い着物の女:対象はあなた達全員だ。傲慢な理想で範囲選択化された孤独の叫びの効果は、
    白い着物の女:対象は……〝白い着物の女〟に対するロイスを即座に取得する!
    白い着物の女:もっともロイス欄に空きがあればの話だがね
    白い着物の女:……ある? ある?
    霧崎 零斗:ありますねえ~~~~~~
    霧崎 零斗:ラストワンが!
    東海林 エマ:ないよー
    沢村 秀吉:あります 1枠
    白い着物の女:ふふ、男はセクシー着物美女に弱いのね
    白い着物の女:では私へのロイスを取得してください 感情は指定しません
    霧崎 零斗:白い着物の女 P:畏敬/○N:寂寥
    霧崎 零斗:これで!
    沢村 秀吉:白い着物の女 P:殺意/○N:執着
    沢村 秀吉:これで!
    GM:よろしい
    GM:ではイニシアチブ、行動順は──
    白い着物の女:はーい Eロイス《怯えのまなざし》
    霧崎 零斗:なにっ!?
    白い着物の女:私に対するロイスを取得しているキャラクターを対象とし
    白い着物の女:バッドステータス暴走を与えます
    沢村 秀吉:ひぃーっ
    東海林 エマ:悪辣コンボ!
    沢村 秀吉:暴走します
    霧崎 零斗:暴走!
    GM:ということでいきなりだが演出だ
    霧崎 零斗:物思っちゃう~!
    白い着物の女:ゆら ゆら ゆら 身体を揺らす白い影。
    白い着物の女:目も口も、ひとの顔にあるような部位は存在しない。
    白い着物の女:鏡面の頭部に映るものは、そのままあなた達の姿だ。
    白い着物の女:……その姿が、あなた達の顔が、妙に寂しげに歪んだ──ような気がする。
    霧崎 零斗:「……ッ!」
    霧崎 零斗:「そうか、あれは、いや、あれも……」
    霧崎 零斗:「ぐっ、くそっ……こんなことばかり……」
    白い着物の女:「こっち来ておくれ」
    白い着物の女:「さびしかろ」
    沢村 秀吉:「……これ、は」
    霧崎 零斗:迷うな、揺れるな、情緒を持つ心に、その洞察力は毒でしかない。
    霧崎 零斗:「分かっているが……相性が悪い……!」
    東海林 エマ:「また、キリサキが変になってる……!」
    沢村 秀吉:ずっと響いてきた声とは別に。ささやくような声が聞こえる。
    霧崎 零斗:頭痛を堪えながら、なおも相手を睨む。
    沢村 秀吉:10年越しの感覚だった。
    白い着物の女:寂しさ。心の隙間。
    白い着物の女:隙間はそのまま、隙となる。
    沢村 秀吉:レネゲイドの励起による、衝動の喚起。
    白い着物の女:女の寂しげな歌声は、おぞましい姿と裏腹に、きれいなのだ。
    沢村 秀吉:「うるさい」
    沢村 秀吉:「うるさい……!」
    沢村 秀吉:霧崎を引っ叩く余裕もない。
    東海林 エマ:「二人とも、何かされた……?」
    白い着物の女:否定も、反応だ。
    白い着物の女:耳を貸せば最後。
    白い着物の女:ふゆにきこえるわらべうた
    白い着物の女:こたえてうたえばさらわれる
    白い着物の女:とん とん とん
    GM:──手番、行動値21
    東海林 エマ:不可思議に思う。二人には視えてエマには視えていない。エマの目には映らない。
    東海林 エマ:──ああ、そうか。と腑に落ちる。
    東海林 エマ:吸血鬼は、鏡に映らない。──概念の話だけれど、きっと、そうなのだ。
    霧崎 零斗:「聞こえていようが、いまいが」
    霧崎 零斗:ブルーリボルト内部で弾丸を作成。
    霧崎 零斗:照準を合わせる。
    霧崎 零斗:この挙動だけは一日も欠かさず行っているルーティン。
    霧崎 零斗:マイナーでブルーリボルトを起動します。
    霧崎 零斗:メジャーで《ペネトレイト》《コンセントレイト:モルフェウス》
    霧崎 零斗:対象は白い着物の女!
    白い着物の女:ではガードを宣言しつつ、
    白い着物の女:《蒼き悪魔》+《グラビティガード》+《氷盾》
    霧崎 零斗:12dx7+21 射撃
    DoubleCross : (12DX7+21) → 10[1,5,6,7,8,8,8,9,9,9,10,10]+10[1,3,6,6,8,9,9,9,10]+10[3,3,6,9,10]+5[2,5]+21 → 56

    霧崎 零斗:ほ~~~~~~カッチカチやんけ
    白い着物の女:ではまずガード値を算出しよう
    霧崎 零斗:だが
    白い着物の女:4d10+20
    DoubleCross : (4D10+20) → 20[5,6,7,2]+20 → 40

    霧崎 零斗:21+18+6d10 装甲無視の味をくらいな!
    DoubleCross : (21+18+6D10) → 21+18+30[7,7,3,6,4,3] → 69

    白い着物の女:セットアップと合わせてガード値は52!
    霧崎 零斗:く~~~~~~!強敵!
    白い着物の女:そしてダメージ軽減が12……ならば
    白い着物の女:ダメージは入る! が……これではとうてい倒れぬさ!
    霧崎 零斗:小手調べだ。そう思っての銃撃だった。
    霧崎 零斗:なにせ自分の能力は燃費が良い。
    白い着物の女:そして蒼き悪魔によって、攻撃してきた君には18点のHPダメージ!
    霧崎 零斗:最低限の弾丸精製を除いて、エフェクトの行使はないのだから。
    霧崎 零斗:「ぐぅううううう!」
    霧崎 零斗:HP23→5
    霧崎 零斗:――己で良かった。
    霧崎 零斗:侵食率100→104
    霧崎 零斗:「だが……見えたぞ、お前の力!」
    白い着物の女:ぱきぃっ 高い音が銃弾を弾く。
    白い着物の女:これは、氷だ。
    白い着物の女:分厚く堅い氷が、女の身体を覆っている。
    白い着物の女:氷に覆われながら動いている──という方が正しいか。
    霧崎 零斗:「氷だ!」
    白い着物の女:極めて高い、対物理攻撃耐性。
    白い着物の女:UGNのオーヴァードが5年戦って、勝てぬ理由がここにあった。
    霧崎 零斗:「氷で身を守っている……面制圧型の俺の攻撃力では破壊しきれん!」
    霧崎 零斗:「だが――」
    霧崎 零斗:後ろを見る。
    霧崎 零斗:「――いけるだろう」
    沢村 秀吉:「オッケー」
    沢村 秀吉:「一点でぶち抜く」
    霧崎 零斗:反撃の氷の破片を浴びながら、それを聞いて笑う。
    GM:ならば、そのまま攻撃は続くのだろう。
    GM:イニシアチブ。なにもなければ手番は、行動値15の沢村くんだ。
    沢村 秀吉:待機!準備がいる!
    霧崎 零斗:エンジェルハイロウ同士にしか伝わらないレベルの、わずかな視覚伝達アイコンタクトで、穿つべきポイントを伝え、膝をつく。
    東海林 エマ:ないよー
    GM:では
    GM:行動値12、白い着物の女の手番だ
    白い着物の女:マイナーアクションは無い。動くと氷の城塞が解除されてしまうのでね
    白い着物の女:メジャーアクション、 《コキュートス》+《コンセントレイト》
    白い着物の女:対象はPC3名、RC射撃攻撃を行う!
    霧崎 零斗:チクショ~!
    白い着物の女:命中判定! ……の際に
    白い着物の女:オートアクション《紡ぎの魔眼》!
    白い着物の女:ちょっとダイスを増やして判定に入る
    沢村 秀吉:どうぞ!
    白い着物の女:15dx7+10 命中判定
    DoubleCross : (15DX7+10) → 10[1,2,2,2,2,3,4,4,6,6,6,7,7,9,10]+10[3,6,6,9]+4[4]+10 → 34

    東海林 エマ:固定値積んどる! ワンチャンドッジ!
    東海林 エマ:3dx+1>=34
    DoubleCross : (3DX10+1>=34) → 9[9,9,9]+1 → 10 → 失敗

    東海林 エマ:9ゾロ だめ
    沢村 秀吉:どうせ切るなら今か
    霧崎 零斗:暴走しているのでかわせねえ~
    沢村 秀吉:白い着物の女へのロイスをタイタスにして悪影響をすべて打ち消します。暴走解除!
    沢村 秀吉:ドッジ!
    沢村 秀吉:5DX+0+0@10 回避
    DoubleCross : (5DX10) → 7[1,4,5,5,7] → 7

    白い着物の女:うふふふ
    沢村 秀吉:ダメージロール前にオートアクション、<マグネットフォース> コンボ:シルバーバレット
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を2(→ 2)増加 (96 → 98)
    沢村 秀吉:行動権を消費せずカバーリング、対象はエマ!
    東海林 エマ:サワムラ~!
    沢村 秀吉:こちらはこれ以上なしです
    白い着物の女:ではダメージを
    白い着物の女:4d10+12+8 装甲有効
    DoubleCross : (4D10+12+8) → 27[5,7,5,10]+12+8 → 47

    東海林 エマ:サワムラに守ってもらえたので無傷です
    GM:なかなかの出力だ
    沢村 秀吉:倒れます。リザレクト!
    沢村 秀吉:沢村 秀吉のHPを1d10(→ 9)に変更 (27 → 9)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を9(→ 9)増加 (98 → 107)
    霧崎 零斗:ごあー!
    霧崎 零斗:女のロイスをタイタス消化して復活!
    白い着物の女:分厚い氷の防護壁。その強度は弾丸を防ぐほどである。
    白い着物の女:ならば。
    白い着物の女:それが攻撃に転じた時は即ち、
    白い着物の女:〝弾丸の強度を誇る吹雪〟と化す。
    白い着物の女:ひらり ひらり 舞うように手を指し示すと、
    白い着物の女:風が吹く。……すぐにも風は暴風へと変わり、
    白い着物の女:氷の粒を撒き散らす、命を奪う冬となる!
    沢村 秀吉:カバーに入ろうとして、もたげた衝動が動きの邪魔をする。
    霧崎 零斗:反撃の氷弾を受けていたところに追い打ちの猛吹雪を喰らい、いよいよ身動きは取れなくなる。
    霧崎 零斗:――俺はこれでいい、が。
    霧崎 零斗:「サワムラ!」
    霧崎 零斗:――お前は違うだろう。
    沢村 秀吉:鏡に写った己の声がする。
    沢村 秀吉:──傷つくのがみたいだろう?
    沢村 秀吉:苦しむのがみたいだろう?
    沢村 秀吉:なぜ止める。なぜ守ろうとする。
    沢村 秀吉:「そんなもん、」
    東海林 エマ:吹雪を隠れ蓑に、一際大きな氷柱が、真っ直ぐに飛来する。まだ、再生には十分。だから平気──
    沢村 秀吉:知らず、声を上げる。
    沢村 秀吉:「誰にも譲れない・・・・からに、決まってんだろうが……!」
    白い着物の女:「こっち来ておくれ」
    白い着物の女:「こっち来ておくれ……」
    沢村 秀吉:「黙れ」
    沢村 秀吉:痛みに歪む顔も。
    沢村 秀吉:苦しみに喘ぐ声も。
    沢村 秀吉:誰にも奪わせない。
    沢村 秀吉:首をもたげた本性かいぶつが、鏡を叩き割る。
    沢村 秀吉:そのまま走る。氷の槍にその身を晒す。
    沢村 秀吉:「がぁっ……!」
    東海林 エマ:「サワムラ!」
    沢村 秀吉:貫かれた傷がそのまま凍りつく。
    沢村 秀吉:血を流すこともできず、それでも振り向いて。
    沢村 秀吉:「無事か」
    沢村 秀吉:少女の顔を見る。
    東海林 エマ:いつものように表情は変わらない。ただ、その痛々しく凍て付いた傷を見る目は、狼狽えているように揺れている。
    白い着物の女:「こっち来ておくれ」
    白い着物の女:「さびしかろぉ」
    東海林 エマ:「エマは、無事……だけど」
    東海林 エマ:「……呼んでる。エマには、良く分からないけど、二人には"響く"んだ」
    東海林 エマ:「大丈夫? つらくない?」
    沢村 秀吉:「ああ」
    沢村 秀吉:怯えるような、心配するようなその顔を見て。
    沢村 秀吉:歓喜する自分だけではなかった。
    東海林 エマ:いつも守ってもらっているのに、今日はひどく。失うのが怖かった。
    沢村 秀吉:「大丈夫」
    沢村 秀吉:怪物と一つだけ意見が一致する。
    沢村 秀吉:「向こうには行かねえよ」
    沢村 秀吉:離れたくない。離したくない。
    沢村 秀吉:「お前が寂しがるほうが、やだ」
    東海林 エマ:「……ん。良かった」 安堵が色濃く、その目に映った。
    GM:手番、行動値11
    GM:東海林さんだな
    東海林 エマ:ん。じゃあマイナーでジェネシフト。次のラウンドに向けて整えていく
    東海林 エマ:90+1d10
    DoubleCross : (90+1D10) → 90+2[2] → 92

