烏が鳴くから
帰りましょ

十字の咎

編曲:チルドPさん(ニコニコ動画マイリスト
作詞:ハシブトガラス

狂俳きょうはいの我が性をも飼い慣らせど 残響 詩歌うたが消えぬ
狷介の我が心も皮を剥げば 餓ゑた獣

紅き霧の中に見えた 人の子の誠に触れて
言の葉を紡いだ 疾く疾く失せよ

満たされぬ腹が血を流す胸が叫ぶ 朧月を駆る朋友ともがらの眼ぞ刺さる
血濡れた爪牙に絡む肉叢ししむらの悲鳴も無く 紅霧の中に慟哭は未だ止まず



暁角を留め伏せよ 秋風の残響 未だ消えぬ
怯懦こそは人の病 成り果てし ただけだもの

紅き月の下に吠えた 人の子の骸を抱いて
浅ましき食欲ほんのう 咽び泣く侭

満たされぬ餓ゑに理性は靡いて渇く 酔いを晴らせども悔いを指折りて数う
はかなく重ねし倨傲の月日は戻り得ぬ ぬばたまの闇に咆哮ばかりが聞こゆ 嗚呼



願いを喰らった 望みを喰らった全て
欲望のままに 絶望のままに 詠う
背けた眼へ突き刺さる罪と絶える息 紅霧の中に獣は未だ孤独ひとり



満たされぬ腹に朋友ともがら臓腑わたを喰らう 朧月の夜に弔ひの詩歌うたを捧ぐ
血濡れた爪牙に落つる涙さえ けだものよ 紅霧の中に我が悲鳴は未だ止まず








 その声は、我が友、ルーミアではないか? →いかにもそーなのだー。

 実はこの歌詞は改訂版でして、最初はもっとなんかこうアレな具合でした。
 具体的にはこんな感じです↓

迷い子の嘆くよう伸ばす手が散らす 命(はな)を一つ
愛し此の長き夜を乱す手は知らず震え

白く血も失せた亡骸 牙を立て貪り喰らう
浅ましき食欲 咽び泣くまま

満たされぬ腹が血を流す胸が叫ぶ 朧夜に浮かぶ月の目を隠すように
背けた眼へ突き刺さる罪の絶える息 紅霧の中に溶けて消え逝くは心


闇の子は夢を見た 企ては破れ 命(はな)は絶えて
愛し子の眼差しも今はただ遠く 遠く

腐り朽ち果てた亡骸 祈る言葉知らぬままに
浅ましき食欲 屍を積んだ

満たされぬ飢えに理性は靡いて渇く 霞む夜の夢に爪痕を刻み嗤う
背けた眼へ突き刺さる罪の絶える息 紅霧の中に温度は薄れて滲む


願いを喰らった 望みを喰らった全て
欲望のままに 絶望のままに 浮かぶ
背けた眼へ突き刺さる罪の絶える息
紅霧の中に獣は未だ孤独


 途中までになっているのは、音源のデモ版に対して作ったからです。
 が、完成版を聞いてみたところ、デモ版からクオリティが一気に上がっていて、「ああこれじゃ歌詞が完全に負けてるわチクショウ」と思って書き直した次第です。
 実際に読み返してみて面白みがなかったり歌いづらかったりなので、書き直したのは正解でないかと思います。

 個人的にルーミアは、馬鹿と呼ばれてるキャラの中では考え込む方というか、思い悩むことができるタイプなんじゃないかと感じてます。
 人を食う+思い悩む+和風楽曲というところから「浅ましき食欲(ほんのう)」のフレーズを残していたら、ふと山月記が出てきてこんな具合に。

 尚、2サビとラスサビの後のハイトーンシャウトは、音源には無かったのを私がわがまま言って付け足してもらいました。無茶言ってごめんなさいありがとうございました。


 良く創作者がうんたらの話題で上げられる山月記ですが、めちゃくちゃ文章上手いですよね。
 この上手い文章で、「中途半端にできるから徹底的な努力もしなかったので大成しなかった男」とか描かれた日には、あんた何の皮肉だよってなります。
 そういう理由から話しとして好きじゃないところもあるんですが、文章は死ぬほど上手いんですよねチクショウ。
 なので遠慮無く単語はそこからパクって来てます。
 狂俳とか狷介とか倨傲とか、秋風とか残響とか朧月とか。

 後は、なんでしょうね。私は歌詞のひとまとまりごとに、母音が「あ」になる音を当てたがる癖があるんですが、この歌詞に関しては「う」がやたら出て来る気がします。
うなり声とか否定とか後悔とかそんな、動物的でネガティブな音っぽくないですかね、「う」。「ぬ」とか「ず」のせいでしょうか。
 悔いて泣いても腹は減る。生きているなら仕方が無いことです。