『眠深市/ヘイズ』ステージデータ

奇蹟は別たれ眠り続ける。停滞と安寧の夢に溺れて。



EP0:『ヘイズ・ロードの夢鍵』
EP1:『ワイアット、夢の残骸』
EP2:『クロス・ロードの回廊鍵』(R18)

目次

  • 概要
  • バックグラウンド
  • 『ヘイズ』
  • 『ヘイズ』ルール
  • 用語

  • 概要


    『眠深市/ヘイズ』ステージは、内陸部に存在する地方都市『眠深市』をメインの舞台とした、現代異能+ダークファンタジー風のステージである。
    この街は破壊をそのままに留めず、死さえ一過性のものに過ぎない。
    〝王権保持者〟とその〝臣下〟が跋扈する夜の街で、PC達は自らの立ち位置を定め、戦い続けることになる。

    バックグラウンド


    日本の内陸部、山岳の起伏が特に激しい地帯。
    眠深市(ねむりふかし)』は平凡に栄えている。
    広く澄んだ湖や、いわゆる〝飲み屋〟〝遊び場〟の立ち並ぶ歓楽街、洒落たファッションの行き交うストリート、雲突く高層ビル街。
    田畑がある。かと思えば近代的な駅舎がある。下水は地下の空間に繋がるなどと、都市伝説。山は緑深く、遠くを見通せない。
    半径10km程度の市内には、おおよそ産まれてから死ぬまで不足を覚えぬだろう程度に、なにもかもが揃っている。

    この街が変貌を遂げたのは、レネゲイドの大拡散から5年ほど過ぎたころだった。
    夜な夜な白い霧が街を覆うようになり、その霧の中でひっそりと、命の奪い合いが始まった。
    だが、この殺し合いで本当に死んだものは極めて少ない。
    そして日々を静かに生きる眠深市の住民達に、争いの痕跡に気付いた者は殆どいない。
    何故ならば、夜霧の中で発生した〝破壊〟は、その全てが朝日と共に巻き直されてしまうからだ。
    『ヘイズ』と名付けられた霧の空間──これがレネゲイドウィルスの引き起こした現象であることは、疑う余地は無い。
    だが、UGNを始めとした多数の組織がこの現象に着目するも、ついに解明には至らず、霧は今もなお街の夜を鎖している。
    調査の手も現象発生から数年で鈍化し、眠深市は今、R案件による被害がゼロの特異なる地点としてのみ記録されている。

    だが、霧の中で戦いは続いている。
    敵を幾度殺しても終わらない。敵に幾度殺されても終わらない。無限に続く痛みと再生。
    輪廻から外れる術は心を殺すか、或いはレネゲイドウィルスの恒久的な変質──ジャーム化か、それだけだ。
    そんなあさましい地獄の中に在って、彼らは、ちっぽけな鍵を探し求めている。
    『ヘイズ・ロードの夢鍵』。
    その全てを一手に収めた者は、『ヘイズ』の全てを欲しいままにできるという。
    霧の夜の、王となるのだ。

    『ヘイズ』


    『ヘイズ』は、『眠深市/ヘイズ』ステージ内におけるロケーションである。
    日没から夜明けまでの間、眠深市には、レネゲイド由来の白い薄霧が掛かる。
    この霧の中ではさまざまな事象が、外の世界と形を異にする。
    それは、現実の世界と酷似した同位置の異界であり、街に覆い被さる夜霧のテクスチャーだ。
    所詮は夢のような偽物でしかなく、だからこそこの中で発生した〝破壊〟は、夜明けと共に醒めて消える。

    例外はひとつ。
    霧はレネゲイド由来の現象であり、レネゲイドコントロール的にひと・ものへ干渉する。
    だが、だからこそ決して干渉し得ないものがある。
    レネゲイドの恒久的な変質。後戻りできない、オーヴァード達の忌み嫌う最悪の未来。 即ちジャーム化である。
    『ヘイズ』の中であろうと、ジャームに成り果てたものはもう、ひとには戻れない。
    霧の楽園を放逐されるか。或いは夜の街を蠢く、名も無き一体の怪物と成り果てるか。選べるのはそれだけだ。

    あくまでも『ヘイズ』とは、眠深市の夜という限定的な状況である。 『眠深市/ヘイズ』ステージとしてセッションを行っていても、例えば市外で活動している場合や、日中パートである場合、それは通常ステージと同様になる。 つまり破壊された街は人の手で修復せねばならず、死んだ人間は蘇らないのだ。

    『ヘイズ』ルール


    バックトラック──月杯の恩寵 『ヘイズ』内での戦闘では、あなた達は常に、何者かの恩恵を受けている。
    それはきっと、変わらぬ日常を強く求める意志であるのだろう。