    東海林 エマ:まあ……そうなる!
    東海林 エマ:抜けるかどうか分からないけど殴るぞー。オートでシューターズジャケット装備。
    東海林 エマ:"ハートステイク・ボルト" 《C:バロール》《瞬速の刃》《因果歪曲》  侵蝕[+9]
    東海林 エマ:侵蝕調整して……対象は白い着物の女!
    白い着物の女:さあこいリアクションはガードで統一だぞぉ!
    東海林 エマ:(4+3+2+1)dx7+6
    DoubleCross : (10DX7+6) → 10[1,1,1,1,1,5,6,7,7,8]+10[2,4,9]+10[7]+10[10]+10[10]+10[7]+10[8]+10[9]+10[8]+5[5]+6 → 101

    東海林 エマ:?
    沢村 秀吉:え
    白い着物の女:は????
    沢村 秀吉:え?
    白い着物の女:えーと
    白い着物の女:はい
    白い着物の女:《グラビティガード》+《氷盾》
    白い着物の女:4d10+20
    DoubleCross : (4D10+20) → 31[9,7,10,5]+20 → 51

    東海林 エマ:11D10+9+18+1D10
    DoubleCross : (11D10+9+18+1D10) → 60[7,1,5,7,2,8,9,8,3,9,1]+9+18+8[8] → 95

    東海林 エマ:c(95-51)
    DoubleCross : c(95-51) → 44

    東海林 エマ:?
    白い着物の女:ガード値63のHPダメージ軽減12
    白い着物の女:dousite
    白い着物の女:これで防ぎ切れないの?
    沢村 秀吉:普通に通しとる……
    白い着物の女:えー
    東海林 エマ:c(95-63-12)
    DoubleCross : c(95-63-12) → 20

    東海林 エマ:こうかな
    白い着物の女:けっこうがっつら削れました、はい……
    GM:え、演出をどうぞ! まだ死なないぞ!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を11(→ 11)増加 (90 → 101)
    東海林 エマ:指先を噛む。零下の気温の中でもその赫は容易には凍らず、瞬く間に形を変える。
    東海林 エマ:瞳と同じ、赫。命の色が、小さな小さな魔眼となる。
    東海林 エマ:「じゃあ、いつもみたいに」
    東海林 エマ:少年の癒えきらぬ傷跡に手を当てる。治癒など、できるわけではないが。
    東海林 エマ:「エマが、注意を引く。その間に、狙って」
    沢村 秀吉:「ん」
    沢村 秀吉:冷たい傷に、熱が籠もった気がした
    沢村 秀吉:「頼んだ」
    東海林 エマ:返答と同時、木陰から滑り出る。
    東海林 エマ:雪煙を上げ、姿勢を低くして滑るように雪原を駆ける。
    白い着物の女:ぎろっ
    白い着物の女:顔の無い頭が、あなたを見た。
    白い着物の女:矢継ぎ早に打ち出される氷弾!
    東海林 エマ:その貌には、何も映っていない。少し愉快だな、と思った。
    東海林 エマ心臓打ちの杭ハートステイクと、少女は呼ばれている。
    東海林 エマ:曰く、吸血鬼と人の間の子は──その不自然な在り方故に、異形を殺す術を生まれながらに持っているのだという。
    東海林 エマ:停滞と変化の中間。どちらでもあり、どちらでもない忌み子。
    東海林 エマ:怪物殺しの怪物。それが、半吸血鬼ダンピールだ。
    東海林 エマ:「──しっ」
    東海林 エマ:幾つもの氷弾を避け、小さいものを素手で打ち払って、
    東海林 エマ:肉薄する。可能な限り、己に注意を引き付ける。そうしてやってきた。
    東海林 エマ:これからも、共に在れるなら。そう在りたい。
    東海林 エマ:「あなたのところには、行かせない」
    東海林 エマ:強く、強く。女を睨め付けた。──その視線に呼応するように、
    東海林 エマ:魔眼が、質量を無視して形状変化を起こす。宙に浮かんだ巨大な赫い杭は、重力加速度を伴って──容赦なく、女に突き立てられた。
    白い着物の女:みしっ──一瞬、紅華と氷華が拮抗する。
    白い着物の女:砲撃すらを防ぐ、超絶の物理防御。
    白い着物の女:対するは怪物殺しの一撃。
    白い着物の女:軋む。
    白い着物の女:果てに──
    白い着物の女:ばぎぃっ!
    白い着物の女:分厚い氷の鎧が打ち砕かれ、女の身体に杭の切っ先が届く!
    白い着物の女:「こっ」
    白い着物の女:歌声が始めて、止まる。
    東海林 エマ:「うん」「やっぱり。一点だ」
    東海林 エマ:ふぅ、と白い息を吐き出した。──きっと。否、絶対に。この隙を、見逃すはずがない。
    GM:……手番、待機分。沢村くんだ。
    沢村 秀吉:はい!
    沢村 秀吉:マイナーアクション、<ポルターガイスト> コンボ:マンイーター
    沢村 秀吉:レッドテンペストを選択。このシーン間、自身の攻撃力を+26 選択したレッドテンペストの破壊はエピックの効果で無効
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を4(→ 4)増加 (107 → 111)
    沢村 秀吉:メジャーアクション、<コンセントレイト:エンジェルハイロゥ>+<小さな塵> コンボ:キリングバイト
    沢村 秀吉:射撃攻撃を行います。対象は白い着物の女
    沢村 秀吉:命中判定!
    沢村 秀吉:11DX+4+0@7 (侵食上昇4、侵蝕100~)
    DoubleCross : (11DX7+4) → 10[1,2,3,3,3,5,5,5,6,8,10]+10[2,10]+6[6]+4 → 30

    沢村 秀吉:よし、30届いた!
    白い着物の女:リアクションは……ガード!
    白い着物の女:そして《グラビティガード》+《氷盾》
    白い着物の女:4d10+20
    DoubleCross : (4D10+20) → 18[1,10,3,4]+20 → 38

    沢村 秀吉:ダメージ。固定値は56にエマちゃんの支援が乗って74
    沢村 秀吉:4d10+1d10+56+18
    DoubleCross : (4D10+1D10+56+18) → 26[8,4,7,7]+5[5]+56+18 → 105

    沢村 秀吉:おや
    白い着物の女:ガード値50! HPダメージ軽減12! 余裕でふせげ
    沢村 秀吉:装甲有効の105点です
    白い着物の女:おのれぇい!!!
    GM:計算!
    白い着物の女:ぐぐ……ピュアサラでないことがあだになる……
    白い着物の女:一度倒れる! そしてオートアクション《燃える魂》!
    沢村 秀吉:よっしゃ!
    白い着物の女:HPを40点まで回復して蘇生する……!
    GM:演出を……どうぞ!
    沢村 秀吉:霧崎からポイントは伝わった。
    沢村 秀吉:エマが守りを砕いた。
    沢村 秀吉:隙は見逃さない。それが俺に任された仕事だ。
    沢村 秀吉:狙撃銃を再展開。対装甲砲身へ移行。
    沢村 秀吉:磁場を展開。狙撃手を固定。
    沢村 秀吉:エネルギーラインに接続。出力最大。チャージ開始。
    沢村 秀吉:チャンバー加圧。電磁ライフリング展開。
    沢村 秀吉:赤く染まった砲身──レールガンの鋒を、女へと向ける。
    沢村 秀吉:冷気と衝動が指先に震えを伝えようとする。
    沢村 秀吉:心と指先を切り離す。それが狙撃手のセオリー。
    沢村 秀吉:切り離せないものがあった。
    沢村 秀吉:(まったく、狙撃手失格だな)
    沢村 秀吉:一つだけ残した心を──向けられた信頼を指先に乗せて。
    沢村 秀吉:引き金を引く。
    沢村 秀吉:一瞬。銀の弾丸は狙い過たず、杭の傷跡へと。
    東海林 エマ:一帯に散りばめられた魔眼が、弾丸に添う。
    東海林 エマ:その速やかな運びを、更に疾く。疾く。音を、置き去りにしてしまうまで。
    GM:血と銀の、ふたつの閃きが、無彩色の冬に突き刺さる──!
    白い着物の女:ばき、びしっ
    白い着物の女:分厚い氷が砕け、罅割れていく異音。
    白い着物の女:「ああ ああ」
    白い着物の女:「あああああぁ……!」
    白い着物の女:女の身体を杭が貫く──生物ならば心の臓がある筈の部位を!
    白い着物の女:血は流れない。代わりに──
    白い着物の女:傷口から流れるものは、水だった。
    白い着物の女:「ああ、あ、あぁぁ」
    白い着物の女:流水が氷を溶かし、雪を溶かしていく。
    白い着物の女:あたかも春が訪れた小川のように。
    白い着物の女
    白い着物の女:……そのまま女は、倒れ伏すように見えた。
    白い着物の女:「とん とん とん」
    白い着物の女:歌が聞こえる。風の音のような歌声が。
    白い着物の女:みし、みし、みし
    白い着物の女:べき、べき、べき
    白い着物の女:異音を立てて女の身体が起き上がる──それは、
    白い着物の女:己の四肢に力を込めて立つのではなく、
    白い着物の女:己の四肢を凍てつかせ、氷像のようにそこへ立たせるという形の。
    白い着物の女:正しき命を持たぬ異形の、おぞましい再生である。
    白い着物の女:「だれじゃいなぁ」
    白い着物の女:「戸を叩く、のは」
    白い着物の女:「戸を、開けたのは」
    白い着物の女:「だれじゃいなぁ……」
    東海林 エマ:「……もう。誰も、連れて行かせないよ」
    GM:……イニシアチブ。全員、行動済か。
    沢村 秀吉:ですね!
    GM:だが。
    沢村 秀吉:あっすいません
    沢村 秀吉:侵食と反動ダメージ!
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を4(→ 4)増加 (111 → 115)
    沢村 秀吉:沢村 秀吉のHPを1d10(→ 1)減少 (9 → 8)
    沢村 秀吉:やるじゃん
    沢村 秀吉:失礼、オッケーです
    GM:全員行動済、を確認するこの手番で、
    白い着物の女:《時間凍結》を宣言します
    沢村 秀吉:そっちが撃つんかーい!
    沢村 秀吉:どうぞ
    白い着物の女:HPはマイナス20。残りHPは20だ
    白い着物の女:マイナー。《オリジン:レジェンド》+《氷の回廊》
    霧崎 零斗:なんやて……!
    霧崎 零斗:動いた!
    沢村 秀吉:動くぞ!
    白い着物の女:あなたたちのエンゲージへ侵入する。……分割は出来ていなかった筈だな?
    沢村 秀吉:はい……
    東海林 エマ:してない……
    霧崎 零斗:ぐっ
    白い着物の女:メジャーアクション!
    白い着物の女:《災厄の炎》+《ハザードコール》+《コンセントレイト》!
    沢村 秀吉:んぎゃーっ
    東海林 エマ:ハザードコールやめろーっ!
    白い着物の女:kono
    白い着物の女:この攻撃にダメージは無いが……命中すれば即座に侵蝕が10上昇する!
    白い着物の女:命中判定!
    白い着物の女:13dx7+20
    DoubleCross : (13DX7+20) → 10[1,2,4,5,5,5,5,6,6,8,9,9,9]+6[1,2,4,6]+20 → 36

