烏が鳴くから
帰りましょ

Requiem of Scarlett.

編曲:チルドPさん(ニコニコ動画マイリスト
作詞:ハシブトガラス

若き命は 刹那に開いて
頑なに頑なに 永久を拒んだ
猛き力は 脆さと同義で
密やかに密やかに滅びを選んだ

不死の王女(すすまぬびょうしん)を置き去りにした 定命の従者(ぎんのとけい)
この鳥籠の中 囚われていた少女(つみびと)は誰なの

終焉(ねむ)らぬ城の中 今夜もまた一人贄となる
諸人こぞり来よ 嘆きを奉れよ
命の誘い水 赤く朱く紅く川となる
畏れを抱き見よ 我等は紅い悪魔



零れた砂粒 逆さに回して
注いだら注いだら 戻れるだろうか
夜を繰り返し 生にしがみ付く
望むなら望むなら 叶うと信じて

もう逃がしはしない たった一羽の青い鳥さえ
後悔の迷宮 抜け出したいの 二度と放さないわ!

終焉(ねむ)らぬ城の中 少女等はまた一人贄を呼ぶ
諸人こぞり来よ 嘆きを癒す術を
命の紅い川 Cry! 暗い昏い水底に
刺さった山査子の杭(ぎんのはり) 我等は紅い悪魔


紅い月(しんくのフルムーン)〟――憧れさえも届かない無限遠(あのひとの)
墓標(ねむるはなぞの)〟照らす純銀(ナイフ)の刃となれ

終焉(ねむ)らぬ城の中 今夜もまた一人贄となる
畏れを抱き見よ 我等は紅い悪魔








「サボりの門番も頭でっかちの知識人も名前知らない端の悪魔も、脳味噌ぶっ壊れた妹もすぐ死ぬ人間のメイドも、みんなひっくるめて紅魔だ。洒落てるだろう?」
 と、マイク片手にお嬢様が笑うロックです。
 元々チルドPさんとは、この曲以前に此方から応募で1曲、あちらから依頼で1曲、いずれも東方アレンジでご一緒してたのですが、3作目にこれが来ました。

 聞いた瞬間に「これは伸びる」という変な確信がありまして、がっつらと力を入れて書いたのですが、実は最初は、ここまでルビが荒ぶっていなかったんですね。
 『進まぬ秒針』『銀の時計』『罪人』『銀の針』『眠らぬ城の中』この辺りはそのままの表記でした。
 ただ、歌詞入れverを渡して貰った時に「この完成度にこの歌詞じゃ大人し過ぎるだろ」と思い、急遽弄ってみたらこうなった訳です。
 まず最初にサビの「眠らぬ城の中」あたりから思い付いて、その後はとんとん拍子に仕上がったので、悩んだ記憶というのは殆どありません。
 強いて言うなら「赤く紅く朱く……? それとも朱く紅く赤く……?」と、表記の順番をちょっと考えたくらいで。

 あまり技巧的な要素を意識しなかった歌詞ですが(そんなんばっかりや)、
 「頑なに/密やかに」「注いだら/望むなら」と語感の近い言葉を繰り返しての強調は狙っています。
 ですがどちらかと言えば、レミリア・スカーレットが人間のままに死んだ従者を弔う気持ちをこそ第一として、勢い任せに書いた歌詞です。
 不死、或いは長命の存在になって添い遂げる道を、幾らでも選ぶ術があるというのに、人のままに終る。
 この選択には意味があると思いますし、ならそれを尊重するのが主人たるレミリアの器でしょうが、
 それはそれこれはこれ、尊重はするけど寂しいもんは寂しいんだバーローと、紅い月夜に歌うような。
 ちなみに、歌詞でさんざん出てくる『銀』だとか、2番サビに出る『山査子の杭』だとかは、吸血鬼の弱点ですね。

 ところでタイトル『Requiem of Scarlett.』ですが、レミリアの姓は『Scarlet』なんですよね。
 一応これは、人のままに死んだ従者に対し、飽く迄人名の範疇に収まる『Scarlett』を冠したかったって感じです。『Sakuya Scarlett』みたいな。