    セッション中に『ヘイズ』で活動したPCは、バックトラック時、侵蝕率を1d10減少させてもよい。

    ユニークアイテム《ヘイズ・ロードの夢鍵》 種別:その他
    購入/常備化:購入不可/不可

    解説:大奇蹟を等分して生み出された奇跡の末端。契約者に王たる力を授ける小さな鍵。
    それは王たるべき者の手に渡った時、その者の身を飾る装飾品に姿を変えるという。

    由来不明の極めて強力なEXレネゲイド(レネゲイドウィルスに感染した物品)。〝遺産〟に分類できるという見方もある。
    複数個の存在が確認されており、そのいずれも、効力は〝眠深市〟の半径10km程度でのみ発動する。

    あなたは〝契約状態〟にあるPCのロイスを、自分が所有しているかのようにタイタス化・昇華することができる。
    また昇華時の効果に『ロイス所有者の所持エフェクトからひとつを、『侵食値:0』として、このラウンド中取得しているかのように使用できる。』を加える。
    このアイテムの効果は『眠深市/ヘイズ』ステージでのみ使用できる。

    基本的に、特定のPCとNPC専用のアイテムであるが、特にGMから許可が出た場合、経験点を支払わずにこれを取得しても良い。

    主従契約と契約状態 PCまたはNPCから2名を対象とし、オートアクションで宣言することで、主従契約を結ぶことができる。
    対象はこの契約を拒否することができる。
    また対象には必ず、最低1名、《ヘイズ・ロードの夢鍵》を所有するキャラクターを選択すること。

    主従契約には判定が伴わず、2名の片方を〝王〟、片方を〝臣下〟とし、双方を契約状態とする。
    〝王〟に成り得るのは《ヘイズ・ロードの夢鍵》の所有者のみとする。
    契約状態は〝王〟側キャラクターのみが、任意で解除することができる。
    この状態はシーン・セッション間を跨いで継続する。

    ※上記アイテムの運用について 上記の《ヘイズ・ロードの夢鍵》の記述は、他者のロイスの操作を同意なく行える、と読み取れる。
    この記述は意図的なものである。
    だがこの裁定を悪用すると、他PC・NPCを確定でジャーム化に追いやることが可能となってしまう。
    当然、そのような運用を行えばゲームが成り立たなくなる。
    この記述は意図的なものであるが、これはデータの処理上のことであり、実際の効果使用時にはPL間の合意を得ること。

    また、《ヘイズ・ロードの夢鍵》所有者と非所有者の間で、データ上の〝強さ〟に不公平さが生まれる。
    しかしこれはあくまで、〝臣下の力を王が受け取る〟という設定のデータ的表現であり、〝強さ〟の根源は臣下側にある。
    王がおらずとも人は戦い続けられる。だが、臣下を持たぬ王が、どうして王を名乗れるだろうか。

    とどめを刺す・死亡 『ヘイズ』内においては、死すらも可逆的なものとなる。
    「とどめを刺す」宣言によりHPが0になったキャラクターは、ゲームから除外される代わりに、そのシーンから退場する。
    そのシーン中での再登場は許可されない。
    また、次にいずれかのシーンに登場する際は、HPを最大まで回復すること。
    NPC、エキストラについても同様に、『ヘイズ』内での死亡時はシーンから退場させ、同シーン中は再登場させないこと。

    ただしエネミーに関しては、異なる姿へ変貌することで、同シーン中の再登場を行ってもよい。
    つまり第二形態である。

    ジャーム化 『ヘイズ』内においても、ジャーム化は不可逆にして最悪の現象だ。
    状況をある地点へ巻き直す『ヘイズ』の干渉は、レネゲイドにより発生する現象であるが、
    ジャーム化によりレネゲイドの性質が恒久的に変化した者は、その干渉を受けとることができなくなる。
    つまり、ジャームが死ねば、もう蘇ってくることは無い。基本的には。

    この街の夜に、人として死ぬことはできない。獣とならねば死ねぬのだ。

    用語


    王権保持者 《ヘイズ・ロードの夢鍵》に適合し、他者の持つ夢鍵を奪い取らんとする者。
    彼らのみが〝王〟として、契約下にある者への絶対命令権を行使し得る。

    適合者の資格を持つのは、〝王〟への道程を、手段でなく目的として見る者のみ。
    王になることで何ができるから──では、だめなのだ。 まず、王になりたいと願うこと。それだけが、それこそが、『ヘイズ』の王たる資格である。


    今の時点で確認された王権保持者、その一部は。

    輝刃拳の于幽悧
    人飼い馬主、ワイアット
    借り腹の赤子と〝ベッドメイカー〟
    病み花、竜胆
    ヒルコの女
    〝水底の王〟
    大炎獣、比良坂 猟羅