    沢村 秀吉:やるだけドッジ!
    霧崎 零斗:ぎひーっ!!!!!
    霧崎 零斗:暴走しているのでくらいます!
    霧崎 零斗:侵食114!
    沢村 秀吉:5DX+0+0@10>=36 回避
    DoubleCross : (5DX10>=36) → 9[1,3,5,7,9] → 9 → 失敗

    東海林 エマ:4dx+1>=36 ドッジ!
    DoubleCross : (4DX10+1>=36) → 8[1,1,3,8]+1 → 9 → 失敗

    沢村 秀吉:カバーしようか
    東海林 エマ:う。でもサワムラの侵蝕……
    沢村 秀吉:これ、ハザードコールカバーしても
    沢村 秀吉:2倍上がるとかないですよね?
    GM:はい 2倍で計算するのはダメージのみの筈。処理的には2回命中じゃなく、1回のダメージが増えるだけなのがカバーっぽいので
    GM:ハザードコールのようなダメージでない効果は2倍にならないと判断します
    沢村 秀吉:ではエマちゃんをカバーリングします。こっちの侵食2で10抑えられるならオッケーだ
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を2(→ 2)増加 (115 → 117)
    東海林 エマ:うう~~~ありがとう
    沢村 秀吉:沢村 秀吉の侵蝕率を10(→ 10)増加 (117 → 127)
    沢村 秀吉:こっちはこれでオッケーかな!
    GM:では
    GM:演出の前にクリンナップの処理で、
    霧崎 零斗:なにっ!?
    白い着物の女:《高速再生》
    沢村 秀吉:なにーっ
    霧崎 零斗:ぎぎぎーっ!?
    白い着物の女:HPを40回復……マックスの60にまで持っていく!
    霧崎 零斗:なんて強敵
    霧崎 零斗:超火力持ちでなくてはジリ貧!
    東海林 エマ:なんてひどい……
    白い着物の女:「──ぁ、ぁあ、ああ」
    白い着物の女:雪原に氷の柱が突き立っている。それに手足があって蠢いている。
    白い着物の女:今の女の姿は──そのようなものだ。
    白い着物の女:ひとの形には近いが、決定的に違うもの。
    白い着物の女:それが、ふいに、動いた。
    白い着物の女:より正確に言うならば、砕けて、ふたたび現れたのだ。
    白い着物の女:銃撃の為にある程度の間合いをあけている、あなたたちの眼前に。
    白い着物の女:またたきひとつのうちに、ふっ、とあらわれた。
    霧崎 零斗:「このままではキリがない……か」
    東海林 エマ:「、えっ」
    白い着物の女:「ぁあ、ぁあああぁぁああぁ」
    白い着物の女:そして、叫んだ。
    白い着物の女:鼓膜から脳髄を侵蝕するような声をしていた。
    白い着物の女:物理的な破壊力は持たない、ただの嘆きの声である。
    白い着物の女:「ぁああぁ、ぁあ」
    白い着物の女:「さびし」
    白い着物の女:「さびしや」
    白い着物の女:「さびしかろぉ」
    白い着物の女:「ああああああ、ああああぁああぁぁぁ」
    白い着物の女:……それはきっと、何人もの村人達をジャームへと変えてきた、
    白い着物の女:黄泉へ誘う声なのだ。
    霧崎 零斗:――このままだと不味い。
    霧崎 零斗:――頼むぞ、祈。
    東海林 エマ:「く、ぅう……っ!」 思わず耳を塞ぐが、それも無視して脳内に直接響いてくる。
    沢村 秀吉:「大丈夫だ」
    沢村 秀吉:対抗するように声を張り上げる。
    沢村 秀吉:「誰も、あんたのところには、行かない!」
    沢村 秀吉:「みんなで、帰るんだ!」
    沢村 秀吉:心を奮い立たせて、叫ぶ。自らにも言い聞かせるように。
    白い着物の女:「かえさぬ」
    白い着物の女:「かえさぬよう」
    白い着物の女:「だれも、だぁれも、か」
    GM:クリンナップ処理終了──
    春日 祈:──NPCカード『支援砲撃』

    GM:女の声を遮るように、空が赤くなった。
    GM:何事か、と空を見上げるのも良いだろう。が、瞬きひとつのうちに、すぐわかる。
    GM:空から、火が降ってくるのだ。
    GM:あなたたちの周囲を、ぐるりと取り囲むように。それでいて、あなたたちに直撃しないように。
    霧崎 零斗:「……来たか」
    GM:白い着物の女へも直接、幾つも、幾つも火を打ち当てながら、
    GM:あなた達だけは決して、焼いてしまわぬように──
    春日 祈:『遅くなった、ごめん』
    春日 祈:『こんな弾丸を扱うのは初めてだから』
    霧崎 零斗:「いいや、むしろ絶好のタイミングだ」
    白い着物の女:「かぁ、ぁあ、あ」
    白い着物の女:「ぁあああああああぁあぁぁっ」
    GM:降り注いでいるものは、
    GM:誰かの衣服を丸めて、油を染み込ませたもの。
    GM:床に直接寝ないようにするためと、布団代わりにしいていた段ボール。
    GM:窓を補強する為の木板。年季の入った桐箪笥をバラバラに壊したもの。
    GM:本や、手帳や、アルバムや、その他なんでも──
    霧崎 零斗:「誰も、誰も、誰も」
    GM:燃えるものなら何一つ躊躇わず、炎を纏い、射出されている。
    霧崎 零斗:「寂しくなどはない」
    春日 祈:『そうだよ』
    春日 祈:『私達は、みんなで帰れる』
    春日 祈:『ここには、なにも残さない』
    霧崎 零斗:「孤独に沈むのは――貴様だけだ!」
    GM:──エネミー〝白い着物の女〟に対し、解除不能の『重圧』を付与する。
    GM:氷の鎧を身に纏うことも、氷雪に紛れて姿を消すことも、
    GM:全て、全て、もはや叶わない。

    ラウンド2



    GM:さあ、決戦の時だ。
    GM:セットアップ!
    沢村 秀吉:なし!
    東海林 エマ:"ハートステイク・ギフト" 《鮮血の奏者》《コズミックインフレーション》  侵蝕[+6]
    東海林 エマ:対象:範囲(選択) 射程:視界 HP2点消費 ラウンド間、対象の攻撃力[+21]
    東海林 エマ:対象は味方3人全員!
    東海林 エマ:東海林 エマの侵蝕率を6(→ 6)増加 (101 → 107)
    東海林 エマ:東海林 エマのHPを2(→ 2)減少 (23 → 21)
    白い着物の女:《虚無の城壁》+《氷の城塞》
    白い着物の女:ガード値+12&HPダメージ-12……これだけはまだ残っている!
    霧崎 零斗:なし!
    GM:では、手番──
    白い着物の女:Eロイス《闇の呼び声》
    霧崎 零斗:行くぜ!
    霧崎 零斗:なにっ!?
    沢村 秀吉:なんだなんだ!
    白い着物の女:このDロイスが使用されると、シーンに登場しているキャラクターは
    白い着物の女:即座にEロイス使用者にエンゲージする。
    東海林 エマ:うわーっ!
    白い着物の女:どれだけ距離が離れていても、物理的に移動が不可能な状態であってもだ……!
    霧崎 零斗:馬鹿な!?
    沢村 秀吉:もともとみんなエンゲージしてなかったっけ?
    霧崎 零斗:うん
    白い着物の女:「ぁ、ぁ、あ、あ、ああ、あ、あ」
    白い着物の女:「ぁあああああああああ」
    白い着物の女:「ああああああああああぁ」
    霧崎 零斗:「まさか――いかん」
    白い着物の女:ぐぅうっ
    白い着物の女:と、視界が歪む。
    白い着物の女:……否。
    白い着物の女:ただしくは、空間が歪んだのだ。
    白い着物の女:あなた達の目は正常のまま、一瞬、目に映る景色の全てが歪んで──
    春日 祈:「え」
    霧崎 零斗:「やめろ!」
    鏑木 鵠:「……!」
    川辺 義秋:「なっ」
    東海林 エマ:「な、なんで皆ここに……?!」
    沢村 秀吉:「まずい……!離れて!」
    GM:何十人もの人間が、突如、そこに現れた。
    霧崎 零斗:――防衛は間に合わない。
    霧崎 零斗:即座に、結論を出した。
    GM:炎の壁に囲まれた雪原に、ぽんと放り出された者達は皆、困惑の表情を浮かべているが──
    春日 祈:「……霧崎!」
    春日 祈:「どうしたらいい!?」
    霧崎 零斗:「伏せていろ!」
    霧崎 零斗:その問いかけはすでに想定していた。
    霧崎 零斗:「俺が――仕留める!」
    春日 祈:「わかった! 伏せて!」
    川辺 義秋:「な、何がなんだかわからんが──わかった!」
    鏑木 鵠:「炎を見ないで、目をやられます! 呼吸器も庇って!」
    白い着物の女:怪物は──
    東海林 エマ:「いよいよ、時間は掛けてられない……決着をつけよう」
    GM:──きっと、その次の手を打つ筈だ。
    GM:だが、ここで手札は一度尽きる。
    GM:イニシアチブプロセス。手番、行動値21、霧崎 零斗。
    GM:あなたの手番さえすぎれば、次のイニシアチブで
    GM:エフェクトの宣言を行うことで、〝白い着物の女〟は行動を起こすだろう。
    霧崎 零斗:ククク
    霧崎 零斗:マイナーでブルーリボルトを起動
    霧崎 零斗:メジャーで
    霧崎 零斗:《ペネトレイト》《コンセントレイト:モルフェウス》《零距離射撃》
    霧崎 零斗:対象は無論白い着物の女
    GM:さあ、判定をどうぞ
    霧崎 零斗:14dx7+21 射撃
    DoubleCross : (14DX7+21) → 10[2,2,2,3,4,6,7,7,9,9,9,9,9,10]+10[1,2,2,6,7,9,9,10]+10[1,7,8,10]+3[1,2,3]+21 → 54

    白い着物の女:リアクションはガード──
    川辺 日向子:オートアクション
    川辺 日向子:《栄光の血》6!
    霧崎 零斗:なにっ!?
    霧崎 零斗:うおおおおお!
    川辺 日向子:その攻撃判定の達成値を+18する!
    霧崎 零斗:つまり72!
    霧崎 零斗:だったら!
    霧崎 零斗:21+21+8d10 装甲無視!
    DoubleCross : (21+21+8D10) → 21+21+51[9,9,6,4,4,6,6,7] → 93

    沢村 秀吉:ダメージ跳ねた!
    白い着物の女:ガード値は12!
    白い着物の女:93-12=81
    白い着物の女:HP軽減は12!
    白い着物の女:81-12=69
    霧崎 零斗:くらえ~!
    白い着物の女:最大HPは60──そして、
    白い着物の女:永続の重圧により復活オートアクション、全て使用不能……!
    霧崎 零斗:よしっ!
    白い着物の女:……戦闘、不能!
    霧崎 零斗:やったー!
    東海林 エマ:やったー!
    沢村 秀吉:やった!
    GM:あの想定外の火力さえなければ、あと1手番はあった。
    霧崎 零斗:こわ~~~~~
    沢村 秀吉:ひえ~
    GM:そうすれば……次のハザードコールを放てたが……
    GM:想定外、想定以上だ。
    GM:おっと。
    GM:演出を……どうぞ!
    霧崎 零斗:はい!
    霧崎 零斗
    霧崎 零斗:「俺にできることは――」
    霧崎 零斗:誰よりも早く、駆け出していた。
    霧崎 零斗:「――たった一つ」
    霧崎 零斗:長大な狙撃銃をまるで小枝のように振り回し、銃口を女に突きつけていた。
    霧崎 零斗:「お前を――倒す」
    白い着物の女:その銃口は早くも、女の放つ冷気により凍結を始める。
    霧崎 零斗:活かす為に殺す。
    白い着物の女:氷そのものが意志を持つかのように、触れ合った点から銃口へ這い進み、銃身へ這い上がり、
    白い着物の女:あなたの腕までを脅かそうと、侵略する──。
    霧崎 零斗:至近距離で炸裂したライフル弾は、氷かけた銃口を引き裂くようにして走り出す。
    霧崎 零斗:凍っても構わない。
    霧崎 零斗:迷わない。恐れない。一度放たれた己こそ、人々を守る弾丸そのものなのだから。
    霧崎 零斗:だがそんな彼を助けたいと思う人はいる。
    霧崎 零斗:彼はそれを知っている。
    霧崎 零斗:「俺のほうが、少しだけ早いな」
    霧崎 零斗:どう、と雪原に銃声が響き。
    霧崎 零斗:女の腹に、銃弾が食い込む。
    霧崎 零斗:――かに見えた。
    白い着物の女:嵐のごとく飛来する銃弾であれば、或いは、貫いたのだろう。
    白い着物の女:しかし、ただ一点を、一撃のうちに貫くという攻撃の性質は、
    白い着物の女:狭い範囲のみに再生成された、小さくも分厚い氷の壁に阻まれる。
    白い着物の女:ぎしぃっ
    白い着物の女:顔の無い女が、笑う。
    霧崎 零斗:――少しばかり力が足りないか。
    霧崎 零斗:――それは、俺も知っていたよ。
    霧崎 零斗:同じように、笑う。
    白い着物の女:鏡に映ったあなたの顔が、あなたがしないような形で笑う。
    霧崎 零斗:――ああ、こんな笑い方は俺にはできないが。
    霧崎 零斗:――できなくてよかったよ。
    霧崎 零斗:――そんな笑い方をする俺には、頼れる仲間なんて作れなさそうだ。
    東海林 エマ:阻まれた弾が。止まったはずの其れが。
    東海林 エマ:ぎち、と鈍い音を立て──再び沈み始める。
    霧崎 零斗:「良いことを教えよう」
    霧崎 零斗:「俺の放つ弾丸はレネゲイドで作られただけの通常弾頭」
    霧崎 零斗:「故に、標的へ着弾するまでの間に理外の威力を発揮することはない」
    霧崎 零斗:「他のオーヴァードの支援を受ける時を除けばな!」
    東海林 エマ:極小の魔眼が寄り集まり、弾丸に融け合う。一つの形となり、怪物殺しの一撃へと変わる。
    霧崎 零斗:霜が銃身をつたい、両腕を包み始める。
    霧崎 零斗:だが構わない、凍結の激痛に耐えながら銃弾に全ての意識を集中する。
    東海林 エマ:「絶対、届かせる……!」 一際強く、瞳が輝いた。
    霧崎 零斗:「穿け!」
    白い着物の女:び ぎっ
    白い着物の女:ついに弾頭は氷の壁を貫き、女の肉体に届く。
    霧崎 零斗:そして、一度貫きさえすれば――。
    白い着物の女:だが。
    白い着物の女:貫いたとしても。
    白い着物の女:お前が凍てつけば、それでお終いだろう?
    白い着物の女:ぴし、ぴし、ぴし
    白い着物の女:銃身を伝う氷の侵蝕が加速する。
    白い着物の女:腕を、心臓を、命全てを、終わりの季節に閉じ込めようと──
    霧崎 零斗:女の体内で、弾丸は増える。弾丸は爆ぜる。弾丸は踊る。
    霧崎 零斗:至近距離射撃の際にだけ奏でられるバレットワルツ。
    霧崎 零斗:しかしそれも、零斗の視覚がエンジェルハイロウの力で全てを把握し、脳がノイマンならではの超演算能力を発揮し、モルフェウスの能力を届けてこそのもの。
    霧崎 零斗:致命の一撃を届ける為の、零斗の肉体はあまりに脆弱で――。
    白い着物の女:凍りつけ。砕けてしまえ。雪片となって散ればいい。
    白い着物の女:そうして氷雪の野に混ざって、
    白い着物の女:ずうっと此処にいれば
    川辺 日向子:──霧崎 零斗の腕が、薔薇のような赤に染まった。
    川辺 日向子:それは、熱く滾る血潮──血液そのものであった。
    川辺 日向子:ブラム=ストーカーシンドロームの血液操作。
    川辺 日向子:あの時、注がれた血を、何倍にも何十倍にも増幅させて──血の河の流れで、氷を溶かす!
    霧崎 零斗:「ああ――温いものだな」
    霧崎 零斗:「人の熱というものは」
    川辺 日向子:あの時、救いたいという祈りを注がれたからには、
    川辺 日向子:発現する力もまた、誰かを救う為に有る。
    東海林 エマ:「まさか。こんな短時間で……!」 驚いたように目を見張る。
    川辺 日向子:「おねがい」
    川辺 日向子:「勝って!」
    霧崎 零斗:「応!」
    霧崎 零斗:もう一度、引き金を引く。
    霧崎 零斗:整備を欠かしたことはない。
    霧崎 零斗:ただの職人たちが命をかけて組み上げた技術の結晶――ブルーリボルトは、主と共にその声に応え。
    霧崎 零斗:動作保証外の超極低温の中でもう一度鋼鉄の咆哮を上げた。
    霧崎 零斗たとえ天が堕ちるともスカイフォール
    白い着物の女:「あぁ あああぁ ああああ」
    霧崎 零斗:最初の一発が作った空間を通り、第二発も――爆ぜる!
    白い着物の女:「ああああああああぁ」
    白い着物の女:弾丸が爆ぜる。弾丸が踊る。
    霧崎 零斗:女の内側で生成された無数の銃弾はその肉体を断片へと変えていく。
    白い着物の女:もはや二度と歌声は響かない。
    白い着物の女:「あぁああああああああああぁぁ──」
    白い着物の女:「さびし」
    白い着物の女:「さびしい」
    白い着物の女:はらっ……
    霧崎 零斗:「だったら眠れ。春風と共に、暁も忘れ」
    白い着物の女:引き裂かれた着物は、もう、雪にさえ見えない。
    白い着物の女:灰のごとく降り積もって、積もる先から、風に散らされていく。
    GM:風は、
    GM:……もう3月だ。
    GM:ほんのひと月前に比べて──
    GM:ほんの数分前に比べて──
    GM:ずいぶんと、暖かくなった。
    霧崎 零斗:「きっといつか――孤独も忘れてしまうだろうさ」

    バックトラック


    GM:今回のEロイスは……使われなかったものも含めると
    GM:《孤独の叫び》《傲慢な理想》《怯えのまなざし》《離れ難き隣人》《闇の呼び声》
    GM:この5つだ
    GM:使うやいなや!
    沢村 秀吉:使います
    霧崎 零斗:使うか~~~~
    沢村 秀吉:全部!
    沢村 秀吉:127-5d10
    DoubleCross : (127-5D10) → 127-18[2,3,5,7,1] → 109

    霧崎 零斗:120-5d10
    DoubleCross : (120-5D10) → 120-18[1,6,2,2,7] → 102

    霧崎 零斗:良いところまで来ましたね
    GM:仲良しだね君達
    東海林 エマ:エマは大丈夫そうかな~ 使わないでおきます
    沢村 秀吉:残りロイス5つなら追加込で確定か
    沢村 秀吉:等倍で
    霧崎 零斗:じゃあ一倍フリしちゃおっかな
    沢村 秀吉:109-5d10
    DoubleCross : (109-5D10) → 109-22[2,9,1,1,9] → 87

    霧崎 零斗:102-5d10
    DoubleCross : (102-5D10) → 102-39[6,10,5,8,10] → 63

    東海林 エマ:ロイス1枚も割れてない。サワムラのお陰
    沢村 秀吉:帰還!
    東海林 エマ:107-6d10
    DoubleCross : (107-6D10) → 107-38[7,10,9,3,2,7] → 69

    沢村 秀吉:役目だからね
    霧崎 零斗:期間!
    沢村 秀吉:よかった~
    東海林 エマ:戻ってきすぎちゃった 4点!
    沢村 秀吉:みんなおかえり!
    沢村 秀吉:5点です
    GM:では各々の点数に、
    GM:いつもの5点! シナリオは10点! Dロイスを1点!
    GM:足して持っていきな!
    GM:どこで使うかは……さておいてなぁ!
    沢村 秀吉:いただきます!もぐもぐ
    霧崎 零斗:やったー!
    東海林 エマ:もっきゅもっきゅ
    東海林 エマ:おかわり……
    GM:おかわりありません
    東海林 エマ:しょぼん
    GM:頑張って任務に出な!