    磔刑の茨、ヰ乍 蒼治

    太陽を呑む湖 眠深市の西側にある大きな湖。
    市街地からさほど離れておらず、地形のためか風も穏やかで、湖面は鏡のように美しい。
    昼の世界においては観光名所として、湖岸のホテルや飲食店の賑わいを生んでいる。
    しかしそれも、太陽を呑むまでのことだ。
    夜の世界においては、魚も鳥も虫もいない、静寂な死の世界と成り果てる。
    好んでここで戦おうとする王権保持者もなく、湖はただ星を映すだけ。
    やがて東の山が太陽を吐き出すまで、湖は霧に包まれて、ただ静かで広く、暗い。

    その水底には、とある王が眠り続け、
    その湖面には、玉座への鍵が漂うという。

    昼の世界における正式名称は『転寝湖』。

    歓楽街、添伏通 眠深市の南東、市外から幹線道路を伝って入ると到達する大通。
    キャバレー、スナック、バーに居酒屋、法を遵守する多数の娯楽が。
    賭博、薬物、売買春、法の目を逃れる多数の娯楽が。
    おそろしく雑多に溢れかえっているというが、昼間は死んだように静かな通りだ。
    『ヘイズ』の中にあっても、この歓楽街は機能している。
    そこに潜むのは、かつての生業を延々と再演する影──心砕けながらジャームにも成れなかった人間達。
    彼ら、彼女らは、王にも臣下にも成れぬ故、誰からも捨ておかれている。
    望めば金銭なぞ積まぬとも、酒色のもてなしを受けられよう。

    ただし、通りの北端には近づくことなかれ。
    そのホテルは人飼いの領地、いわば牧場である。

    キャラクター・エネミー


    人炭 ひとの輪郭を保ち、ひとのように動く、非力なジャーム。
    それは黒塗りのマネキンのような外見をしており、肌は炭化していて、よく燃える。
    外見に似合わず俊敏であり、腕力も強い

    彼ら、あるいは彼女らは、炎にて焼かれながら亡骸にも至れなかった者達である。
    その肉の内側は、まだ血の湿り気を残している。
    ベッドメイカー 『ヘイズ』に蠢く者のひとりではあるが、王権保持者ではない。
    刃物のような色をした髪の女。所属を定めぬ異能傭兵。本名は此川 悠華。
    鋼のように頑丈な蔦茨と、狂奔を招く毒を操る。その毒は、己にも効く。
    ソラリスのピュアブリード。

    ベッドメイカーには子がひとりいるが、産み落としてすぐに引き離されたという。
    故に彼女は十数年探し続けたが、その旅は『ヘイズ』を終着とした。
    輝刃拳の于幽悧 『ヘイズ』に蠢く王権保持者のひとり。
    刃物のような色をした髪の少女。ファルスハーツのマーシナリー。コードネームは〝コネクター〟。
    眩く輝く複数の刃を操る。その刃の内で最も優れたるものは、己が拳である。
    モルフェウス/ノイマンのクロスブリード。

    生後しばらくしてチャイニーズマフィアの手に渡り、従属を当然のこととされて育つ。
    故に王を志した。誰からも支配されぬために。
    人飼い馬主、ワイアット 『ヘイズ』に蠢く王権保持者のひとり。
    荒野の風でがさついた青年。元UGNエージェント。コードネームは〝レディ・キラー〟。
    二丁拳銃の達人であり、狙撃の名手。本来、顔を見られる距離で戦うのは不得手。
    ブラックドッグ/ノイマンのクロスブリード。

    女好きな風を気取るが、実際に彼は男女問わず人間が好きだった。
    故に王を志した。誰をも守るべき臣民と見做したために。
    病み花、竜胆 『ヘイズ』に蠢く王権保持者のひとり。
    幼子の姿をした女。UGN支部長。コードネームは〝疫病草(えやみぐさ)〟。
    攻撃能力は皆無。防衛と情報収集に長けた従者使い。
    ブラム=ストーカー/エグザイル+ソラリスのトライブリード。

    世界の全てを愛しているが、それは自分ひとりが優れた者である前提での、恩寵の下賜である。
    故に王を志した。恩寵を世界に広げんがために。
    星を愛でるもの 『ヘイズ』に蠢く王権保持者のひとり。
    溶け落ちる肉と皮膚。未成熟の骨。生まれ落ちてすぐに、腐肉のように膨れ上がった巨躯。
    それはこの地上のいかなる生物とも異なる、あらゆる生物の母体となり得る命であった。
    モルフェウス/ウロボロス。……無理に分類するならば、だが。

    性と生をほしいままにし、やがて全ての獣の祖となる外界の存在。
    それは十字月の娘達が手中に収めた、唯一絶対の真理であった。