    エンディング1:ゆきどけ


    GM:少しばかりの時間が過ぎた。
    GM:道の脇にも、日陰にも、雪の塊を見かけなくなり、
    GM:吹く風が肌を痛めつけない程度には、暖かくなった。
    GM:春。
    GM:晴待村の河川敷も、桜並木が見事に花開いている。
    霧崎 零斗:――暖かさに感傷を抱くような心はないが。
    霧崎 零斗:空を見上げる。
    GM:少し遠くに目をやれば、ひとの住める土地とは思えぬ程に朽ち果てた建造物や、
    GM:あの分厚い壁も未だそのままに残っているが。
    霧崎 零斗:横目に入る廃墟、激戦の痕。
    霧崎 零斗:――それらもまた生きている証だろう。
    GM:……少なくとも、遠方に避難している住民達に、
    霧崎 零斗:それでも良かった、というのが偽らぬ本音であった。
    GM:護衛を伴うという条件付きではあるが、この日の一時帰宅を許可できる程度には、事態は落ち着いている。
    GM:──河川敷の、とりわけ見事な桜の下。
    春日 祈:何枚ものブルーシートを拡げて、橋にペグを打つ。
    霧崎 零斗:「早いな、祈」
    春日 祈:「みんな来る前に終わらせるよ」
    霧崎 零斗:「おうとも」
    霧崎 零斗:――俺は、春日祈が好きだ。
    春日 祈:木槌を使って手際良く、地面にシートを固定していく。
    霧崎 零斗:――彼女が居ない間の俺は、ただでさえ少ない人間らしさが更に削れていたし。
    春日 祈:100人近い規模の花見だ。シートも相応に広い。
    霧崎 零斗:同じように、手際よく炭火をおこし始める。
    霧崎 零斗:――なにより、彼女と過ごすこんな何気ない時間が好きだ。
    霧崎 零斗:「……楽しいな」
    霧崎 零斗:「俺は今、日常というやつを謳歌している。お前はどうだ」
    Tekey:「いーさにうむ」がログインしました。
    春日 祈:「んー」
    春日 祈:「正直に言うと、日常ってものに体が慣れない……かな」
    霧崎 零斗:「だろうな」
    春日 祈:「無意味に暖房ケチったり、目覚ましかけないでも早く起きたり」
    春日 祈:「なにもしないで横になってると、何かしなきゃって変に焦ったり」
    春日 祈:かん、かん、とペグを打つ。会話と並行し無心で行える単純作業。
    春日 祈:「日常と非日常が、逆になってるんだろうなぁ」
    霧崎 零斗:「長い時間を過ごす空間こそが日常になる」
    霧崎 零斗:「俺の経験から考えると、その違和感は続くだろう」
    霧崎 零斗:「……もっと早く助けに行けなくて、ごめんな」
    春日 祈:「謝られると、それはそれで困る」
    春日 祈:「謝るならどっちかって言うと、妙に近くなった距離感の方にして欲しいかも」
    霧崎 零斗:「思春期特有の距離感の掴め無さの方が気になると」
    霧崎 零斗:「まあお前も思春期の女子、困惑することもあるだろう」
    春日 祈:「たぶん霧崎特有だと思う」
    霧崎 零斗:肩をすくめる。
    春日 祈:「いや、絶対そうだね。霧崎の固有特性」
    霧崎 零斗:「こいつぁマイッタネ」
    霧崎 零斗:「言っておくが俺が他人に興味を持つタイプではないし距離を詰めるタイプではない」
    霧崎 零斗:「お前に固有の挙動だ。異常な状態とも言える」
    春日 祈:「本当に~?」
    春日 祈:最後のペグを打ち終えて、ブルーシートの上に仰向けになる。
    霧崎 零斗:「本当に~」
    春日 祈:横たわる際の音は、見た目にそぐわぬ重量感。
    霧崎 零斗:いい感じに仕上がってきた炭火を前に一人頷く。
    霧崎 零斗:これでラムを焼けばうまかろう。
    春日 祈:「んー……私としてはねー」
    春日 祈:「私の知ってる日常ってさ、ほら。五年前で一度止まってるの」
    春日 祈:「UGNに所属してて、任務に行って、戻ってきたら少し休んで、また任務に行って」
    春日 祈:「その繰り返しが日常で……霧崎はたぶん、その日常で一番長く顔を合わせてる相手でさ」
    春日 祈:「つまり、色々端折って言うと、日常イコールほぼ霧崎だったわけで」
    春日 祈:「……その日常が5年で変質してる私の身にもなってみなさい」
    霧崎 零斗:「おまえ」
    霧崎 零斗:「………」
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:――つまり俺が、祈の帰る場所ということなんじゃないか?
    霧崎 零斗:――つまりこれは実質、告白ではないか?
    霧崎 零斗:――絶対好きだわ俺のこと……。
    霧崎 零斗:――いやだが、まて、ここで調子に乗ったらドンビキされる。
    霧崎 零斗:――すでにたいがい困惑されているのだから。
    霧崎 零斗:「…………」
    霧崎 零斗:「……」
    霧崎 零斗:「おまえな」
    春日 祈:「ん?」
    霧崎 零斗:「お前も相当変質してるんだぜ」
    霧崎 零斗:「能力の質とか外見じゃない。中身だ」
    春日 祈:がちゃっ、と左腕を肩から取り外してみせる。
    霧崎 零斗:――ブラックドッグジョークか?
    春日 祈:「中身」腹部の外装パネルをパカっと開く。
    霧崎 零斗:「いや、そうではなく」それはそれとしてドキッとしたが。
    霧崎 零斗:「大人になっていくお前に置いていかれそうなのが不安なのだろう」
    霧崎 零斗:「かなり思春期という感じがしないか?」
    春日 祈:「すると言えばする」
    春日 祈:「正直に言えば今の霧崎は、私が知らない人間に見えるくらいだもん」
    霧崎 零斗:「だろうな。だから不安なんだ」
    春日 祈:「……うん」
    春日 祈:「たぶんね、まだ、ちゃんと戻って来た実感が無いのは」
    霧崎 零斗:「俺はお前と、あの頃のように一緒に戦っていけるのだろうか、と」
    霧崎 零斗:「無いのは?」
    春日 祈:「私達の間の関係性が、急に変わりそうだからだと思う」
    春日 祈:「五年経ってるとは言ってもさ」
    春日 祈:「私達が一緒にいた時間は、ほとんどゼロなのに」
    春日 祈:「いきなり変わったことを突きつけられたら、正直、ちょっと怖い」
    春日 祈:「……私はさ」
    霧崎 零斗:「怖い、か。俺には無い感情だった」
    春日 祈:「五年、ずっと雪の中にいたんだよ」
    霧崎 零斗:「雪解け直後には重いな」
    春日 祈:「五年の間、ずっと立ち止まってたの。前に進んでなんていなかった」
    春日 祈:「うん、重い」
    霧崎 零斗:「……成る程」
    春日 祈:「少しずつ受け止めるだけの、時間と余裕が欲しいよ」
    霧崎 零斗:「分かった。そもそもお前は日常に帰りたてだ。そんな状態の時に負荷をかけることはパフォーマンスの低下につながる」
    春日 祈:「それ、その物言い」
    霧崎 零斗:「えっ」
    霧崎 零斗:「これ?」
    春日 祈:「その理屈っぽくて面倒くさい言い回しが霧崎」
    霧崎 零斗:「なんということだ……筋道立てて話そうと思っているだけだが……」
    春日 祈:「その面倒くさい言い回しに、私が何か文句をつけて」
    春日 祈:「それに対してもまた理屈が返ってきて、やりとりのテンプレが1セット」
    春日 祈:「でも、まぁ、最終的には」
    春日 祈:「だいたい私の主張を霧崎が採用したり、同意したりして」
    霧崎 零斗:両腕を組んで頷く。
    春日 祈:「私はそれ以上のことは考えないの。合わせるとか、譲るとか、そういうのは」
    春日 祈:「だいたい私達、そういう感じだった気がする」
    霧崎 零斗:「ああ、そういう感じだ」
    春日 祈:「でしょー」
    春日 祈:「なので、私が譲歩する側になるまでには、もうしばらく時間が必要になる見込みです」
    春日 祈:「……まぁ、五年までは掛からないと思うけど」
    霧崎 零斗:「了解した。問題ない」
    春日 祈:「よろしい」
    霧崎 零斗:「仮に五年かかったとしても、だ」
    霧崎 零斗:「たった一人の五年ではない。だから良い」
    春日 祈:「あっ、ごめん、条件が追加になる」
    霧崎 零斗:「なんだと?」
    春日 祈:「遠距離、またはそっちの転居が前提になるんだった」
    霧崎 零斗:「????????????」
    春日 祈:「私、このあたりに異動するから」
    春日 祈:「支部作るんだってさ。このあたり、数十キロ圏内にUGNの拠点が無いから」
    霧崎 零斗:「……行こう」
    春日 祈:「速いな」
    春日 祈:「もう少し悩まなくていいの?」
    霧崎 零斗:「俺は迷うほど感情豊かではないからな」
    春日 祈:「そ」
    霧崎 零斗:「ただ答えだけを見据え、答えに向かう」
    霧崎 零斗:「スカイ・フォールとは、そういう意味で名乗っている」
    霧崎 零斗:「長い任務から帰ってきた戦友の背中を守るために飛び出すのは――きっと、人間らしいと思うんだ」
    春日 祈:「そっか。じゃあ、後で事務方で話聞いておけばいいよ。私からも一言入れとくし」
    春日 祈:「都会からは遠くなるし、公共交通機関はかなり少ないし」
    春日 祈:「美術館とか博物館みたいな文化的施設もなければ、ハンバーガーチェーンは近隣見渡しても1種類だしだけど」
    春日 祈:「本当に後悔しない? ……その」
    春日 祈:「私の返事を待つ為だけに……いいの……?」
    霧崎 零斗:「言っただろう」
    霧崎 零斗:「俺は正しいと思ったことをする」
    霧崎 零斗:「五年待たせたんだから……まあ五年は待つさ」
    春日 祈:「五年後に〝やっぱ無理〟とか言い出しても刺さないでよ?」
    霧崎 零斗:「そうなったら北海道に行く」
    春日 祈:「なぜさらに北上……?」
    霧崎 零斗:「すると日本全国のUGN支部制覇になるからな」
    春日 祈:「なるほど」
    春日 祈:「それならまぁ、このあたりに数年くらい住むのもアリか」
    霧崎 零斗:「だからまあ、あんまり重たく考えるな」
    春日 祈:「わかった。気楽にあんたの人生を浪費させることにするね」
    霧崎 零斗:「俺は……」
    霧崎 零斗:「いや、俺“たち”は」
    霧崎 零斗:桜を見て、友を思い、この戦いで出会った人を思い。
    霧崎 零斗:「行きつくところへ行きつくだけなのさ」
    霧崎 零斗:いつか桜が北上していく様を思い浮かべ。
    春日 祈:「んじゃ」
    春日 祈:「物件探しは任せた」
    霧崎 零斗:「任せろ、すでにデータは用意した」
    春日 祈:「オーケー、共有フォルダに入れといて。今なら端末無しでもアクセスできる」
    春日 祈:「五年でUGNの技術も進歩したねー。便利便利」
    春日 祈:こつこつと自分の頭蓋を指先でつつき、珍しく笑いながら。
    春日 祈:「そろそろ、みんな来るよ」
    霧崎 零斗:「素晴らしい。おすすめはこのリノベーション済一軒家だ。なにせ広くて機能的で……」
    霧崎 零斗:「ああ」
    春日 祈:「暖かいねぇ」
    霧崎 零斗:「ああ」
    春日 祈:「春だねぇ……」
    霧崎 零斗:「ああ」
    霧崎 零斗:――本当に。
    霧崎 零斗:――――本当に。

    エンディング2:きぬずれ


    沢村 秀吉:あの事件からしばらく経った。
    沢村 秀吉:治療とかメンタルケアとか面倒な事後処理とかも終わって、ようやく事態は落ち着いたと言っていいだろう。
    沢村 秀吉:まあ事後処理に関しては、だいぶ楽させてもらったけど。鏑木さんたちがかなり頑張ってくれたおかげで。
    沢村 秀吉:霧崎君はまた面倒くさそうなこじらせ方をしてるようだ。祈ちゃんは大変だろう。
    沢村 秀吉:……いや、あっちはあっちで大分大変そうだし、割れ鍋に綴じ蓋なのか?
    沢村 秀吉:その辺も含めて、今度の花見のときにでも聞いてみようと思う。
    沢村 秀吉:救助民達も少しずつ日常に戻っているようで、何も問題はない。
    沢村 秀吉:──俺自身以外は。
    沢村 秀吉
    沢村 秀吉:「はぁ……」
    沢村 秀吉:最近、ため息が増えてきたと自覚する。
    沢村 秀吉:原因は、明確なのだが。
    沢村 秀吉:(今日も、逃げてしまった……)
    沢村 秀吉:食堂で相棒の姿を見かけて、そそくさと退散。
    沢村 秀吉:もう随分長いこと、まともに顔も見れていない。
    沢村 秀吉:その理由もまた自分の中で明白で。けれど誰にも話せない。
    沢村 秀吉:(いい加減あいつも気づいてるだろうな……)
    沢村 秀吉:いつものように顔色は変えず、誰にも気づかれないまま落ち込んではいないか。
    沢村 秀吉:心配するのもおかしな話だ。だって、そうさせてるのは自分なわけで。
    沢村 秀吉:とぼとぼと、弱々しい足取りで自室に戻る。
    沢村 秀吉:「いい加減、はっきりしないと……」
    沢村 秀吉:誰にも届かないと思って、ぼそりと零す。
    東海林 エマ:ひゅ、 とん。
    東海林 エマ:風を切る音。背後に何かが降り立つ音。
    沢村 秀吉:「……ん?」
    沢村 秀吉:振り返る。
    東海林 エマ:「えい」 開いた扉に部屋の主を押し込んで、そのまま自分も部屋に押し入る。
    沢村 秀吉:「お、おわっ!」
    東海林 エマ:がちゃん。無情にも扉が閉まって、二人きり。
    東海林 エマ:「…………」
    沢村 秀吉:そのままふらふらと後ろに倒れそうになって、足に力を込めて踏みとどまると。
    沢村 秀吉:えらく近い距離に見知った少女がいる。
    沢村 秀吉:「ご、ごめっ」
    沢村 秀吉:思わず一歩下がる。
    沢村 秀吉:改めて視線を下げて、少女の顔を覗く。
    東海林 エマ:頬を膨らませている。
    沢村 秀吉:(怒ってる……)
    沢村 秀吉:珍しく顔に出して。
    沢村 秀吉:落ち込んでいるよりはよかった、と。見当違いの安堵が先にくる。
    沢村 秀吉:「ひ、久しぶり……」
    東海林 エマ:一歩躙り寄るように近寄る。
    東海林 エマ:「久しぶり」
    沢村 秀吉:(いや、近い近い!)
    沢村 秀吉:近寄ってきたのに下がるのは、拒んでいるようでできなかった。
    沢村 秀吉:ドキンドキンと心臓が脈打っている。
    東海林 エマ:「…………」 じぃ、と表情を窺っている。
    沢村 秀吉:「な、なに」
    沢村 秀吉:「なにか……用……?」
    東海林 エマ:「なに、はエマの台詞」
    沢村 秀吉:「はい……」
    東海林 エマ:「……なんで避けるの」
    沢村 秀吉:叱られた子供のように背筋を丸くする。
    沢村 秀吉:「それは……」
    沢村 秀吉:言葉に詰まって、目を背ける。
    東海林 エマ:「……エマ、なにかした?」
    東海林 エマ:「それなら、謝ろうと思って。来た」
    沢村 秀吉:「違う!」
    沢村 秀吉:思わず大きな声が出た。
    沢村 秀吉:「それは、違う。……謝らなきゃいけないのは、俺の方」
    東海林 エマ:びく、と身体が少し跳ねる。
    沢村 秀吉:「俺が……勝手に顔合わせづらくなって、避けてただけ」
    沢村 秀吉:「エマはなにも悪くない。悪くないから……」
    東海林 エマ:「……ん」
    東海林 エマ:玄関で立ちっぱなしのまま、そんな応酬。
    東海林 エマ:「……あがっていい?」
    沢村 秀吉:「ん……ああ、悪い」
    沢村 秀吉:床に出しっぱなしのゲーム機をどかして、椅子を引っ張り出す。
    沢村 秀吉:「……ど、どうぞ」
    東海林 エマ:もそもそと靴を脱いで上がり込む。ぺたぺたと裸足がフローリングを踏む。
    沢村 秀吉:もっと普段から片付けておけばよかった、と後悔しながら。自分は出しっぱなしの本を片付けてベッドに座り込む。
    東海林 エマ:出された椅子にちょんと座る。
    東海林 エマ:「エマ、心配してた」
    沢村 秀吉:「心配?」
    東海林 エマ:「サワムラの様子がヘンだから」
    沢村 秀吉:「……うん」
    東海林 エマ:「それで、考えたけど思いつかなくて……何かしちゃったかなって」
    東海林 エマ:「でも、違うって言うから。じゃあ、なにがあったの?」
    沢村 秀吉:「……」
    沢村 秀吉:しばし返答に窮した後
    沢村 秀吉:「……今」
    沢村 秀吉:「エマと顔合わせたら……俺」
    沢村 秀吉:「何しでかすか、分かんなかったから……」
    沢村 秀吉:絞り出すように答える。
    東海林 エマ:「それって」
    東海林 エマ:「エマを壊したいって言ってた。それと同じ気持ち?」
    沢村 秀吉:「それが」
    沢村 秀吉:「わかんないんだ……!」
    沢村 秀吉:頭を抱えて。
    沢村 秀吉:「前……前の任務の時」
    沢村 秀吉:「エマに俺の事情話しただろ」
    東海林 エマ:「うん」
    沢村 秀吉:「……あのときは、とにかくエマを助けたくて」
    沢村 秀吉:「力になりたくて必死だったから」
    沢村 秀吉:「気づかなかったっていうか、気づくの遅れたっていうか」
    沢村 秀吉:「その」
    沢村 秀吉:口がもごもごとする。
    沢村 秀吉:「エマが俺を認めてくれたのが」
    沢村 秀吉:「今更、すっごい嬉しくて……」
    東海林 エマ:「うん……うん?」
    東海林 エマ:「それは、良かったけど……」 首を傾げる。
    東海林 エマ:「それが、なんでエマを避けることになるの?」
    沢村 秀吉:「……それに気づいてから、エマの顔見たら」
    沢村 秀吉:「今までと同じ、壊したいな、って気持ちと」
    沢村 秀吉:「壊したくないな、大事にしたいな、って気持ちで」
    沢村 秀吉:「頭んなか、ぐっちゃぐちゃになってんの!」
    沢村 秀吉:自棄になったように吐き出す。
    沢村 秀吉:「今までは我慢するだけだったんだよ!でも、なんか今は……」
    沢村 秀吉:「変なんだよ!バグってんの俺!」
    東海林 エマ:「…………ごめんね」
    沢村 秀吉:「ち、違うって!エマが悪いんじゃないから……!う、うぅ~……!」
    東海林 エマ:「そんなに辛い気持ちでいるの、知らなかった」
    沢村 秀吉:「いや……その、」
    東海林 エマ:「今も、辛い? エマ、サワムラから離れたほうがいい……?」
    沢村 秀吉:「辛いっていうのとも……違くて……」
    沢村 秀吉:「………」
    沢村 秀吉:離れたほうが。
    沢村 秀吉:離れる?
    沢村 秀吉:「…………」
    沢村 秀吉:「……………」
    沢村 秀吉:「………………やだ」
    沢村 秀吉:「離れたくない……です」
    沢村 秀吉:分かってるよ。なんでバグってるのかなんて。
    沢村 秀吉:でも恥ずかしいだろ。思春期なんだよこちとら。
    沢村 秀吉:「エマ」
    東海林 エマ:「……ん」
    沢村 秀吉:「好き」
    沢村 秀吉:色々、考えて。それだけしか言えなかった。
    東海林 エマ:「…………」
    沢村 秀吉:「……う」
    沢村 秀吉:沈黙。頭の中がまたぐるぐるする。
    沢村 秀吉:もっと洒落たセリフ言ったほうが良かった?
    東海林 エマ:僅かに、表情が崩れる。真意を測りかねるように暫く沈黙して。
    沢村 秀吉:でもなんも思いつかねえよ。高校生の語彙力だよ。
    沢村 秀吉:あ、この表情珍しい。どういう顔?
    東海林 エマ:「それって」
    東海林 エマ:「言葉通りの意味?」
    沢村 秀吉:綺麗だな。壊したいな、いや壊したくない。
    沢村 秀吉:「言葉通り……」
    沢村 秀吉:「……分かんねえ。俺の好き、多分普通じゃないし」
    沢村 秀吉:「今でも……壊したいと思ってるのは、本当だし」
    沢村 秀吉:「ただ」
    沢村 秀吉:「俺が一番壊したいって感じるのが、エマで」
    沢村 秀吉:「一番壊れてほしくないって思うのもエマだよ」
    沢村 秀吉:「だから……好き、としか言えない」
    東海林 エマ:「むちゃくちゃ」 少し笑う。
    沢村 秀吉:「……ごめん。自分でも言ってて大分おかしいと思う」
    東海林 エマ:「でも……ちょっとだけ。分かるかも」
    東海林 エマ:東海林エマという少女の感情を覗く時、彼女の感情はいつだって半分。食欲で満たされている。
    東海林 エマ:「エマもね」
    東海林 エマ:「美味しそうだな、って思っちゃうの」
    東海林 エマ:「最近、特に。サワムラのこと」
    沢村 秀吉:「……」
    沢村 秀吉:「それは」
    沢村 秀吉:「言葉通りの意味?」
    東海林 エマ:「うん」
    東海林 エマ:「エマの、怪物としての本能が。サワムラのこと欲しいって思ってる」
    東海林 エマ:「……でも多分、それだけじゃなくて」
    東海林 エマ:少し、口籠る。
    東海林 エマ:「ママから聞いたの。……吸血鬼が、ヒトから血を吸うの、って。食事以外の意味もあるんだって」
    東海林 エマ:「だから……そうしたい人に出逢ったら」
    東海林 エマ:「ちゃんと、自分の気持ちに向き合いなさい、って……」
    沢村 秀吉:「……うん」
    東海林 エマ:「だから今、考えた」
    東海林 エマ:「エマね。サワムラのこと、好きだよ」
    東海林 エマ:「……食べちゃいたいくらい」 取って付けたように言いながら。
    沢村 秀吉:「……今、照れた」
    沢村 秀吉:「こっちまで恥ずかしくなるだろ……!」
    東海林 エマ:「エマだって照れたりするもん」
    東海林 エマ:「サワムラにしか伝わらないだけ」
    沢村 秀吉:「っ、また、そういう……」
    沢村 秀吉:頬が熱くなる。
    東海林 エマ:「サワムラが照れるのは分かりやすい」
    沢村 秀吉:「悪かったな!」
    沢村 秀吉:「……その、つまり」
    沢村 秀吉:「それは」
    沢村 秀吉:急に不安になって。
    沢村 秀吉:「両想いということで……いいのでしょうか……?」
    沢村 秀吉:言ってから。あ、これ無粋だな。と思った。
    東海林 エマ:こく、こく、と小さく何度か頷く。
    東海林 エマ:「そういうことで、いいと……思う」
    沢村 秀吉:その肩がいつも以上に小さく、弱々しく見えて。
    沢村 秀吉:思わず手を取って思い切り引き込んだ。
    東海林 エマ:「、わっ」
    沢村 秀吉:抱きしめる。壊したい気持ちを抑えて、拒絶できる強さで。
    東海林 エマ:ぼす、と背中が柔らかなマットレスに収まる。
    東海林 エマ:抱き締められたまま、深く息を吸う。
    東海林 エマ:(……そこかしこから、サワムラの匂いがする)
    東海林 エマ:お腹が空く。口の中に唾液が溢れ出す。好きなのと、食べたいのと、紙一重。
    沢村 秀吉:「……エマ」
    沢村 秀吉:身体を起こして、顔を見合わせて。
    東海林 エマ:「ん」
    沢村 秀吉:「好き」
    沢村 秀吉:唇を重ねる。
    沢村 秀吉:己の舌先を歯で噛み切って。
    沢村 秀吉:血を滴らせた舌先で、彼女と舌を交わらせる。
    東海林 エマ:「ん、ぅ……?!」
    東海林 エマ:ぞわり、と背筋が震える。
    東海林 エマ:口腔内に滑り込む肉の感触と、そこに纏わり付く血の味。
    東海林 エマ:舌先で触れた味に、身体が歓喜する。
    東海林 エマ:「…………ん、んうっ、ふぁ……」
    沢村 秀吉:逃さないように舌を絡みとって、無理矢理に彼女に己の血を味わわせる。
    沢村 秀吉:唾液の混じった血液を、音を立ててエマの舌先に押し付ける。
    沢村 秀吉:好きだ。愛しい。
    沢村 秀吉:壊したい。壊したくない。
    沢村 秀吉:ぐちゃぐちゃになった心を流し込むように。
    沢村 秀吉:「……はっ」
    沢村 秀吉:口を離す。
    東海林 エマ:その全部の矛盾した感情が、伝わってくる。
    東海林 エマ:少し開いたままの唇から、物足りなさそうに舌先が覗いている。
    東海林 エマ:「……もっと」
    東海林 エマ:甘えるように、ねだる。
    東海林 エマ:「もっと、サワムラのこと知りたい」
    東海林 エマ:「……だから、エマにちょうだい」
    沢村 秀吉:「……そういうこと言う」
    沢村 秀吉:「止まれなくなるからな」
    沢村 秀吉:壊したくなるから。
    沢村 秀吉:「壊れないでくれよ」
    東海林 エマ:「いいよ」
    東海林 エマ:「サワムラなら、怖くない」
    東海林 エマ:きゅう、と両腕を少年の背に絡み付かせて。耳元で囁く。
    東海林 エマ:「我慢してた分全部、エマに教えてほしいな」

    エンディング3:めでたし


    GM:──晴待村の河川敷。見事に桜の花が咲いている。
    GM:満開の桜並木の下、拡げられたブルーシートの上には、
    GM:既に村人数十人ばかりが宴会を始めており──
    春日 祈:「あ、来たよ」
    鏑木 鵠:「沢村さーん、東海林さーん、こちらですよー」
    沢村 秀吉:「すいません、遅くなりました!」
    霧崎 零斗:「ふふ、待ちわびていたぞ」
    霧崎 零斗:「――ッ」
    川辺 日向子:「わーっ、久しぶりー! おはよー!」
    川辺 日向子:ジュースの空き瓶をぶんぶん振っている
    霧崎 零斗:――いかん、日向子ちゃんもいるのに。
    霧崎 零斗:――あの二人から何かを感じたことを気取られてはならない……!
    東海林 エマ:相変わらずの真顔でてこてこ近付いていく。
    霧崎 零斗:――いかんぞいかん。めっちゃ春。
    沢村 秀吉:「久しぶり日向子ちゃん。元気だった?」
    沢村 秀吉:小さく手を振り返す。
    川辺 日向子:「うん! 食べ物がぜんぶ美味しいよ!」
    東海林 エマ:「よかった」 すとん、とその近くに座る。
    霧崎 零斗:――いやでも俺の気のせいかもしれないし……。
    沢村 秀吉:「ん、よかったよかった」
    川辺 日向子:すぐ傍には空になった重箱。結構な勢いで食べているようだ。
    沢村 秀吉:エマの隣に座り込む。
    川辺 義秋:「……最近、どうにも食欲がものすごくて」
    川辺 義秋:「なにせ私より食べます」
    東海林 エマ:「おお、成長期だ」
    川辺 義秋:「これはなんらかの重篤な副作用──という訳ではありませんね?」眼鏡ギラリ
    鏑木 鵠:「あははは……副作用ではあるかも知れませんが、どっちかというと」
    鏑木 鵠:「……遺伝? 的な?」
    東海林 エマ:「……エマが食いしん坊だから……?」 心配そうに隣の少年を見る
    沢村 秀吉:「いや、まあ……いっぱい食べるのはいいことじゃない?」
    霧崎 零斗:「彼女を癒やしたレネゲイドが東海林さんのものならば、東海林さんと似た性質のレネゲイドを……」
    霧崎 零斗:――何だあの二人。
    沢村 秀吉:慌ててフォローするように。
    霧崎 零斗:――くっ、なんだ、今の間は。
    沢村 秀吉:「折角美味しいものを好きなように食べられる環境になったんですから」
    春日 祈:「そうそう。……ということで二人も、早速だけど」
    春日 祈:「好きなように食べちゃって。そして大騒ぎしちゃって」
    霧崎 零斗:「かけつけ(どんぶり)三杯だ」
    沢村 秀吉:「大騒ぎまで確定なのか」
    春日 祈:「半径数キロ圏内はUGNが人払い済。衛星の映像遮断も手配済」
    霧崎 零斗:「焼肉でいっぱい米を食うと良い」
    沢村 秀吉:「いや多い多い!とりあえずで食べるには重いわ!」
    春日 祈:「多少レネゲイド的な何かが出ても問題ない」
    鏑木 鵠:「何言ってるんですか、成長期男子」
    鏑木 鵠:「たんまり食べて筋肉つけないとダメですよ」
    東海林 エマ:「サワムラ、こう見えて結構筋肉付いてるよ?」
    鏑木 鵠:〝とりあえず〟で焼き肉丼を沢村へ突き出す
    春日 祈:「……へ、へぇ」
    春日 祈:「狙撃手でもやっぱり、うんっ、ちゃんとトレーニングはしてるんだもんね」
    沢村 秀吉:「そ、そりゃね。前衛ほどじゃないにしろ最低限はね?」
    沢村 秀吉:「それなりに鍛錬してるわけですよ、真面目なエージェントとしては」
    東海林 エマ:沢村の目の前に運ばれていく焼肉丼をいいな……という目で見ている
    鏑木 鵠:「ならば尚更、その筋肉を維持するために一杯」ぐいぐいと丼飯with焼き肉を押しつける
    沢村 秀吉:今なにか漏れそうになったような、と焦りながら。
    霧崎 零斗:「フフフ……肉体系の皆が羨ましい……」
    鏑木 鵠:吐く息には既にビールの匂いが混ざっている
    霧崎 零斗:――いや。
    霧崎 零斗:――やはりおかしくないか?
    沢村 秀吉:「エマも食べて、俺の分も……これ永遠にパスされる流れだから」
    霧崎 零斗:――なぜサワムラの筋肉についてエマが詳しい?
    霧崎 零斗:――いや待てよ、俺も祈の性能を把握している。それと同じようなものじゃないか。
    霧崎 零斗:――やはり考えすぎだったんだ。
    東海林 エマ:「やった」 丼を両手に抱え込んでホクホクしている。
    鏑木 鵠:「はーい、それじゃあ各自行き渡ったところでー!」焼き肉丼しか行き渡っていないが
    沢村 秀吉:(霧崎君の視線がすげえ鬱陶しい……)
    霧崎 零斗:「お前たちも、本当に良いコンビだな……」
    鏑木 鵠:「お疲れ様でした! ……本当に、本当に!」
    霧崎 零斗:両腕を組んでなにやらわかったような面で頷く。
    沢村 秀吉:「何視点なんだよお前は!」
    鏑木 鵠:「今日、こちらにいらっしゃらなかった方も何名かいます。ご家族と一緒に過ごしたいとのことで!」
    鏑木 鵠:「けれども皆さん、ここの桜並木は綺麗だと、口を揃えて言っていました」
    鏑木 鵠:「その通りですね。……素敵な景色です」
    鏑木 鵠:「この景色に出会えたことに、再開できたことに」
    鏑木 鵠:「かんぱーい!」
    霧崎 零斗:「乾杯!」
    沢村 秀吉:「かんぱーい!」
    鏑木 鵠:瓶ビールをひっつかんでグイっと飲む。
    川辺 義秋:「……乾杯」ペットボトルのお茶を掲げる。
    東海林 エマ:「かんぱい!」
    春日 祈:りんごジュースをごくごく飲んで、ぷはー……と息を吐き出し
    春日 祈:「……改めて、おつかれさま。それから、ありがとう」
    春日 祈:「みんなが来てくれたから、みんなで帰って来られた」
    春日 祈:「食事が、栄養補給でも、グループ内の階級を実感する時間でもなく」
    春日 祈:「みんなで楽しめるものだなんて、久しぶりに思いだした」
    霧崎 零斗:「そいつは良かった」
    東海林 エマ:こくこく頷きながら、焼肉丼をぺろりと平らげる。
    霧崎 零斗:「やっぱりさ」
    沢村 秀吉:「真面目だなあ。折角のお花見なんだし、肩の力抜いてもいいのに」
    霧崎 零斗:「みんなで過ごす日常、ってのがもう特別だよなあ」
    沢村 秀吉:空になった丼を受け取って新しい弁当を渡す。
    春日 祈:「ん」
    春日 祈:「ずっと、同世代の子もいなかったし」
    春日 祈:「唯一近しい同世代はこれだし」
    沢村 秀吉:「これですか」
    霧崎 零斗:「これだ」
    東海林 エマ:嬉しそうに受け取り、もっきゅもっきゅ、と次のお弁当をつつき始める。
    霧崎 零斗:「まあでも」
    東海林 エマ:「でも仲良しじゃん」
    鏑木 鵠:「よく食べますねー。はい次。はい次」弁当を横合いから補給する
    春日 祈:「そっちこそ」
    春日 祈:「こっちのは少なくとも、ご飯係はしてくれない」
    霧崎 零斗:「これ、なかなか自慢の同期だと思ってるよ」
    霧崎 零斗:「ご飯を食べたらお皿は洗うしな」
    沢村 秀吉:「慣れてますので」
    沢村 秀吉:「霧崎君も頼めばしてくれるんじゃない?ご飯係」
    霧崎 零斗:「お気づきになられたか」
    春日 祈:「これの行動を推測すると多分なんだけど、あーんを強制してくる気がするんだよね」
    沢村 秀吉:「あー、やりそう!」
    東海林 エマ:「しそう」
    春日 祈:「で、その後で自分にもやれって雰囲気を出す」
    霧崎 零斗:「ご期待に応えるのが人間というものらしいな」
    沢村 秀吉:「うわ~」
    沢村 秀吉:「二重にうわ~」
    霧崎 零斗:「ここに炭火で外はカリッと中はジューシーに焼いたラム串がある」
    霧崎 零斗:「あ~ん、するか?」
    霧崎 零斗:彼はキメ顔でそう言った。
    沢村 秀吉:「今の流れで行くかぁ?しかもその顔で」
    春日 祈:手を伸ばす。
    東海林 エマ:「サワムラもする?」
    春日 祈:機械仕掛けの強靱な指の力で──串を奪い取る!
    霧崎 零斗:「ああっ!?」
    沢村 秀吉:「なにを!?」
    春日 祈:「はい、日向子ちゃん。あーん」
    霧崎 零斗:「負けてられん。ほらサワムラ、あーん」
    川辺 日向子:「あーん♪」串の横からラム肉に噛み付き、纏めて削ぎ取っていった。
    沢村 秀吉:「なんでお前やねん」
    霧崎 零斗:「くっ」自分で食った。
    東海林 エマ:「おお。見事な食欲……」
    川辺 日向子:「んふ。まだまだ、たーくさん食べれるよ!」
    霧崎 零斗:「なんかあーんしてるのが羨ましくなってな……」
    沢村 秀吉:「男同士でやっても虚しくなるだけだろ!」
    霧崎 零斗:「これが……心か……!?」
    沢村 秀吉:「このタイミング?アンドロイド仕草」
    鏑木 鵠:「あはははっ。お酒飲んでないのに酔っ払いみたーい」と酔っ払いが笑っている
    沢村 秀吉:「引率の大人が一番弾けてる……」
    霧崎 零斗:「ありがとうサワムラ……東海林さんとお幸せにな……」
    沢村 秀吉:「だから誰目線なんだよ!生暖かい視線やめろ!」
    鏑木 鵠:「いーんです、引率のおしごとは終わり。今日はオフ!」
    鏑木 鵠:「さあさあみんなも、せっかくカップルかける2なんだからもっと賑やかに!」
    沢村 秀吉:「カップ……て、いやいや……」
    春日 祈:「違います」
    沢村 秀吉:照れた顔をしつつも特に否定はしない。
    東海林 エマ:「しないの?」 串を持って首を傾げている
    霧崎 零斗:「聞いたか祈? 聞いたな? だが意識しなくていいぞ、俺が勝手に満足気にほほえむだけだ」
    沢村 秀吉:「う……」
    霧崎 零斗:両腕を組んで桜の木によりかかる。
    春日 祈:左手首から先をガチャっと取り外し霧崎に投げつける!
    沢村 秀吉:微妙に周囲を気にしつつも口をあける。
    霧崎 零斗:――そう、今はまだ……。
    沢村 秀吉:「あー……」
    霧崎 零斗:「うぐーっ!」
    霧崎 零斗:――左手にリングが欲しいという意味かもしれない。
    春日 祈:「……………………」ちらっ、と横目で沢村東海林組を盗み見る……!
    東海林 エマ:「もぐ」 自分で食べる。
    霧崎 零斗:――やはり祈、俺のことが大好きなのでは……?
    沢村 秀吉:「そんな気はした」
    霧崎 零斗:「お前の気持ちはわかっているさ、祈」
    東海林 エマ:「もっと残念そうな顔すると思ったのに……」
    沢村 秀吉:「いっぱい食べるエマは好きだよ。ほらどーぞ」
    霧崎 零斗:「ラヴかね」
    春日 祈:「はー……」
    沢村 秀吉:箸でご飯をつまんでエマの口元に持っていく。
    春日 祈:霧崎と沢村、ふたりの思春期男子を交互に見て
    霧崎 零斗:「まあ待てよ、祈」
    沢村 秀吉:「そーですよ。悪かったですね!」
    春日 祈:「まぁ……大差は無いか……」呟く。
    東海林 エマ:「わーい」 んあ、と口が開く。鋭い八重歯が覗く。
    沢村 秀吉:「え……」
    霧崎 零斗:「俺は胸を突き動かすような情熱というやつにイマイチ欠けている男らしいが、それでもこういう馬鹿騒ぎは好きなんだ」
    沢村 秀吉:大層ショックを受けた顔をする。
    沢村 秀吉:「霧崎君と大差ないのは大分……傷つく……」
    霧崎 零斗:「そういう時って、そういうことができる相手が側に居るという……なに?」
    沢村 秀吉:言いながらも開いた口にご飯を持っていく。
    沢村 秀吉:「おいしい?」
    霧崎 零斗:「切磋琢磨というからな。傷つくことと磨き上げることは紙一重かもしれないぞ、サワムラ」
    東海林 エマ:「んぐ」 噛む。飲み込む。「うん。お花見しながら食べるご飯さいこー」
    東海林 エマ:「サワムラとキリサキは違うもん」
    川辺 義秋:「……む」ちら、と手首の腕時計を見て、
    霧崎 零斗:「ラヴだな」
    沢村 秀吉:「よかったよかった」
    川辺 義秋:「そろそろか。日向子」
    川辺 日向子:「あっ、はーい!」ぱっ、と勢いよく立ち上がる。
    川辺 日向子:ブルーシートの端まで行って靴を履いてから、くるりとあなた達に向き直り、
    川辺 日向子:「お姉ちゃん達!」
    川辺 日向子:「たくさん、ありがとうございました!」
    川辺 日向子:腰から90度以上、深く頭を下げた。
    東海林 エマ:「ん」 目を細める。「元気でね」
    沢村 秀吉:「どういたしまして。ふたりともお元気で」
    霧崎 零斗:「こちらこそ、そして俺は今後とも宜しくだ」
    川辺 日向子:宴の馬鹿騒ぎもまだ続く中、父親に手を引かれて去って行く。
    霧崎 零斗:「祈と俺はこれからこっちの支部だからな……」
    川辺 日向子:途中、何度か振り返って、そのたびに大きく手を振りながら。
    沢村 秀吉:「あっ、そうなん?」
    春日 祈:「うん。と言っても、近くの街だけど」
    沢村 秀吉:日向子ちゃんに手を振りかえしながら。
    春日 祈:「十数kmくらいだし、近いと言えば近いのかな」
    東海林 エマ:「走ったらすぐ」
    霧崎 零斗:「走ればすぐだ」
    春日 祈:「文明人らしい選択をしてくれない?」
    東海林 エマ:霧崎と意見が被って、ちょっと複雑そうな顔をする。
    沢村 秀吉:「よしよし」
    春日 祈:「……まぁ、というわけで。私達はこっちに住むことになるかな」
    春日 祈:「そっちの二人は?」
    霧崎 零斗:「ククク……なぜだ……?」
    霧崎 零斗:「俺は悲しい……」
    春日 祈:「このあたり、家賃やすいけど。移ってくるつもりはない?」
    霧崎 零斗:「スカウトだと!?」
    春日 祈:「人手はどれだけ居てもいい」
    春日 祈:「ただでさえ規模と年数の関係で、これからの事後処理が複雑になるんだから」
    霧崎 零斗:「支部長も決まってない支部なのにいいのか……!?」
    沢村 秀吉:「切実だあ」
    東海林 エマ:「エマたち寮だから、家賃安くても唆られない……」
    春日 祈:「そっかぁ。一軒家も多いんだけどな」
    春日 祈:「隣気にしなくてもいいよ?」
    霧崎 零斗:「いいぞ、戸建て」
    沢村 秀吉:「げほっ」
    春日 祈:「?」
    東海林 エマ:「?」
    沢村 秀吉:飲んでいたお茶が気管に入ってむせる。
    霧崎 零斗:「好景気の時代に立てられた住宅は造りが良い」
    東海林 エマ:背中をとんとん叩く。
    霧崎 零斗:「それに銃火器の手入れや地下での試射も楽だ」
    沢村 秀吉:「あ、ありがと」
    沢村 秀吉:「そゆことね……」
    霧崎 零斗:「どうしたサワムラ、何を考えていた」
    沢村 秀吉:「なんでもねっすよ!」
    春日 祈:「……あっ」小声
    東海林 エマ:「エマも気になるー」
    霧崎 零斗:――思春期なのか、お前もまた。
    春日 祈:「その、そういうつもりじゃなかった……」
    鏑木 鵠:「まー、大変なんですよ事後処理!」酔っ払いが大声で割り込む
    沢村 秀吉:「分かってるから!流してお願い!」
    霧崎 零斗:――今の俺は。
    霧崎 零斗:――事後処理という単語すらやらしく思えてくる。
    霧崎 零斗:――俺もノリにノッている。お前を一人にはしないぞサワムラ。
    霧崎 零斗:「事後処理ですか」
    鏑木 鵠:「認識阻害系のジャームで、被害者が数百人規模ですから」
    沢村 秀吉:なんだろう。謎の共感を持たれてる気がしてすごいイラッと来る
    鏑木 鵠:「もー、日本全国あっちこっちで、親戚やら友人やらを急に思い出したひとが多発!」
    沢村 秀吉:「地獄」
    鏑木 鵠:「つい昨日なんかも警察に、〝私には家族が居たはずなんです〟って駆け込んだ女性がいましてね」
    霧崎 零斗:「気持ちはわかります」
    鏑木 鵠:話題の重苦しさと裏腹に、にこにこしながらまたビールを一口。
    鏑木 鵠:「〝私には夫と娘がいたんです〟」
    鏑木 鵠:「〝なんで忘れてたのかわからない〟」
    鏑木 鵠:「単身赴任中の女性教諭だったんですがね、ええ」
    霧崎 零斗:「――!」
    東海林 エマ:「その後、どうなったんですか?」
    鏑木 鵠:「今頃、家族でお花見にでも行ってるんじゃないですかね」
    鏑木 鵠:「いやそれとも、まずどこかで食事かな?」
    鏑木 鵠:「お嬢さんがどうも、相当な腹ペコさんみたいですから」
    沢村 秀吉:「それって……」
    霧崎 零斗:「そういうことだろうな」
    東海林 エマ:「んふー」 満足そう。
    霧崎 零斗:「一つの家庭の日常が守られた……最高だ」
    鏑木 鵠:「ふふ」
    鏑木 鵠:「UGNなんてやってて、しんどいことはたくさんありましたが」
    鏑木 鵠:「今日みたいなことがあるとね、なんだか、ずっとやってけそうな気がします」
    鏑木 鵠:「ありがとう」
    鏑木 鵠:「いいチームでしたよ、あなた達──」
    鏑木 鵠:ぐう
    鏑木 鵠:言葉が終わりきらない内に目が閉じて、すうすう寝息を立て始めていた。
    沢村 秀吉:「あらら」
    春日 祈:「寝ちゃった。……鏑木さんだけじゃなく」
    GM:ふと見渡せばあちらこちらで──老人が多いからというのもあろうが──酒に酔って眠り始める者の姿が見える。
    GM:とは言え、暖かな春の日だ。上着を羽織っていれば、風邪を引く心配もあるまい。
    GM:ましてやあの冬を乗り越えた者達ならば、尚更のこと──。
    春日 祈:「……楽しいな」
    東海林 エマ:「うん」
    沢村 秀吉:「だな」
    霧崎 零斗:「楽しい」
    春日 祈:「またいつか、お花見しようよ」
    春日 祈:「私達が大人になって、お酒飲んでも良くなってから、とかさ」
    東海林 エマ:「今日みたいにいっぱいご飯も用意して」
    沢村 秀吉:「じゃ、それまで元気でいなきゃな」
    沢村 秀吉:「……また行こう。皆で」
    霧崎 零斗:「……」
    霧崎 零斗:少し怖い。そんないつかがチルドレンにあるのかと。
    霧崎 零斗:「ああ、また行こう」
    霧崎 零斗:けど、そうなったら良いなあと思ったから。
    春日 祈:「ん。……あぁ、楽しみだなぁ」
    GM:──昨日と同じ今日。今日と同じ明日。
    GM:変わらぬ日常を守るのが、UGNの使命である……が。
    GM:変わらぬ毎日の中でも少しずつ、育まれ、変わっていくものがある。
    GM:その変化が必ずしも良いものであるとは限らない。取り返しのつかない変貌であるかもしれない。
    GM:それでも。
    GM:〝そうなったら良いな〟と明日に希望を抱くことで、今日をより良く生きられるならば。
    GM:変化をことさらに怖がる必要も……無いのかも知れない。
    GM:3月が終わる。
    GM:季節が変わる。
    GM:冬が終わって、春が来る──。



    GM:Dx3rdセッション『郷愁、雪の空を越えよ』、一切の行程を終了致します。
    GM:お疲れ様でした!
    沢村 秀吉:お疲れ様でした!
    霧崎 零斗:お疲れ様でした!!!!!
    東海林 エマ:お疲れ様でした~!